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21話 騎士と聖女の誓い

今回は、筆者の構成力が低いため

視点がコロコロ変わります。

注意して楽しんで下さい。

私は、急ぎ診療所に向かいました。


<カールが刺されて重体!?

カールに何があったの? 死んでしまうの?

イヤ! それはイヤ! それだけは…

それだけは絶対にダメ!

カール、カール、カール!

死なないで、死なないで、死なないで!

私が治すから、絶対治すから!

あなたが死んでしまったら 私は、

その時まで死ねない私は、

私はこの先どうやって、

どうやって生きていけばいいの?>


====================


走り出した メアルの後を追うミラン。

ミランは走りだしてすぐにメアルの異常性に気づいた。

メアルは速かった。

ミランが全力で追いつけない。

ミランは毎日 、1日も欠かさず体を鍛えていた。

だから体力も持久力も自信がある。

走りに関しても走り込みを続け、短距離も長距離も速い方だと自負があった。

その自分の息があがっている。

心臓もバクバク言っている。

なのに追いつけない。

持久走のペースではない、あれでは全力疾走だ。

すぐに、メアルの息があがって追いつくと

思っていた。

ところがいつまでも追いつかないどころか

どんどん距離が開いていく。

メアルに息が上がっている様子は見られない。

軽やかに走っているのだ。


<なんて 速さだ!>


 とにかく必死で走る酸欠状態のミランには、

メアルの体が薄っすら光っていることには

気づかなかった。


====================


診療所まで道のりがこんなに遠くに感じたのは初めてでした。

ようやく診療所についた私は、

診療所の扉を勢いよく開けました。

そのまま、周囲を無視して診療室に入ると

診療台にカールが寝かされており、

先生ががカールを診ていました。

アンもカールに呼びかけをしていました。

カールのお腹に刺さった短剣は抜かれて止血の最中です。

カールは眠ったようにピクリとも反応していませんでした。


「カール!」


「メアル! 急いで!!」


アンの言葉の意味はすぐに判りました。

止血はもちろん傷ついた内蔵を急ぎ治療しなければ

命に関わります。


「先生、変わって下さい」


有無を言わせない勢いで先生を下がらせ、

私はカールのお腹に手を当て、回復魔法を使います。


傷はみるみる塞がっていきます。


「早い!」


アンが驚いていますが構いません。

傷が塞がり、内蔵の傷も治ったはずです。

これなら、血の流しすぎということは無いででしょう。

私は回復魔法をかけ続けます。

しばらくすれば意識も回復する筈です。


しかし、カールは目を覚ましません。

カール?

どうしたの?

何故目を覚まさないの?


「カール?」


アンが私を後ろから抱きしめてきます。


「メアルともかく魔法を続けなさい!」


「え、ええ!」


アンの凛とした声に、取り乱しそうになった

私は我に返り、回復魔法を使い続けます。


====================


此処はどこだ?

俺は、確かリカレイに刺されて…

俺は、死んだのか?

メアルにもう会えない?

俺はメアルに何もしてあげれないのか?


突然声が心に響いてくる。


『彼女を泣かせるな。お前が救うのだろう?

お前にはその力がある。』


『誰だ!』


『俺だ。お前は俺であり、俺はお前だ。』


なんかストンと落ちた。

そうだ! 俺だ!

俺は俺と話ている!


『ああ、救うさ。 でもどうやって戻る?』


『じきに彼女がこちらとこの世界をつなぐ。その瞬間に戻ればいい。』


『そうか、わかった。』


『では行け。彼女が待っている。待たせるな。

これ以上苦しめるな。』


『ああ、判っている、また後でな!』


『その時は近い。気を抜くな。』


『ああ!』


その瞬間視界が光に包まれた。


====================

ミランはようやく診療所に着いた。

診療所に入り、フラフラの意識で診療室に向かう。

診療室の入り口で ミランの視界に入ったのは、

必死にカーライルに回復魔法をかけ続けるメアルの姿だった。


「カール! 起きて! お願い!」


メアルは魔法をかけ続けながら必死に呼びかけている。


「カール…」


ミランは息を切らしながらも呟くが、

その言葉は緊迫した空気に遮られて誰にも届かない。


「………」


メアルが急に無言になる。

アンはメアルに違和感を覚えた。

必死の状況だからとか、そういうのとは何かが違う、

急にメアルの雰囲気が変わった気がした。

纏っているオーラが変わったでも言えばいいのだろうか?

メアルがカーライルの手を握り、祈るように目を瞑った。

その瞬間メアルの体が強く光った。

それは強い光であるのに眩しくは無く、

暖かく、清らかであった。


「「「これは!」」」


驚くアンとミラン、先生。


光は10秒程で収まった

誰も声を発しなかった。


アンとミラン、先生も、メアルも、そしてカーライルも動かない。

室内は静まり返り。室外からの騒音が入ってくるだけだ。


静寂を破ったのはカーライルだった。

「うーん!」背のびをして上半身を起こすカーライル。


カーライルは伸びをした後、周囲を見渡し

メアルがいるのを確認すると、

「メアル。ありがとう。」

といってメアルの頭をポンポンと叩いた。


「あぁ!カール!」


カーライルの胸に飛び込むメアル。


「ああ 良かった!」

ミランはのそう呟いたあと、仰向けに倒れた。

呼吸も止まるほどに緊迫した空気から開放され、

自分が息切れしていたのを思い出したのだ。

ミランは倒れたまま

大きく深呼吸を繰り返したのだった。


====================


「うーん!」


カールの言葉を聞いた時、私の心臓は

跳ね上がりました。

目を開けると、視界には上半身を起こし、背伸びするカール。

「メアル。ありがとう。」


カールは私の名前を呼び、頭をポンポンしてくれました。


「あぁ!カール!」


私は、安堵のあまり思わずカールの胸に飛び込んでしまいました。

私は驚くカールに構うことなく

彼の胸に顔を埋めると、

ちょっとだけカールに対する怒りが湧いて来ました。


「カール、カール!あまり心配させないで!

貴方に何かあったら、私は、私は…」


いつの間にか泣いている私。


そんな私に、カールは頭を掻いた様でした。

そして、優しく抱きしめてくれました。


「ごめんな、メアル。心配かけた。」


「カール、カール…よかった…」


私は暫しカールの胸に顔を埋めていました。

そして気づきました。


あぁ 、私は、私の心はもうこの人に

囚われてしまっている。

こうしてしまったら、

カールに抱きしめられてしまったら、

この喜び知ってしまったら、

もうカール無しでは居られない。

私から離れることはもう出来ない。

私はもう貴方に全てを委ねることしか出来ない。

暫し私たちはこうしていましたが、

背後からアンの声が聴こえてきました。


「はいはい、あんた達、お熱いのはいい事だけどね、ここも忙しいんだからさぁ、そういうの そろそろ他所でやってくれないかな?」


その言葉にハッと気づき、

パッと離れる私と カール。


きっと顔が赤いだろう私たちを 悪戯っ子のような笑みを浮かべてアンが見ていました。


「お姉さんには刺激強いわー。」(棒読み)


と言いながらアンはおもむろに 診療室の入り口で倒れているミランさんの元に行き、


「ありがとうねミラン。 で 、いつまでそこで寝てるのさ? 邪魔なんだけど。」


とミランさんを助け起こしました。

その後、先生にカールを診てもらい

もう大丈夫と太鼓判を押してもらいました。

先生が一応診療所で一晩様子をみることを勧めていましたがカールは大丈夫だからと固辞し

結局、診療所を出ることになりました。

待合室では誰かが呼んできてくれたのでしょう。

リリィちゃんとカールのお母様が待機してくれていました。


アンに

「そんなにイチャつけるならもう大丈夫でしょ。

今日のところはメアルが一晩様子を見ればいいんじゃない?」


と、からかわれ、リリィちゃんもそれに賛成し、

兎も角、私とカールは二人きりになりました。


======================


「くそ! どうしてこうなった!」


リカレイは今や警備隊の小隊長ではなく

犯罪者として追われる身となっていた。

カーライルを刺した。

あの忌々しい男を刺したところまではいい。

門番に緊急手配が伝わる前に急ぎ町から出たかったが

すぐに門は閉ざされてしまっていた。

追手をうまく撒いて

今は下水道を進み町からの脱出を図っている。

下水道は臭い。鼻が歪みそうだ。

下水道は町の外に流れる川につながっている。

町の近くに流れる川は大抵下水の排水を垂れ流しにするため、町より下流の水を飲まないのは常識だ。

なんとか、下水を抜けたリカレイは

周囲に人の気配が無いことを確認すると

川上に向かって歩き出す。

少し川上に歩いたところで川に飛び込み

体についた匂いを落とした。

火は起こせない。

見つかってしまう可能性がある。

こうなった以上この国には居られない。

なんとか帝国に行かなければならない。

メアルをなんとか拐えないかとも考えたが

町に戻るのはリスクが高すぎる。

帝国に逃れたら冒険者になって再起を図ろう

濡れた衣服のまま町から離れるリカレイ。

その時である。


「見つけたわぁ!」


ゾッとした。人の気配は無いはずだった。


「誰だ!追手か!」


「あら、あなたを助けようと思って

話かけたのにヒドイわん。」


「助けるだと?」


謎の声の主は黒いコートを着た細身の背の高い男だ。

男がリカレイの居場所がわかったのは

リカレイの発する黒い波動故だが

リカレイにわかる筈はない。


「クヒ! なにがあったか知らないけど

あなたもう町には居られないんでしょ?」


リカレイはコートの男に油断無く向き合う。


「そんな事を聞いてどうする。」


「身構えないでよ。私は帝国から来たのよん。

あなた帝国に行きたいんじゃない?

私なら連れて行ってあげるわよー。」


「…」


「なかなか強情ねぇ。じゃあ手に入れたい女がいるんじゃないの? 私ならその願い叶えてあげれるかもよん。」


「!」


「図星ねん! でどうかしらん。

あなたはこのままじゃ破滅よー。ククク

まぁ 嫌なら嫌でも私は構わない

私が破滅するわけじゃないしー。」


「対価は何だ!」


「あなたの欲望を叶えるお手伝いをすること自体が

私の目的ヨン。」


「怪しいな!」


「あ、そう? じゃあお別れねえ。」


リカレイは急高まる男の殺気とも違う気味の悪い気配に

震え上がってしまった。


「いや! 待ってくれ! その話乗る! 乗るとも!」


「じゃあ契約成立ね、嬉しいわぁ。わ・た・し。」


「俺の願いを叶えてくれるんだな?」


「あなた次第だけどねん。私が出来るのは

それが出来るだけの力を与えることだけよん。」


「わかった。メアルが手にはいるならその力を俺にくれ!」


「ククク! いいわよん。」


<意識が残っていれば、そのメアルと言う女を狙って

食えるかもねー。>


「じゃあ こっちにいらっしゃい。」


コートの男に促され、後をついていくリカレイ。

二人の男が暗闇に姿を消した。


この日以来、リカレイの姿を見たものはいない。


====================


今、私はカールと二人で歩いています。

冷静になった私は、

カールを信じ、本当のことを話す事にしました。

その上で、半年だけでも一緒に居ようと思ったのです。

カールと離れることは、もう私には出来そうもありません。

せめて半年、身も心もカールにすべて捧げて生き、

カールを巻きこまない様に当日に姿を消せばいいと。

無言で歩いていた私たちでしたが

私は意を決して話しかけます。


「カール、平気? 具合は悪くない?」


「ああ もう平気さ。ありがとうメアル。

あと心配させて済まない。」


「私が今更言うのも変だけど

あなたが居なくなってしまったら私は…」


「気にしているのかメアル?」


「カール、私はあなたの申し出を…」


「言っただろ?諦めてないって。」


「……本当の事話したいの。 私の家に来てもらっていい?」


「あぁ、わかった。」


私はカールを家に招き入れました。


「なにか暖かいスープ作るから座って待っていてね。

今日は固形物は避けたほうがいいわ。」


私はカールにスープを振る舞い、

落ち着いたところで

私の悪夢の事を話し始めました。


「そんな事って…」

話を聞き終わったカールが呟きました。


「逆に18の誕生日まで私は死ねないのよ。」


私は、立ち上がりキッチン向かい

そして包丁を持って戻ります。


「カール、見ていてね。」


立ったまま手に持った包丁を左の手首に刃を押し当て、

一気に刃を滑らせました。


「何を!」


と 驚くカール。

カールは立ち上がります。

しかし私の左手首は無傷。

何回か実演してみせます。


「18の誕生日まで

私は呪いの力で守られていて自殺もできない。

そして誕生日に必ず殺されるの。」


「…」


「ねえ、カール。

そんな呪われた私と一緒にいたい?

今なら 後戻りできるわ。」


本心ではない言葉を発する私。

カールは、そんな私の言葉を無視して

私に近づくと抱きしめてきました。

私は抵抗できませんでした。


「俺が、君を守る、必ず呪いから守ってやる!」


せめてカールを巻き込みたくないという

私の中の最後の砦、決心が揺らぐのがわかりました。

その言葉に心が喜んでしまっている。

だけど、この決意だけは守らないとならない。


「ダメよ! 私はもうカールから離れないわ。

貴方に殺されるなら、貴方になら殺されても構わない。

でも、呪いに巻き込まれて貴方が死ぬのは、

それだけは……貴方の夢が……」


言葉を詰まらせる私にカールが言いました。


「メアルと一緒でないなら騎士なんて要らない!

俺が守るから!必ず守るから!」


私の決心がどんどん揺らいでいきます。


『信じて、全てを委ねるのよ』


アリーの言葉が頭の中に響いて、私は、私は…

カールの瞳に強い決意が宿っているのが判りました。


「もし、俺よりも呪いの力が上なら、

その時は、俺が一緒に死んでやる!

未来永劫、お前と一緒に何度でも死んでやる!」


その瞬間、私の決意は彼の決意に吹き飛ばされてしまいました。


「だから、俺の聖女になってくれ。メアル。」


<あぁ、カール、私はもう貴方に全てを…>


しばしの沈黙。


「はい。私は貴方の聖女になります…」


私にもう迷いはありませんでした。

最後の言葉を発した瞬間、

不安も迷いも全て大いなる何かに包まれてしまったかのように無くなっていました。

残ったのは喜びと安らぎでした。


私は自然と、かつて幼かった頃の自分が

彼の夢の為にこっそり覚えた言葉を発していました。


「聖女メアルは騎士カーライルに誓約する。

この身を盾、鎧と化して、全ての災いから御身を護らんことを。」


私の言葉にカールも応えてくれました。


「騎士カーライルは聖女メアルに誓約する。この身を剣と化して、御身に迫る全ての敵を討ち果たさんことを。」


「「二人の言葉をもって契約とし、

二人の誓いをもって聖約とする。」」


=========================


〝騎士と聖女の誓い〟

法的に、魔法的に拘束がある訳ではない。

ただの誓いの言葉だ。

しかし、騎士と聖女にとって相性が重要であり、

誓いの言葉を交わす事で気持ちを近づける事ができる。

恋仲にある騎士と聖女にとっては

婚姻と同意に捉える者もいる。


カーライルとメアルの誓いは

二人だけの〝騎士と聖女の誓い〟だった。


公式なものではない。

カーライルは騎士に叙任されていないし、

メアルも聖女に認定されていない。

見届け人もいない。

これはママゴトと同じだ。

でもしかし、この瞬間、確かに契約は成った。


「いつ覚えたんだい?」


と、カーライル。


「忘れちゃったわ。」


と恥かしそうにメアルが答える。

暫し見詰め合う二人。

そしてゆっくりと口づけを交わす。

この時カーライルのお守りである、

ネックレスになった古い指輪が淡く発光していた。

しかし、二人きりの世界に入ってしまった カーライルとメアルは気づかなかった。


21話了

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