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18章 「退職」
『姉様、決めていらしたのでしょう?
あの日、解術の術式を使うと。』
だって、あの日は…。
言おうとしている口を閉じて、イオが超新星爆発でなくならないようにしたいと切り出す。
今まではイズルにばかり負担をかけていたけど、それだけではセルティーファイアの力だけに偏ってしまうだろう。
『ユーシス、お願いできる?
できれば、あの子の教育も行ってもらいたいの。』
俺はその言葉に二つ返事で了承する。
だって、可愛がってる従妹の頼みだし。
とりあえず、星に帰って代わりにイズルをこちらへ寄越してほしいと言う言葉に、さっさと帰る準備に取りかかる。
イズ、あなたと一緒にユーシスも星を治めてくれることになったわ。
あら?また、成長してるわね。
あと半年したら成人の儀礼だっけ?
懐かしいわ。
あたしも、もう、三年も前に彼に出会ってるのね。
覚えてますよ。ユリアンお姉様。
あれも、母のせいで正しい名前と身分で受けることが困難だった。
だけど、アース様が助けてくださった。
あたし、あの時から…。
『イオ様、お久し振りです。』
わっ。イズ、大人っぽい。
また、成長したんだ。
あたしの知らないイズみたい。
僕は今も昔も、ユリアンお姉様が知る、弟のイズルですよ。
それより、アース様にご挨拶したいのですが。
アース様は今いない。
仕事だと出掛けてしまったのだ。
その隙を見計らってダイナーに最後の出勤をすることにしたが。
問題がある。
ユリアンが店を辞める正当な理由がいる。
と言うわけで、ねぇ、協力して。
『イズの一般人IDを使って、18歳を演じてほしい。』
イズラルド=ザイリンベル。
イズに用意された裏のID。
出身地はジュピター方面のガニメテ。
イズラルドのIDはあまり使わないが、イズの大人顔負けの圧巻の演技はあたしでも負けてしまう。
お願い。
あたし、ダイナーでは恋人を友達に奪われた悲しい女になってるから、せめて、ユリアンだけでも幸せに終わりたい。
ほとぼりが冷めたら、IDはあたしの権限で消去する。
だから、今日一日だけ、あたしの婚約者になって。
『そう言うことなら、引き受けますよ。』
僕がユリアンお姉様の頼みを断るはずがないんだ。
それよりも、姉が本来の姿をとれないことが気にかかる。
洗礼を終えて力のバランスがとれたと言え、まだ、星からは離れて本人の物でない炎を身に宿し続けている。
どうか、早くイオの後継がユリアンお姉様の炎を解放してくれますように。
祈らずにいられない――――。