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12章 「地球へ」
『此度は遠いところをよく来たな。
イオの弟よ。』
イオ=セルティーファイアの弟として僕は地球に来た。
イオには二人の弟がいたんだったな。
どちらの弟君なのだ?
アースの質問に、彼の見た目年齢を考慮する。
ええ、上の子ですわ。
今年で14になりますわね。
咄嗟に嘘をついた。
この子は下の子。
『イズ、先代イオ様の最期を記した記録を見たい。
いくらなんでもユリアンがそれだけしかアリアドネの能力を宿してないのはおかしい。』
僕がユリアンお姉様の能力の薄さを伝えると、少し考えて質問をぶつけてきた。
それに答えた結果が今の言葉。
ユリアンがそれだけ幼い頃に能力を宿さないとなると洗礼の儀式に何らかの原因がある。
成る程、冷静な分析だ。
『あった。この記述だ。』
遠きアリアドネより嫁ぎし娘、子の洗礼の儀式の途中、息絶える。
子憂う母親の悲しみ、石に宿りし炎と成す。
これを書いたのは先代のジュピターだ。
涙のあとがある。
古代の言葉で書かれた記述を読み、呟く。
ユリアンは洗礼を途中までしか受けてない。
だから、ユリアンはアリアドネの能力をほとんど宿していない。
『ユリアンお姉様の所にいま、ジフィがいます。
ジフィにかけられた輪環術を解くためにユリアンお姉様がお呼びになった。』
もし、もしも、ユリアンお姉様がそんな少ない力で輪環術を使えば…。
そんなこと、させられない。
『まだ、調べたいことが少しある。』
調べ終わったら、母さんを連れて神界へ行ってくる。
神界で神様に洗礼の続きを行う許可をとる。
少しの間、母さんには先代イオ様の依り代になっていただく。
母さんだって、もう一人の娘にきちんと洗礼を
受けてもらいたいに決まってる。
『もう一人の娘?』
いぶかしがって聞くと、俺の母さん、ユリアンの母さんの双子の姉。
一卵性でよく似た容姿をしている。
双子の妹の依り代なら喜んで引き受けてくださるだろう。
先代イオ様の望みだろうからな。
せめて、成長したユリアンを一時かき抱かせてあげたい。
そのためなら、母さんも喜んで身体を貸すだろう。
『母上、戻りました。』
いくつもの星を駆け巡り、故郷、ナヴィの地を踏む。
懐かしい大地だと何年かぶりの帰郷を懐かしむ暇もなく、母を連れて神界へ赴く。
神様は怖い存在だと聞くけれど、かわいい従妹のためだし。
『…対価にするもの。』
ジュピターの心の邪悪の塊を後払いで。
なんとかユリアンがジフィの輪環術を解く前に洗礼の続きを――――。