表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20180530  作者: ビートマサブネ
1/1

001

 今日も携帯がブルッた。開くと、いつものメッセージが表示される。

「おはー」

 続けざま、またブルッときて

「今日も一日ガンバってこー」

 なんて言えばいいか。文末に伸ばし棒が、僕の文通相手のクセだ。

 うん、とだけ入れて返す。

「うわー!」

「今日も早いねー」

「すごいよー!」

 中身の無いメッセージで続々とブルる。

 確認してみると、AMの5時23分。時計がずれてないなら確かに早い方だが、すごいってことはない。夜にしたいことも無いし、早く寝てるってだけだ。

 そう思っているってことを、今日はちゃんと伝えておくことにした。

「すごいことはない。早く寝てるってだけ」

「そうかなー」

「ちゃんと寝てるってのもすごいよー」

「昼も夜も意味なくなってるもん、わたしは」

 気持ちはわかる。でも、これもクセみたいなものだ。

「俺はあえて意味を付けることにしてるよ。昼は歩くって決めてある。でないと、バラバラになるだろ」

「バラバラって?」

「心と体のリズムみたいなものが」

「頭いいねー」

「よくない。臆病ってだけ」

 そう、何がどうであれ、今日も一日は始まる。携帯を充電器から外して、バックパックに荷物をまとめる。屈伸運動もしてみる。ペキペキと関節が鳴る。すっかり運動不足だ。まるでおじいさんになったみたいなストレッチの間にも、携帯はブルブルと鳴り続けている。

 これでもスポーツは好きな方で、僕はサッカー部だった。とは言え、相手がいなけりゃ仕方ない。すっかり白くなった道に、本日も第一歩を踏み出す。

 風が吹くと灰が撒きあがって、目に入ると痛い。

 僕の携帯によると5月30日ってことだが、ひどく寒いし、雪みたいなのも降ってる。


 西暦は2028。


 オヤジは10年が経過すると言っていた。実際にその通りの年なわけだが、五月でこの調子だと、ちょっと怪しい気もする。

 そもそもだ、一番の肝心なところで、オヤジは大きく間違えていた。

「10年やそこらで大しては変わらん。このバカげた戦争が終わってるってだけだ」

 そしておそらくは10年後。僕が目覚めた世界は灰だらけだった。確かに戦争は終わったのだろうが、他の色々も終わってるって感じだった。

 コンビニの自動扉をカチ割って、本日の朝食を物色する。缶詰のあたりならまぁいけるってことが分かっているので、今日は勇気を出して鯖缶としゃれこむ。

 気分快晴とはいかないところに、届くようになったのがあのメッセージだ。

 ひとしきりブルッていた携帯が今はおとなしくなってる。なんだかかわいそうになって開けてみた。

「そっちの天気はどー?」

 写真を撮って、送ってやることにする。

「今日は鯖缶の気分」

 人のいない街なんか面白くもない。

 鯖缶は美味しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ