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24話 帝国緊急会議

帝国の属国テリアがブウェイ国境砦の戦いに敗北し、

カーライルとメアルが結ばれて、

徐々にバカップル化し始めた頃。

ガレドーヌ帝国首都ガーハットにて。


ガーハットには王城は無い。

城の代わりに見事な宮殿があり、

皇帝が暮らしている。

更に宮殿に続く後宮があるが、

現皇帝は14才と成人しておらず、正室も側室も居ない。

後宮は現在、皇帝と契約する

聖女一人の為に使われていた。

聖女の情報は完全に統制されており、

彼女については全くの謎に包まれていたが、

このまま行けばこの聖女が正室になるものと

考えられていた。


現皇帝が即位したのが3年前。

先帝の崩御は病気によるものと公式発表されている。

しかし実際は、国を顧みない先帝の散財、暴虐ぶりに、

内乱が起こる寸前であったのを

当時の皇太子(11才)が軍部をまとめ上げ、

先帝を廃し(誅殺し)、帝位に就いたのだ。

現皇帝が軍部をまとめあげることが出来たのには

理由がある。

現皇帝が当時、ある者と結んだ

〝ある契約〟によるとだけ言っておく。

先帝を廃すると今度は、

政治の場から遠ざけられる様になった旧体制派の貴族達と

政治の場に台頭してきた軍部〝皇帝派〟との対立が始まった。

ここでも皇帝が結んだ〝ある契約〟が力を発揮し、

皇帝派が勝利した。

国内が落ち着きを取り戻し、

貴族から没収した財産により財政問題も無くなった。

さあこれからだというタイミングで

テリア敗戦の報せが帝国に入ったのである。

ガーハートの行政を司る行政府。

その行政府にある大会議室にて緊急の会議が行われていた。

議題はテリアの敗戦とその対応についてだ。

宮殿にも皇帝の執務室の他、多数の会議室もあるのだが、

今回行政府で行われることになったのは理由がある。

今回の会議を要請したのがテリア側だったからだ。

テリア国は帝国の属国とはいえ自治権を持っている。

今回の戦いは代理戦争とはいえ、

テリアとクドナルの戦である。

帝国としては、情報を集めはすれど即時報復という訳にもいかなかった。

更に帝国としてもモスとの全面衝突は避けたいところだった。

ある目的のため西に進出したいからだ。

そういう事情もあり、帝国内でも論争中だったところ、

テリア側から会議の要請があった。

帝国としては非公式でいうことで応じたのだった。


会議室には長机があり

長机から少し離れた更に上座側に

特別に設えた椅子が設置されており、皇帝が座っている。

長机の上座側から順に左右には帝国宰相と、

もう一人 初老の男が座っている。

ついで左側に文官と思われる人物が3人、

右側に軍部より将軍が3人、

末席側にテリアの宰相と

もうひとり将軍らしき男が座っていた。


皇帝が最初に口を開いた。


「挨拶は抜きにして早速本題に入りたい。

此度は貴国の要請によりここにいる皆に集まってもらった。

よってテリア国宰相、エスタ殿より説明をお願いしたい。」


とテリアの宰相が名指しされた。


「クアトロ・二オン・テリア陛下の名代、

宰相ロデオ・エスタでございます。

ガレドーヌ陛下に謹んで申し上げます。」


テリア宰相が 立ち上がり、恭しく礼をする。


「挨拶痛み入る。ではお願いする。」


と皇帝が返した。


「は、早速。

この度、我が国がクドナルとの戦に敗れた件につきまして

ご報告とご判断を仰ぎたい件がございまして

急ぎ会議をご提案させて頂きました次第です。」


「うむ。それで?」


先を促す皇帝。


「この度、我が国の国境のにあるブウェイ砦に

侵攻してきたクドナル軍約3000に対し、

我が軍は将軍ギルバート指揮のもと

巨兵8体および兵2000名で迎え撃ちましたが

大敗を喫しました。

将軍ギルバートは生死不明。

捕らえられた可能性もあります。

巨兵8体も全て大破。

同化した騎士8名は全員死亡。

兵に損害はありませんが、

砦の城壁が敵の新兵器により崩れ落ちました。」


「破裂する飛ぶ杭でしたかな。」


と口を挟んだのは上座右に座る初老の男だ。


「はい、剣聖様。

その杭を運んだと思われるのが、

巨兵ではなく遠隔操作で動く

4本足のゴーレムと思われます。

更に敵の巨像騎士は3体おり、全て人馬型。

瞬く間に巨兵8体が倒されました。」


「杭といい、人馬といい、にわかには信じがたいが、

これはクドナルではなくモスの仕業でしょうな。」


と帝国軍部の将軍の一人が発した。


「あの〝テリアの双璧〟ギルバート将軍が

勝てなかったとは。」


と 次いで帝国の宰相が言った。


「ギルバートは元は冒険者上がりの男。

戦の何たるかを真に知るものでは無いですからな。

もっともしぶとい男ですから、

まだ生きてるかもしれません。」


と発言したのは、

末席にいるテリアの将軍と思われる男だ。


「デリカット将軍、控えなさい。」


テリア国宰相エスタが嗜める。


「よい。まだ貴国には もう一人の双璧、

デリカット将軍がいる。頼もしいではないか。」


と皇帝。


「有難きお言葉。」


と将軍デリカットは一礼した。


テリア国将軍 レスブリッジ・デリカット。

テリアの双璧と謳われる将軍のもう一人で

〝破砕のデリカット〟という異名をもつ

攻めに強い将軍だ。

ギルバートが将軍になるまでは

テリアの将軍の中で随一の実力を持ち、

テリアを一身で支える自負を持っていた。

そのためギルバートの事は快く思っていない。


「人馬型と言い、破裂杭と言い、モスめ、

厄介な事を考える。それでクドナルの動きは?」


と帝国宰相が話しを戻した。


「それが、クドナルは我が軍を追い払った後、

理由はわかりませんが

追撃も砦を占拠せず引き揚げました。

我が軍は砦周囲に新たな陣を築き、警戒していたのですが…」


「そこまでは聞き及んでいるがまだ続きがあるのだな?」


と、皇帝が問う。


「はい、クドナルより停戦の使者が来ております。」


「何だと?」


「何を考えているんだ!」


いくつもの声が上がり、ざわつく会場。


「静かに!御前である。」


と帝国宰相が場を鎮める


議場が静まる。

そこに、


「これは、脅しですな。」


剣聖と呼ばれた初老の男が穏やかな口調で言った。

今回クドナル、いやモスは砦を占拠しなかった。

砦とテリア軍の主力を壊滅させておきながら

いつもの小競り合いと同じ体を装ったのだった。

つまりは、本気で事を構えるつもりはない、

という事なのだろう。

帝国宰相が剣聖の言葉に思い当たる事があるのか

顎に手を当て考え込む様に発言した。


「密偵によれば、

モスでは南征の準備が進められておりますな。

此度は後顧の憂いを断つ為の牽制。

といったところでしょうか。」


「クアトロ殿(テリア国王)はどのようにお考えか?」


と皇帝が問う。


「我が王におかれましては、

〝対抗策が出来るまではこの屈辱を受けるしかない〟

とお考えで御座います。

そこで本日は陛下のご意向を伺いに参上した次第です。」


「成る程、クドナル、いやモスのこの度の挑発に

対抗の策がある者はいないか?」


と皇帝が会議の参加者全員に問う。


「恐れながら」


帝国将軍の1人が発言した。


「申せ。」


「今回、宣戦布告したのがクドナルであるにも関わらず、

出張ってきた巨像騎士は風の力を使ったと聞きます。

風を信奉するのはモス国で間違いありません。

であれば、モスにキッチリお返しすべきです。

テリア国殿にはクドナルと停戦して頂き、

モスが安心して南征したところを

帝国軍よりクドナルに攻めるのは如何かと。

杭は攻城兵器であって守りには向かないでしょう。」


別の将軍が口を挟む


「それでは、我らとモスの全面戦争になるではないか!

たしかに初戦は優位に立てるかもしれん。

だがモスがとって返してきたら、

我らも西を攻めるどころではなくなるぞ。

人馬型の力も測りかねるし、

卿は杭を攻城兵器というが、

あれをこちらの巨兵や、

兵、本陣に打ち込まれればひとたまりもない!

そもそもどれだけ用意しているかも判らんのだぞ!」


以降、意見が飛び交うが有効な意見は出そうもない。

結局のところ、

モスの新兵器と人馬型の力を測りかねている。

他にも何か隠している可能性もあるのだ。


「ええい! モスの脅しに屈する他ないということか!」


と皇帝が声を荒げた。

議場が静まり返る。

そんな中、剣聖は悠然としていた。

先ほどの白熱した議論に全く発言せず

黙っていたのだが

まるでその事に誰も気づかなかった。

その場に居るのにも関わらず

風景と化したように居る事を意識させない。

皇帝は 剣聖が意図して気配を消している事に気付き、

わざと場を鎮めるために先の発言をしたのだった。


「ビアンキ卿にはなにか意見はないか?」


皇帝が発言を求めた。


〝剣聖〟ワイヤー・ビアンキ

元々は平民でビアンキ姓は持たなかった。

出身国は不明で、本人も語ろうとはしない。

元々は諸国を巡る旅人で、

諸国で様々な剣術試合に悉く勝ち、

いつしか剣聖と呼ばれる様になった人物である。

この世界で〝剣聖ワイヤー〟の名を知らない者はいない。

カーライルも憧れている人物である。

剣聖ワイヤーは特定の国に所属しない人物として

知られていたが、3年前、新皇帝即位式の後、

新皇帝の剣術指南役に剣聖ワイヤーが就任したと

突如発表された。

就任に際し貴族姓であるビアンキを贈られ、

ワイヤー・ビアンキとなった。

〝剣聖ビアンキ〟は帝国内では浸透しつつあるが

一般的には〝剣聖ワイヤー〟が主流だ。

いずれにせよ当代、

剣聖といえばワイヤー・ビアンキを指し、

並ぶ者は居ない。

皇帝は普段は「先生」と呼び、剣術のみならず

政治に関しての意見交換をしているようだが、

剣聖は皇帝以外の第三者がいる場で

政治的なことに口を挟むことはない。

皇帝があえて、意見を聞きたい時の呼び方が

「ビアンキ卿」であった。

剣聖ビアンキが口を開く。


「恐れながら、臣にも妙案はございません。」


「そうか。」


と皇帝。

皇帝は剣聖の真意を受け取った。

〝妙案はない〟と言った。

()()()である。

では、後で妙案以外を聞くとしよう。


「であれば、

今はこれ以上の議論は時間の無駄というもの。

エスタ殿には改めて我が国の方針をお伝えしよう。

諸卿らもそれで良いな?」


「「「「はは!」」」」


こうして会議は結論も出ないまま閉会となった。

宮殿に向かう馬車の中、

馬車には皇帝の他は剣聖が載っているだけだ。

馬車は防音仕様になっており、

会話を盗み聞きできる者は居ない。


「先生。早速だが妙案以外を教えて欲しい。」


「ははは 。 相変わらず陛下は性急ですな。」


「〝勝者は時を逃さず〟とは先生のお言葉だ。」


「左様、ですがその言葉は 機を捉える事の重要性を説いたもの。 いついかなる時も敏感にという事では御座いませんぞ?」


「では 、今は急ぐ時ではないと。」


「そうですな。 いいではないですか。

講和を結び、モスに南征をさせておけば。」


「脅しに屈しろと。」


「その時間で、対応策も講じることが出来、

こちらも西に専念できますれば。

更に言えば、モスの南征の様子を探れば

モスの手の内も知れるというもの。」


「そうだが、虚仮にされて悔しいではないか。

こちらが飲まざるを得ないと踏んで仕掛けてきたのだ。

来るなら来てみろと。」


「油断させておけば宜しいかと。」


「……」


「陛下、私がここにいる理由。

忘れてはおりませんぬな?」


「ああ、勿論だ。」


「帝国の悲願はあくまで東ですぞ。

その為に私は陛下の元で力をお貸ししておるのです。」


「西と、東を制した後、南に当たればよいのですよ。

テリアなどその為の捨て石になされ。」


「……わかった。

先生の言う通りだ。まずは時間を稼ぎ、西を制圧する。

その間に帝国でも対抗できる兵器と

巨像騎士を用意しよう。

その後、東のアマリアを制圧できれば、

確かにモスはおろか、

他の強国も手出しは出来ないだろう。」


「左様。あの恥知らずな邪悪な国を滅するのは

帝国皇帝に課せられた正義の使命。

私はその使命を補佐するため、

あなた様なら可能と感じた故ここにおります。」


「以前から感じていたのだが

先生はアマリアに恨みでもあるのか?」


「そうですな…」


剣聖は少し昔を懐かしむ表情をしたが、

すぐに冷静な感じに戻り、


「その昔にあの国は許されざることをした。

それを到底許すことができないだけでございます。」


「そうか…ともかく帝国の為、

是非とも先生と 〝十傑〟の力を貸して欲しい。」


「御意に。」


「ところで先生、先生にお願いして断られた

聖女と契約は考え直してくれまいか?

先生が巨像騎士になってくれれば

人馬であろうと、龍であろうと

恐れずに足らずなんだが。」


「陛下。その話は平にご勘弁を。

私にとっての聖女様は後にも先にもただ一人。

あの方亡き今、私が聖女様と契約することはありませぬ。

私の〝一の弟子〟でも 人馬ごとき問題ないでしょうな。」


「そうか。残念だ。」


話題を変えたいのだろう

剣聖が別の話を切り出した。


「そうそう陛下。例の実験、第1段階は成功と

弟子より知らせが届きました。

現在は第2段階に入っております。」


「あれか。

あれが実用可能なら帝国は無敵になるだろうが、

同時に人類すべてを敵にまわさぬか?」


「陛下、あれは火と同じですぞ。

制御できねば大きな災いになりますが、

制御できればこれほど役立つことは御座いません。」


「そ、そうか。制御できるなら

いつまでも人類が怯える必要も無いかもしれないな。

なれば 我々は人類の救世主ということか。」


「御賢察で御座います。」


剣聖ビアンキが恭しく礼をした。

この会話の後、すぐに王宮に テリア国宰相ロデオ・エスタが呼び出された。

この日より10日後 テリアとクドナルは講和条約を締結させた。


24話了

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