34話 十傑会議
スタが魔物に襲われる事件があってから
1ヶ月程経ったある日、
ガレドーヌ帝国首都ガーハットにある
行政府のいくつかある会議室の一室。
今ここには10人の男が集まっていた。
剣聖の数多い弟子の中でも特に優れた10人の高弟。
世に『剣聖の十傑』と呼ばれている男達である。
さらに十傑の中でも剣聖の懐刀の3人を『三剣』と呼ぶ。
帝国将軍レネミーも三剣の一人である。
「集まったようだな」
そう言ったのは一番上座に座る男だ。
名前をアルバートと言う。
剣聖の一の弟子であり三剣の一位
帝国においても軍務大臣を務める重鎮でもある。
「急に呼び出すとは何かあったのか?」
そう言ったのは 同じく三剣の二位。
帝国上級将ダイレクバー。
剣聖のニの弟子でありながら槍の達人である変わった男だ。
モス方面軍司令に就いている。
「そうそう、とーっても忙しんだけど、わたしー」
魔物を生み出しスタを襲わせた
黒づくめの気持ちの悪い男がこの会議に出席していた。
しかしここに、この男に怖じけ付く者はいない。
「ウェクアズお主、最近見なかったが何処にいたのだ?」
「テンドルちゃん。なーに、わたしに興味あるのー?
まあ師のお使いってところかしらん。
それ以上は乙女のひ・み・つ」
黒い男に話しかけたのは帝国将軍テンドル。
帝国随一の猛将で両手持ちの重い大剣を軽々と振るう。
「お前たち、無駄口を叩くな」
「ビーンちゃんこわーい」
黒い男にビーンと言われた男は
サーベルの達人で基本的に無口な男である。
アルバートの護衛兼副官を務めているが
あくまで表向きはである。
「早く本題に移ってくれ。
お前らと違って俺は暇じゃないんだ」
「何だ! 喧嘩売ってるのか!? 殺すぞ!」
「あー!、だから暇じゃねーと言ってるだろうが!
勝手に死ね!」
「カテス、ルマラン止めないか!」
二人を窘めた男はクトバーン。
片手持ちのロングソードを使う。
剣聖に『基本を学びたいならクトバーンに乞え』と
讃えられた男だ。基本に忠実だからこその強さを持つ。
帝国騎士で巨像騎士隊隊長を務めている。
「まあカテスはモスの動向を探る勅命を受けているからな
本来ここにいるのは不味い」
「そうだ。いつまでも此処にいる訳にはいかねーんだよ!」
カテスは隠密行動に優れ、主に諜報活動の仕事をしている。
双剣や短剣を使うが彼の真の強さは戦闘術にあり
剣の腕ではない。
カテスを弁護したのはゲガルト。
この場にいる中では最年長の38歳。
後の先をとる達人である。
カテスの言葉に怒ったのがルマラン。
ゲガルトとは逆に最年少の18歳。
1年前に十傑入りした細剣の天才である。
天才だがこの席では一番の末席であり、
本人は満足していない。
実力を示す機会を得たくてウズウズしていた。
ゲガルト、ルマランの二人も巨像騎士隊所属の騎士だ。
「そろそろいいか?」
アルバートが一堂に黙るよう促す。
場が静まったのを確認すると、話を切り出した。
「近くビラン連合国へ兵を出すのは知っているな」
頷く一堂。
「今回は私が総司令に任命された。
とはいえ私は帝都より動けないので
レネミー将軍に軍を率いて貰うことになる」
「は」
レネミーがアルバートの言葉を受け合意を示した。
「うむ、レネミーが連合国のフィルス要塞都市を攻めるが
同時にフィルス鉱山を占領する。
この2つを抑えるのは絶対条件だ。
鉱山の方はテンドルとウェクアズに任せる。
あとウェクアズ。
この会議の後、師より別命があるとのことだ」
「心得た!」
「わかったわー」
「それで、わざわざ全員集めたのは?」
ダイレクバーが口を挟んできた。
彼はモス方面軍司令であり当然今回は参陣しない。
連合国侵攻の話だけで呼ばれた訳ではないだろう
と言ったのだ。
「うむ、全員を集めたのは師の言葉を直に伝えるためだ」
「ふむ」
伝達では不味いから呼んだ。ということである。
「では、これより師の言葉を伝える。
『最終的な目標はアマリア王国である。
各位に与えている役割はそのための布石と心得よ。
この事は他言無用。』以上だ」
この段階で剣聖がアマリア攻略の意を高弟達に伝えた。
これはアマリア攻略の為には入念な準備が必要であり、
秘密裏の仕事も多くなる。
剣聖は十傑を使い
いよいよアマリア攻略の準備を始める事を示している。
「アマリアか!」
「あそこの新型巨兵はなかなか厄介そうだな」
「聖女も何名いるか判らぬ」
「今度はアマリアに忍び込めってか」
各自が感想を言い合っていた。
「アマリアと言えば」
ダイレクバーがアマリアで思い出したことがあるのか
口を開いた。
「スタ?だったか。
そんな名の町が魔物に襲われ
アマリアの巨像騎士がコレを討ったと聞いたが
知ってる者はいないか?」
「あー、わたしー見てたわん! それー」
「ウェクアズ、詳しく教えてくれ」
クトバーンは巨像騎士隊隊長として
敵国の巨像騎士の情報は知っておきたい立場だ。
直に戦うかもしれないのだ。
「そうねー、私も流石に遠くから見ただけだけどね。
魔物がスタって町を襲ってたのを
7色に輝く巨像騎士が倒しただけよん。
巨像騎士がやたら強かったわねぇ」
「7色に輝く? 何の神だ?」
諜報員として色々な情報を得る機会の多い
カテスにも心当たりが無かった。
「やたら強かったって。しっかり見てたんじゃないのか?」
テンドルは呆れてしまった。
「スタの町を4m級の魔物、10匹程の群れが襲った。
その中には9m級が1体いたらしい。
9m級の魔物は国境砦より迎撃にきた3体の新型巨兵の内
1体を乗っ取り、他2体を撃破。
そこへ登場したのが7色に輝く巨像騎士だ。
最初の剣の一振りで4m級の魔物全てを両断。
両断された魔物は凍ったそうだ。
次の一振りで凍った魔物が全て粉々に。
三振り目で巨兵を乗っ取った魔物を3枚に下ろし、
それでも復活しようとする魔物を
四振り目で16枚に下ろして凍らせ、
五振り目で粉々にしたそうだ」
詳細を語ったのはレネミーでは無く、アルバートだった。
レネミーは報告書をアルバートにもしていた。
「なんだそりゃ、本当か?アリえないだろ?」
カテスが毒づく。
直に見ていなければ信じるのは難しいだろう。
「さっすが、アルバートちゃん。
まさにそんな感じだったわー」
「魔物の群れって本当…なのか!」、
「いろいろと信じられんな」等、
それぞれが話しかけるというよりは呟いている。
あまりな内容に話を消化しきれないのだろう。
「私のパートナー、知覚の神の聖女が真実だと言ったよ」
レネミーが真実であると告げた。
「レネミーちゃん探ってたのー?悪趣味ねぇ」
ウェクアズはレネミーがスタの件を探っていた事を知り、
不快感をあらわにした。
いや、レネミーの聖女に対する警戒感かもしれない。
「おそらくは風と氷を扱う聖女といったところか」
ダイレクバーも信じられないといった感じで呟く。
「ああ、氷を扱う聖女など初めて聞いた。
神ではなく精霊との契約かも知れないな」
「さしずめ氷精ってところか」
アルバートの推察にクトバーンが追随する。
「流石はアマリア、強大な聖女を持っている。
相手にとって不足なし!」
猛将テンドルが猛る。
「テンドルの旦那、先に鉱山でしょうが」
ルマランの発言に
「判っておる!」
とテンドルは息を荒くして答えた。
「今日はもう解散でいいだろうか?」
ゲカルトは冷静にアルバートに問う。
アマリアや謎の巨像騎士に関しては何にせよ
情報不足なのだ。
ここで話し合っても意味はない。
「そうだな。皆忙しい身だ。
今は連合国侵攻に専念しよう。これにて解散。」
この会議の10日後、
ガレドーヌ帝国はビラン連合国に対し宣戦布告をした。
6強国同士の戦いが始まろうとしていた。
34話了
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剣聖の十傑 一覧は以下の通り
1.アルバート 帝国軍務大臣 (三剣一位)
2.ダイレクバー 帝国上級将、
モス方面司令(三剣二位)<槍>
3.レネミー 帝国将軍 (三剣三位)
4.ビーン アルバートの副官<サーベル>
5.ウェクアズ 特殊任務
6.テンドル 帝国将軍<大剣>
7.クトバーン 帝国騎士、
巨像騎士隊隊長<長剣>
8.カテス 諜報員<双剣、短剣>
9.ゲカルト 帝国騎士、巨像騎士隊隊員
10.ルマラン 帝国騎士、
巨像騎士隊隊員<細剣>




