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31話 スタ防壁の攻防

 アルジさんとニースさんがギルドに報告に戻って

4日経っていました。

今日、私とカールはお休みの日です。

朝一で買い物を済ませた後、

カールにお願いして魔法の特訓に

付き合って貰っています。


「俺は何をすればいいんだい?」


「側にいてほしいの。」


私の中に眠る力があるとニースさんは言いました。

私にはわからないかったけど

カールが刺された時、

治療をした私の体が光って

カールは目覚めたとアンから聞いています。

私はカールの為に何かしようとする時、

力を発揮できるのかも知れません。

私とカールはそう、

ずっと以前からの縁があるようにも感じています。

だからカールが側に居てくれたら

もしかしたら聖女の力を発揮出来るかもと思い、

今日は思い切ってカールにお願いしたのです。

カールが隣に居てくれる。

朝起きて、隣にカールが寝ていて、

一緒に起きて、

朝の、その日課というかコミュニケーションをして

一緒に朝食を取る。

一緒に出勤し、一緒に帰宅、

一緒に夕食を取り、一緒に愛し合って、一緒に寝る。

カール私は幸せです。

もう、私は満ち足りました。

だから残こされた時間は長くは無いけど

カールの為、カールの夢の為に全てを使います。


「カール。後ろから抱きしめていて。」


「ああ、わかった。」


カールは私を抱きしめてくれました。

背中に感じるカールの温もり。

ずっと感じていたい。

でも、今はカールの聖女になるために

自分の可能性を試してみます。

カールの温もりを感じながら

自分の内側に意識を向けてていきます。

いつも祈る時は、意識は外に向かっているので

不思議な感覚です。

しかし、自分に掛けられた呪いの力

その禍々しさも感じてしまいます。

禍々しい呪いの力の中に

なにか呪いとは別の不思議な力を感じました。

この力は何だろう?

ニースさんが言っていた力かも知れません。

そしてカールの温もりを感じ

その力が活性化している様に思えます。

その力に意識を向けていくと徐々に力は増大していきます。

一瞬!

ほんの一瞬ですが

ある映像が私の中に映し出されました。


夕日の丘に

私?と誰だろう?男の人。

夕日を背にして顔ははっきりとは判りません。

でもとても懐かしい。

何より、2人の背後に七色に輝く巨人が立っていました。


<七色の巨像騎士! これはアリーの記憶?

違う。アリーと一緒に巨像がいる訳ないし形も違う。>


その時、呪いの禍々しい気配を感じました。

嫌な汗が吹き出し、

集中が乱されました。

私は力が入らなくなって…


「メアル! 大丈夫か!」


カールの声に意識を戻す事ができました。

カールが居なかったら

そのまま意識を飲み込まれてしまったかもしれません。

今は、自力で立っていられず

カールに体を預けている状況でした。

荒く息をする私を

カールは優しく受け止めてくれています。

落ち着き

自分で立てるまでに回復した私は

カールに向き直りました。


「カール。有難う。

貴方が一緒に居てくれなかったら

私は呪いの力に引きずり込まれていたかも知れないわ。」


「そうか。ともあれ無事で良かった。」


「一つわかった事があるの。

ニースの言っていた私に秘められた力は

呪いの力で封じられているみたいなの。」


「呪いがメアルの力を封じている…」


「ええ、だから呪い以上の力がないと

この力は使えないかも知れないわ。」


私に示された希望は、

呪いの力で閉ざされてしまいました。

カールの力になりたいのに。

カールごめんなさい。


「メアル…」


カールは優しく私を抱きしめてくれました。

どれくらいこうしていたでしょう?

私達の時間は不意に破られたのです。


カーン! カーン! カーン! カーン! カーン!


鐘の音が5回。

それは非難指示を告げる合図でした。


「緊急事態だ!魔物か?」


「カール!」


「メアルは避難所に行ってくれ!」


「待って、私も警護隊よ。一緒に行くわ!」


「メアル、わかった。無理はしないでくれよ?」


私達は隊舎に急ぎました。


====================


「緊急事態? 帝国でも攻めて来たのか?」


冒険者ジーキスは本人に自覚は無いが

帝国の指示でこの町にやって来たスパイである。

スタで起こった事を報告するのが今回の仕事なのだが

まさか本当に何か起こるとは思ってもおらず、

狼狽えてしまった。

しかし仕事である以上は何事が起きたのか

確認しなければならない。

根が真面目なジーキスは、

この町から情報を得る為のパイプは作っていた。

苦しい言い訳だが

休暇がてらこの町に来たことになっている。

「物好きな奴だ。」などと言われていた。


ジーキスがパイプを作った中には

警護隊の隊員もいる。

今週はちょうど防壁の見張りだった筈だ。

防壁まで行くと、

慌ただしく戦闘準備が行われていた。

その中に見知った顔があった。


「何が起こったんだ!?」


「ジーキス! 魔物だ! 直ぐに避難しろ!」


「魔物だって!?」


この件を報告するために派遣されたに違いない。

と思ったジーキスは避難所には向かわず、

手伝いを申し出た。


「俺だって冒険者の端くれだ。

今は緊急事態だろう? 何か手伝えることは無いか?」


「済まん。では弓と矢を運ぶのを手伝ってくれ。」


「ああ、俺は弓も扱える。射手にもなれるぜ!」


「判った。隊長に言っておく。」


こうしてジーキスは防壁に登ることに成功したのだった。


====================


「アルジ!不味いぞ!」


「どうした!?」


アルジとニースは思いの外、

スタに戻ってくるのに時間がかかってしまった。

馬を走らせてスタまであと少しと言うところまで来ていた。


「スタに魔物の群れじゃ!」


ニースは風の精霊の力を借り、スタの様子を遠見で確認したのだ。

見えたのはスタの町と、スタに魔物の群れが向かっている様子だった。


「群れだと!? 数は?」


魔物が群れを成すなど、あり得る話では無いが、

実際大森林の調査でも複数の魔物の足跡が発見されたのだ。


「遠くて解らぬ。だが10匹は居そうだ

アルジどうする?」


「多いな!ニース行けるか?」


「行けるがいいのか? 

流石にモロバレじゃぞ!」


「構わん。それでどれくらいで行ける?」


「3時間はかかろう。」


「判った。急ぐぞ!」


山の中光の柱が立つ。


<生き伸びろよ? カール、メアル!>


アルジは カールとメアルに新たなる可能性を見た。

だから、2人を騎士と聖女にしてやりたいと思った。

しかし、今スタは魔物の脅威に晒されている。

最悪の事態を危惧せずにはいられなかった。


====================


「隊長!一体何事です?」


隊長室にたどりついたカールの質問に対し、

隊長の答えは、予想通りでした。

すでに大森林でその可能性を発見したのですから。


「魔物がこちらに向かって来ている。

既に国境砦に巨兵出動の要請を出した。

我々警護隊は防壁を死守する。」


「こちらも巨兵で出ましょう!」


「ダメだ!」


「何故です!」


カールの提案に対し、隊長は冷静に否定しました。

おそらくは…


「信じられんが魔物は10匹だ。

幸い、数は多いもののマッドベアタイプばかり。

大きくとも4m。

防壁を登って来たとしても死守はできるだろう。」


「危険です!」


「判っている!しかし、数が多すぎる。

砦の巨兵達が到着するまで持ちこたれば勝機はある。」


私が生贄になれば。

私の呪いの力ならきっと魔物を殺してくれるでしょう。

そうすれば町は助かる。

その結果私はこの町に居られなくなるかも知れません。

でも、カールをアンをリリィちゃん、お母様を助けるには

この方法しか。


「カール。」


「メアル。君の考えている事はわかる。

だからダメだ。メアルは俺が守ると言っただろ?」


「カール! 何をする気だ。」


「防壁で守るとなれば俺も防壁に行きますよ。

ただし 町の中に巨兵を配置して下さい。」


「ああ、万が一に備えて配備しよう。

だがカール。本来はお前が巨兵担当だろう!」


「ですが、防壁こそが要です。」


「まあ、今回は木の巨兵は私が受持とう。」


「副隊長!ありがとうございます。」


いままで隣で黙っていた副隊長が

カールに助け舟を出してくれました。


「カール。くれぐれも無理はするなよ?」


隊長はカールの出撃を認めてくれました。


「私も行きます。」


「メアル! 君は避難所に行くんだ!」


「隊長。私もカールと一緒に行かせて下さい!

きっと私の回復の力が必要です!」


「むぅ、わかった。無茶だけはしないでくれよ。」


====================


「魔物って多すぎるだろうが!」


ジーキスは一心不乱に魔物に射掛けていた。

矢は命中する。

が、魔物は怯むことはなく向かって来る。

もうじき防壁に到着してしまう。


「クソ! 魔物が! 死ねよ!」


矢は命中するのだ。

しかし効いているのか不明だった。

魔物達は防壁に上に食料がいる為、

一心不乱に防壁の上を目指す。

また防壁に中から美味しそうな匂いがいっぱいするのだ。

もうじきご馳走にありつける。

ついに魔物達が防壁まで到着してしまった。


グオーーー!


よだれを垂らし雄叫びを上げる魔物達。

食事にやっとありつける。

そんな喜びの咆哮だった。


「来るぞ!」


警護隊の小隊長だろうか? 誰かが言った。


「登って来たら 叩き落とせ! それを繰り返すんだ!」


魔物との激しい攻防がはじまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


遠くで、スタの様子を眺める男が居た。

黒いコートを着た、死神のような不気味で不吉な男。


「無秩序ねえ。

これではまだまだ軍隊とは言えないわん。」


魔物はお互いを襲い合うことはしなくなったものの

とても連携行動を取っているとは言えない。

それぞれが勝手に餌を捕食しようとしているだけに見える。


「これでは面白くないわねぇ。

はやく到着しないかしら?

待ち遠しいわー、

素敵なプレゼントが待ってるから

それまで精々期待を持って頑張ってね。

そう、絶望というプレゼントがね。 ククククク。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ジーキスは弓から槍に持ちかえていた。

防壁に登ってくる魔物をひたすらに突き、叩き、落とす。

魔物は直ぐに登ってくるが、

数が多いだけでバラバラに登ってくる。

結局数を生かしきれていない為、

タジンの作戦通りに状況は推移していた。

戦闘開始から2時間程経った。

魔物はタフだったが

行動は単調で対処にも慣れてきた。


<なんとか、巨兵が来るまで持ちこたえられそうか。>


そんな事を思った時、悲鳴が起こった。

偶然だったかも知れな無い。

落とされたマッドベアを踏み台にした魔物が現れた。

この町の防壁は10M程とそこまで高くはない。

魔物化したマッドベアの身体能力であれば

3M程の踏み台があれば

登り切るのは容易だった。


<不味いぞ!登っちまった!>


見れば防壁上には女が一人いた。

魔物はそいつを狙っているようだった。


====================


魔物がついに登って来てしまいました。

今までは順調に魔物を叩き落とせていて、

怪我人も居ませんでした。

私は回復以外でも役に立てないかと

防壁から顔を覗かした魔物に、

松明を投げつけたのです。

アリーの夢で得た知識で、いくら魔物化しても

火を恐れる本能は完全に無くならない事を知っていました。

魔物が一瞬でも怯めばと思って投げた松明は

私の予想通り魔物を怯ませ、

その隙きをついて魔物を落とすことが出来ました。

しかし魔物と目が合ってしまったのです。

私と目の合った魔物は、

私を食べようと一心不乱に防壁を登ろうとしました。

他の魔物を踏み台にし、槍が突き刺さり、叩かれようとも

ついに登りきったのです。


<私が狙いなら、私を食べればいい。

ただし呪いの力が襲いかかるわよ。>


私は覚悟を決めました。


そんな時


「魔物め!」


魔物に正面から挑んだのはカールでした。

カールに襲いかかる魔物


「カール! 危ない!」


私の叫びに呼応してか

カールの体が光りました。


途端にカールの動きは疾くなったのです。

どうやら私は身体強化の魔法をカールに掛けたようです。

無意識にカールが魔物の攻撃を躱せるようにと

願ったのかも知れません。

カールは魔物の攻撃を躱し

簡単に魔物の懐に飛び込むと

左足に剣を一閃。

左足が切断され、バランスを崩した魔物に

カールの小隊の隊員さん達が槍で突きます。

魔物は槍で押され、

防壁から突き落とされたのでした。


「メアル! 大丈夫か?」


「え、ええ。カールありがとう。」


「よかった、この調子ならなんとかなりそうだ。

メアルは避難所に居てくれ。」


その時、誰かが叫びました。


「なんだあれは!」


見れば大きな魔物が1匹こちらに向かって来ています。

城壁に群がっている魔物の倍はあろうかという魔物でした。

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