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33話 広がる波紋

「あらまぁ」


 黒い男がその光景を目の当たりにして言った言葉がそれだった。

帰ろうとしていたが光の柱が立った事にに気づいた。

振り向いた時、そこに居たのは7色に輝く見たこともない巨像騎士。

各国家は聖女の情報を秘匿しているので

王国にその様な巨像騎士を駆る騎士がいても不思議ではない。

黒い男は神々に詳しいわけでもないし興味もなかった。

だから7色に輝く巨像騎士にも興味はない。

だが出鱈目な強さには驚いた。

アマリアの最新巨兵ですら屠ってみせた自信作が瞬殺されたのだ。


「運が悪かったわね。

まさか騎士と聖女がいたなんてね」


黒い男も流石にすこし離れた場所に

もう一騎、巨像騎士がいた事には気づいていない。

アルジとニーには幸いなことだった。


「ま、一定の収穫もあったし良しとしましょ。

それに… ククク」


黒い男は不気味な笑いを残して去っていったが

魔物『リカヨイ』の事を思ったのだろう。

今回のスタ襲撃にリカヨイは参加していない。

襲撃を始める前に逃されたリカヨイの消息は分からない。

しかしあれだけの強い執着を持っているのだ

いずれ騒ぎを起こすだろう。

その時どんな姿になっているのか?

見ることは無いだろうがリカヨイが想い人を食らう姿を

黒い男は思い浮かべたのかも知れない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 スタが魔物に襲われ、巨像騎士が退治した。

その報告はすぐにアマリアの王宮に上がった。

詳細を聞いた女王ルーサミーは驚いた。

7色に光る巨像騎士、

それは 最初のの聖女アリーが顕現させた巨像騎士と同じだ。

アリーの巨像騎士に関する記録はその7色の光と

一瞬に魔物を切り刻む性能しか残されていない。

その姿も何の神を顕現させたのかも判らない。

神格化され誇張された情報だと思っていた。

その7色に輝く巨像騎士が実際に顕現しスタを救ったという。

話を聞いただけでは到底信じられない。

最新鋭の巨兵『パラディン』3体が

1匹に魔物に倒された事も信じがたいが

10体もの魔物をただの一振りで同時に真っ二つにし、

巨大な魔物を一瞬で切り刻んだというのだ。

報告の内容があまりに現実離れしていて

普通であれば到底信じることが出来ないが

文献の内容と合致していた。

どちらも嘘とは考えにくかった。

偶然にしては出来すぎている。

そして巨兵を操っていた騎士に生き残りがいた。

騎士マルクだ。

魔物に機体は乗っ取られたものの魔導球への侵蝕もなく

奇跡的に無傷で生還できたのだ。

そのマルクは乗っ取られながらも一部始終を見ていた。

自身の機体が仲間を殺した事も全て。

そのマルクの目撃した内容によればスタの防壁から

騎士と聖女が飛び降り巨像騎士を顕現させたという。

後は他の報告と同じだ。

スタに騎士と聖女がいる、もしくはいたという事になる。

アリーの力を継ぐ聖女が出現しているとしたら、

その力を他国に渡すわけにはいかない。

女王は即時に騎士と聖女の情報集めに乗り出した。

余談だがその後マルクは騎士を廃業したという。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 スタに放った密偵ジーキスの報告が上がってきた。

事件から3日後の事だ。

その報告書に目を通した帝国将軍レネミーは

あまりの内容に頭痛を覚えた。

スタが魔物に襲われ巨像騎士が退治した。

それは恐らく事実だろう。

目撃者も多いだろうからすぐに裏が取れる筈である。

しかし魔物が群れを成して襲って来たとか

9m級の魔物が巨兵を乗っ取ったとか

それを7色に輝く巨像騎士が一瞬で切り刻んだなぞ

信じろと言われても無理がある。


「凄い話だな」


そう言って、隣に座っている聖女イデアに報告書を渡した。

報告書を読んだイデアは静かに言った。


「これらは事実です」


「そうか」


知覚の神の聖女イデアが事実と言った以上、

報告書には嘘がないということだ。

その場合、重要になるのは以下の3点

魔物群れを成した点と

巨兵を乗っ取った点

そして強大な力を持つ聖女が恐らく

アマリアに所属しているという点。

これらは師に報告しなければならないだろう。


「そうか、報告ご苦労」


「は」


剣聖の反応は蛋白だった。


「魔物になにがしらの変化が起こったのは分かった。

しかし1機の巨像騎士に倒されたのであれば

大した問題にならないだろう」


「師よ、しかし…」


「卿も心配性だな。

アマリアに強大な力を持つ聖女がいる事は心しておこう。

ところでどんな巨像騎士だったのだ?」


「七色に輝く巨像騎士だったと。」


レネミーの返事に剣聖の表情が変わった。

常に冷静な男が驚愕していた。


「師よ、どうかされましたか?」


「い、いや何でも無い。

その聖女の素性を調べてくれ。可能なら引き抜きたい。」


「は! すぐに取り掛かります。」


師の変化に驚きつつもレネミーは一礼し下がった。


剣聖は一人になると目を瞑る。


「それでも貴女様は守ろうとなさるのか……」


そのつぶやきは誰に向かってのことなのか

それを知る者はいない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「七色に輝く巨像騎士……」


 帝国に渡って来た、アマリア王女ミリンダこと

冒険者ミリーは宿屋に併設された酒場にいた。

興奮気味にスタ魔物襲撃事件について語る商人から出た

その言葉が偶然にも聞こえてしまった。


「オジサン! 今の話詳しく教えて!」


すごい剣幕で迫るミリーに気圧された商人は

自身が見た一部始終を教えた。

商人はスタに到着前だった為、

戦闘の状況を外で見ていたのだという。


「凄い話っすね。

もう少しスタに残っていたら見れましたかね。」


一緒に話を聞いていたガレッスの感想にミリーが噛み付く。


「冗談じゃないわ!」


剣聖や母よりも真実に近い所にいるミリーは

恐れと共に確信を得た。

銀髪の女性がスタにいて、7色に輝く巨像騎士がスタを救った。

偶然が2つ重なったのだ。


<スタにアリー姉さまがいる!

私が転生しているのだもの。姉様だって転生していても不思議じゃない>



ああ、私は何処まで逃げてもこの呪縛から逃げられない!


「ミリー、どうした?」


ガレッスの言葉に意識を引き戻されたミリー。


「ガレッス、ごめんなさい。 私はもう休むわ。」


ミリーは血の気が失せた顔で借りている部屋に戻っていった。


<関係ない! 私にはもう関係無い‼>


ミリーは必死に繰り返し自らに言い聞かせるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 スタは復興に追われていたが

そんな中、国境砦から派遣された兵士による

聞き取り調査も行われていた。


「では、この者等が顕現させたのではなく、

防壁から落ちた所を助けられたという事なのだな。」


カーライルとメアルには何度も聞き取り調査が行われた。

目撃者の多くは二人が防壁から落ちた時、

光の柱が立ったと語っている。

2人が疑われるの仕方がないことだ。

タジンは慣れたものだった。

以前も同じ様にケムに巻いた経験があるのだ。

今回はメアルの適正検査を何回やっても

適正無しという結果になるので

さすがにメアルが聖女では無いという結論になった。

今回の対応については

ニースから7色の巨像騎士は秘密にするように言われていた。

バレればカーライルと引き離される可能性が高いと言われ、

カーライルが騎士になるまでの間は秘密にする事になったのだ。


 あのあと7色の巨像騎士は強烈な光を発して消えた。

その場に立っていたのはカーライルとメアルだが

その光景を実際見ていた者はタジンとアルジ、ニースくらいだ。

他の者等は助かった事実に安堵し、放心してしまった。

カーライルとメアルは気がついたら地面に立っていたと言って

誤魔化したのだ。

偶然にも通りかかった流浪の騎士と聖女が魔物を退治した

という結論に今回もなったのだった。

スタの町に立ち寄りもせず忽然と姿を消した騎士と聖女。

ミステリアスな2人についてはいろいろな憶測が飛び交っている。

中には、落ち延びたテリアの将軍ギルバートと聖女ニーという

説もあり、アルジとニースを苦笑させた。


 町の復興については町内部の被害や人的被害が無い為

外壁の修理、外の魔物だった肉片の浄化や

街道の再整備などが主な内容となる。

因みに巨兵の残骸については

その日の内に砦に残っていた巨兵が回収していった。

また、街道にモンスターが出現する数は激減した。

やはり魔物の存在が森のモンスターを平野に出させていたのだろう。


 町に人的被害は無かったのはメアルの回復魔法によるところが大きい。

しかし、犠牲者が0だった訳では無い。

魔物が町に至るまでいくつかの村が襲われていたし

騎士2名も殉職した。

魔物の浄化が終わった次の週に慰霊祭が行われた。

極めて異例の事だが女王陛下の名代として

王女サーランが参加。

警護隊も警備に駆り出されていたがその中には

カーライルとメアルもいた。

王宮の動きを警戒したタジンが敢えて裏方に回したのだ。



 カーライルは粛々と進められる慰霊祭を遠目に眺めながら

あの時の事を考える。

巨像騎士になったあの時、不思議と力の使い方が分かった。

そして何よりも反りの入った片刃のブレード。

その手に馴染んだ感じが不思議だった。

今まではすぐに切れ味が落ちるブレードを嫌い

叩き切るソード系の剣を愛用してきた。

でもしかし、もしかしたら

あの巨像騎士の持っていたブレードの方が

自分に合っているのかも知れない。


「カール。どうしたの?」


メアルはカールに寄り添っている。

メアルはメアルであの日の奇跡は

今でも信じられない気持ちでいる。

突如聞こえた声と湧き出た力。

あの日以降は何度こっそり挑戦しても

巨像騎士を顕現させることが出来なかった。

しかしそれはそれで構わない

あの時は何かが力を貸してくれたから

奇跡が起きたのだろう。

カーライルを助けられた

カーライルの聖女になる事が出来た。

またカーラルに愛してもらう事が出来る。

それで十分だと思うことにしたのだった。


「あの時持っていた武器。

あの武器が凄く手に馴染んだんだ。長年遣ってきた感じがしたんだよ。


「そう。 武器の事はわからないけど

カールはその武器の方が合うのかもしれないわね。」


「何の話だい?」


二人の会話に割って入ってきたのは 帝国のスパイのジーキスだった。

指示により聖女の情報を集めることになり、

長期にこの町に腰を据えることにした。

手始めにジーキスは警護隊に入隊した。

町の防衛戦にも参加した功績もあり、すんなり認められたのだった。

ジーキスとしては

当事者の2人からの話も聞いておきたかった。

彼らの位置は防壁の上だった為

会話をしても慰霊祭の邪魔になる事はない。


メアルは折角の2人きりを邪魔されて少し不機嫌になった。

自然と笑顔も作り笑いになる。


「俺の武器の話さ。今の武器より馴染むものがある気がしてね。」


「そうか、俺も冒険者になりたての頃に色々試したな。

不思議だよな、俺は剣が気に入ってて剣で身を立てようと思ったのに

一番上手く扱えるのは何とも思って無かった弓ときたもんだ。」


「あんた、弓の腕は相当だってな。」


「上には上がゴロゴロいるさ。ところでアンたら

通りすがりの巨像騎士様に助けられたんだろ?

どんなんだったんだい?」


「またその話か。」


「アンタにとっては耳タコでも俺も少年時代には

巨像騎士に憧れてたんだ。知りたいんだよ。少しでもね。」


「と言ってもな、落ちて動転したし、

恐らく巨像騎士に取り込まれていたんだとは思うけど、

その間の意識は無いんだよ。」


「ええ、気がついたら私達は立ってて周りには誰も居なかったわ。」


メアルも会話に参加してきた。


「そうか、ってアンタ凄い美人だな。

そうかー小隊長さん羨ましい限りだ。」


はっきりと美人と言われたがメアルにはどうでもいいことだ。

しかし羨ましいと言われた時のカールの表情が嬉しげだった。

その一点でこの男を許す気になった。


「お上手ですね。でも有難う。」


「どういたしまして。

ま、邪魔して悪かった。見つかったらどやされちまうから戻るよ。」


「ま、メアルを褒めてくれた事に免じて

俺も報告はしないでおくよ。」


「それは有難き幸せ。 では。」


ジーキスは去っていった


ふう、とカーライルが息をついた時、

姿なき声が聞こえてきた。


「あやつには用心するのじゃ。」


「ニースさん?」


「そうじゃ、姿を消しておるだけじゃ。

あの男は必ず接触してくると思ったわ。」


「知り合いですか?」


「ここに来た際に一緒に護衛の依頼を受けたという縁だけじゃな。

しかし、恐らくあの男は王国か帝国のスパイじゃ。」


「え?」


「ここに来る前にも何処かに頻繁に報告を入れておった。

今はこの町を作った騎士と聖女の情報を集めておるのじゃろう。

クックック ご苦労なことじゃな。」


2人が巨像騎士に取り込まれている間意識を失っているという

話はニースの入れ知恵だ。

アルジとニースが騎士と聖女であることは

タジン、カーライル、メアルには明かしてあった。

全て、カーライルとメアルを守るため

巨像騎士に精通している事を示さなけれはならなかったからだ。


「ニースさん有難うございます

おかげで誤魔化せそうです。」


「まあ、この会話も聞かれたら事じゃ。油断するでないぞ。」


そう言い残してニースは何処かに行ってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「参った!」


そう言ったのはタジンだ。

慰霊祭の翌日、通常業務に戻った警護隊では

訓練が行われていた


タジンから一本取ったのはカーライルだ。

慰霊祭があった当日の夜、

カーライルは巨像騎士が持っていた様な反りの入った木刀を

手に入れる事にした。

カーライルの父はサーベルの使い手だった。

今まではカーライルがソードを愛用したため閉まってあったが

父の練習用木刀は反りに入ったサーベル形状だった。

その木刀を参考に自分に合うよう徹夜で作ったのだ。


タジンは今日の手合わせで確信した。

カーライルはもう自分の敵う相手では無いと。

フェイントには相変わらず引っかかる、

でも、それでも反射神経と巧みな武器の捌きで防がれてしまうのだ。

それ程にカーライルにこの武器が合っているのだろう。


この日の夕方、タジンはカーライルに

一本のサーベルを渡した。

それはかつてカーライルの父が長すぎて合わないと

残したものだが形見代わりにタジンが預かったものだった。

手入れはタジンが行っており、今でも綺麗だった。

この日からカーライルの武器はサーベルになった。


33話了

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