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7章 「報告書」
『報告書にはこうあります。』
使用人が淡々と事実をのべる。
それによると、イオ=セルティーファイアは生まれてすぐに母親を亡くしている。
そして、それによってイオ=セルティーファイアはイオの星の神聖士の位を継いで、後見人の父親が彼女が成人するまでイオを守るはずだった。
本来ならば…。
しかし、事実は違った。
『イオ様はお母様の炎に守られてイオの星でただ一人、星を維持してた。』
父親はイオなんて娘がいないかのように再婚して家庭を持った。
だが、新しくジュピターの夫人になった女は子供に興味を抱かず、結局、二人の弟を養育したのはイオだった。
子供に興味を抱くどころか、継子である、イオのことを虐め抜いた。
そして、極め付きがこの、結婚。
『どうやら、イオ様は衰弱を狙ったジュピターによってこの星に送られたようですね。』
ジュピターと仲のいいマーキュリー夫人はイオを心配する継母のために嫁入り先を探した。
だけど、夫人は肝心なことを忘れていた。
彼女は神聖士で、星から長時間離れるのは彼女の炎に多大な負担をかけることに。
『イズ、星の様子はどう?
変わったことはない?』
『大丈夫ですよ。ユリアンお姉様。』
そう?なら、よかった。
いつも、姉との会話は炎のことで始まる。
次はその時期に留意しなくちゃならないこと。
凄いなぁ。お姉様、これだけのことをまだ、お小さいころからこなされて。
僕なんてまだ、宰相が付いてやっとのことで星を守ってるのに。
お姉様はこれをずっと一人でやってこられた。
あれっ…。目が霞んで…。
『ハーイ、ユーシィ。
あなたから連絡が来るなんて珍しい。』
『イズが力の使いすぎで倒れた。
とりあえず、星は宰相に任せてイオを俺が代行してる。
イズがよくなるまではついてる。』
珍しい従兄からの電話に小さい頃の愛称、ユーシィと呼ぶ。
彼が伝えたのは弟の急病だった。
イズにあたしが石を送る。
あたしだって、他人の能力の形を知ることができるセルティーファイアの娘。
イズの能力の回復を助けるぐらいはできる。
『今度は別の…か。』
ユーシィと呼ぶ男は誰だろう?
あれだけ親しいのだから、イオの親しい人なのだろうけど報告書にはユーシィもイズもなかった名前だ。
誰なんだろう、二人は。
『ユリアン、ジフィはいつになったら、気がつくのだろうね。』
ジフィはイオのもう一人の弟の愛称だ。
仕方ないことだと思う。
ジーフィスは継母になついているもの。
いつかは知らないけれど、なついていてくれたジーフィスの性格が変わった。
どうしてだかはわからないけれど。
もし、私があの子にかけられた悪い夢を解いてあげられたなら。
何度、そう思ったか――――。