十二話 刺客
「ルイは引き続き典子の護衛を頼む。」
『了解しました、奈織さん。』
篤男達は上手くいっただろうか。禁書を持ち出せているといいが……
「ウォルフ逃げ切れるか!?」
「マズイ、シャドーニミツカッタ」
後ろから波みたいのが近づいてくる。
「まじか!?」
「篤男、シャドーって誰だ?」
「冥斬士全体の管理人だ、本部にいるはずなのになんでこんなところに…………この前禁書庫に入ったやつは火炙りにされたって聞いたぞ。」
「げきやばじゃねえか!!」
くそっ、俺のエロ本が!!なんとしても、持って帰らないと!!
「強いのか!?」
「そりゃ強い。あいつはな腕力が半端じゃないんだ、一度掴まれたら終わりだ。どう足掻いても抜け出せない。」
「またしても、げきやばじゃねえか!!どうすればいい?」
「シャドーは影を泳げるからな、倒すか地上まで行かないとダメだ。」
「…………オイツカレル」
「ウォルフ、篤男!とりあえず影を消せばいいんだな!?」
「そうだけど…………」
「むむむむむむむ、、とうっ!!」
今度こそ神の威厳ってやつを見せつけてやるよ!
『漢字の神・改』だ!エフェクト多めだ!
ピカっと神が輝いた。
「チッ!」
「すげぇぞ、涼!!」
「キョリガカセゲタ、アリガトウネ…… アリガトウ。」
「ふふんっ!」
『神』は使い所によって反応が全く違う。、、、っと涼の一口メモに追加しておこう。
「逃がさない。」
「なっ!?」
腕が伸びたぞ!?
バンっ!!
篤男が、腕に銃を打ち込んだ。途端、ペチャっと水に弾を打ち込んだように、弾けた。
「実体がないから気休めだ。ウォルフあとどのくらいで地上だ?」
かっけぇー!こいつ前戦ったときは弱かったけど、銃の腕前は凄いんだな。
「ニフンテイドダトオモウ」
「涼あと2分だ!耐えるぞ!」
「おう!!まかせろ!」
*
「ここって、、、」
「おいの家じゃっど。誰か手入れしちょいてくれりゃよかったが…」
腰あたりまである草があちらこちらに生えていた。
中は埃まみれだった。昔の写真が立てかけてある。これは婆ちゃんか、、あったことないな、、。
「入れ。」
そのまま俺は畳が敷き詰められた所に案内された。
「わいは探しもんしちょっで、掃除しといてくれんね?」
「わかった。」
俺は30分雑巾がけをした。
さらに追加の30分、まだ時間がかかりそうだったので蜘蛛の巣を片付けた。
さらに1時間が経過した。
俺は掃除を完璧にこなし、新築さながらに仕上げていた。
いつ来るんだよ!!
「爺ちゃーーん!終わったよーー!!爺ちゃん?」
どこだ?
爺ちゃんを探すついでに家の中を見て回る。これが、爺ちゃんの親友か?
写真に坊主の真面目そうな青年が写っていた。右には笑いをこらえている顔をしている爺ちゃんが写っている。
「憧也、掃除は終わったか?」
爺ちゃんがどこからともなく現れた。
目を擦っている。
こいつ、寝てやがったな……
「………………ピカピカにしたよ。」
「よし。」
その後俺は畳の部屋で村正の使い方を教わった。
「村正は、あやつの邪気んまとっちょっど。刀に呑まれんごつせんといかん。じゃっど、使いこなせたら、どけん刀よりも強かはずじゃ。」
「わかったよ。」
「わいに一本入れてみい。そいが出来たら、修行は終わいじゃっど。」
「でも、爺ちゃん、病気が……っ痛!!」
竹刀で頭を打たれた。
「はよかかってこんか。」
そう言ってかれこれ2時間打ち込み続けた。爺ちゃんはその場から一歩も動いていない。最小限の動きで急所を突いてくる。当たり前のことだった、かつてケイルシールと渡り合い、心臓を見つけ潰したんだ。
「よかか、お前さん。突き言うんは、ただ前に出しゃよかっちゅうもんじゃなか。間合いを計って、一瞬の隙を突く、そいが本物の突きじゃ。剣先ば迷わすな、まっすぐに、気持ちで突け。心が折れたら、刀も曲がっど。ぅごほっ、ごほっ」
そうだ、爺ちゃんは体が弱いのに、俺に稽古をつけてくれているんだ。俺の覚悟をみせないと。爺ちゃんが安心して俺を送り出してくれるように!
ドンっ!力強く踏み込みこむ。爺ちゃんは隙を一瞬で突いてくる。俺の軸足を見逃す筈がなかった。爺ちゃんの竹刀がまっすぐに俺の足元へ向かう。竹刀を地面に突き立て、止める。重っ!!そこだっ!!爺ちゃんの目が見開く。
俺は渾身の左ストレートを腹にぶち込んだ。
と思ったら爺ちゃんの手で防がれ、背負い投げされた。
「お主、剣道でぶん殴るんは反則じゃ!じゃどん、今んはよか動きじゃった。ケイルシールば相手にするなら、あんくらいド派手にせんといかんど。」
「いてててて、、」
「わしは病院にもどるでの、あとは任せたっが。」
歩いて行ってしまった。これは合格なのか、、、?
………………はっ!!
「爺ちゃん!!新幹線代貸してくれぇーーー!」
*
「あいつ腕何本生やせんだよ、、」
「バン、バンッ!!」
指から光を何発か放つ。どうやら光に弱いらしい、光が当たったところは再生がおそい。
「実体がないって不死身なのか?」
「わかんねぇ、あいつの詳細も禁書庫にあるくらい、重要なんだとよ。」
「死なないなら手加減は無しだ!これでもくらえ!!」
「ちょっ、涼、基地吹き飛ばすなよ!?」
大きく、もっと大きく…………ちょうど、穴の大きさに調整!!
「ウルトラバズーカー!!」
「やばっ!!こいつ、なんも話きいてねぇーーー!!」
俺のバズーカーはシャドーを巻き込んで基地の奥のほうで爆発した。
「お、お前!これじゃ俺たちテロリストじゃねえか!指名手配だ!」
「捕まったらどうせ火炙りなんだろ?死ぬより殺せってな!!がはははははははは!!」
「なんか、変なにおいしないか?…………ガスだ!おいおい、窒息するぞ!お前のバズーカーでガス管に穴があいたんじゃねえか?」
「モウスグデル。イキトメテテ。」
前方に光が見える。
「ぷはぁーー。生き返るぜ、もう死んでるんだけどな!」
ゴンッ!
「痛ってーー!」
篤男にグーで殴られた。
「ったく……生きてるだけ良しとするか。現在地は……親不孝通りって結構離れたとこまできたな……」
ドーーンッッ!!
「また爆発!?篤男も、もしかしてこれって俺らのせい?」
「俺らじゃなくて、お、れ、な!…………ヤベェ人が集まってきてるら警察と救急車呼んでるし…………とりあえず逃げるぞ!」
「あなたたち、このまま逃げられるとでも?」
「お前が…………シャドーか!?」
目の前にはつばが広い黒い帽子を深く被り、長いコートをきた人が立っていた。顔は全く見えない。
「先ほどの攻撃は驚きました。さあ、禁書を返してもらいましょう。…………資料室の修繕費はあなたたち3人の命をもって……ね!!」
「はやっ……がはっ!」
「篤男!!」
篤男が俺に冊子を投げた。
「これは、たのむ……」
「無駄な足掻きを……」
突如、ウォルフの目が赤く光り、姿がブレた、と思ったらシャドーの体を吹き飛ばしていた。
「ウォルフさん、さすがのパワーですね。……そちらの少年も強い……今は一旦引くことにします。篤男は上に引き渡し、0時に処刑します。是非見にきてくださいね。では。」
「まて!!」
シャドーは木の影に溶け込んでいった。




