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15話 悪意と呪いと1

カーライルとメアルの市場デートの翌朝。

メアルは診療所に出勤しようとしていた。

丁度、玄関に向かおうとしたところで玄関ドアをノックする音が聞こえた。

ドアについた小窓を開けると

見慣れない男が立っている。


「まいど。配送屋っす。お届け物でして。へへへ。」


痩せ型で貧相な中年の男が立っている。

メアルに届け物が来るのは久方ぶりだった。

故にメアルを不審がらせた。


「どなたからでしょうか?」


「名前はあっしからは言えないんですよ。

そういう依頼でして」


「申し訳ありませんけど。受け取れません。」


「そこをなんとか、受け取ってもらえないと

あっしが困るんです。」


泣きつきそうな表情を見せる配達屋。


「でも…」


メアルも困った表情を見せる。


「さるお方、としか言えやせん。贈物らしいです。

受け取っていただければ、こっちは後は知ったこっちゃないですから。」


運送屋としては、渡すまでが仕事だ。

その後どうしようと受け取った側の勝手である。

というのは分かる。

こうして押し問答していても仕方がない。

メアルは渋々受け取る事にした。

鍵を解除し、扉を開けるメアル。


「こちらです」


とメアルが手渡されたのは。手のひらに乗るくらいの

小さな箱だが、高価そうな包装がされており

プレゼントであることはわかる。


「お仕事お疲れ様です。」


メアルは無表情で小箱を受け取ると、

ドアを一旦閉め、鍵をかけた。

男が去っていく気配がする。

女の一人暮らしはこういう時、怖い。

メアルはドアに背をつけ

ふぅとため息を付き

手のひらのプレゼントに視線を落とす。


<カールからではないよね?>


〝カールはこういうことはしない人。

それに配送屋は 〝さるお方〟と言った。〟


であれば相手は身分が高いことを示している。

メアルは無表情のまま

開けることもなく、プレゼントをゴミ箱に捨てた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


配送屋の男は足早にメアルの家から立ち去った。

男の名はジェッポ。

配送屋を生業としているが、

依頼を受けて空き巣をするという裏の顔を持つ、

小悪党である。

スタに来たのは3年前。

スタにくる前、拠点にしていた街でレイプをした。

しかし犯した娘の気が強く、

泣き寝入りしなかった為、

辺境の町スタへ逃げて来た。

王国は女王が治める国である。

従って女性の権利は守られている。

でるところに出られば、レイプ犯はたちまち

捕まり、投獄10年の刑となる。

スタに来てからはそちらの方は我慢していた。

なにせ小さい町だ。

すぐに知り合いになってしまうのである。

だが、今回の依頼をうけた時、

〝メアル、あの女をを犯したい!〟をいう欲求を

抑えることができなかった。

3年間で得た知識を照らし合わせれば

メアルは1人暮らしで人付き合いが悪い。


〝脅して言いなりにできれば、暫く美味しい思いが出来る。

成人した女だ。処女でなくても当たり前だ。

女はカーライルという小僧といい仲だという噂もある。

であれば処女でなくても、

依頼者の〝御坊ちゃま〟にバレる事はないに違いない。

要は妊娠さえ、させなければいいのだ。

なんなら、堕胎を手伝ってもいい。

さらに上手く調教できれば

御坊ちゃまの女になって以降も楽しみは続けることができるかもしれない。

調教出来なくても女を脅せば良い。〟


自然と笑みがでるジェッポ。

女の顔を思い出す。

<あの女を犯れるなんて夢のようだ!

どんな声で鳴くだろう!楽しみだ、ああ楽しみだ!>


今夜は久しぶりの楽しい夜が待っている。

ジェッポは、近くの人目のない路地裏に入ると、

ポケットにしまった魔導具を取り出す。


荷物を届けた時、扉をノックする前に

この魔道具をドアの鍵穴に当てて起動させた。

暫く、魔導具を見つめる。

そろそろ女が仕事に出かける頃だ。

するとどうだ、魔導具の先端が形状を変えていく

やがて鍵の形になった。


<へへへ。これがあの女の家の鍵か。>


この魔導具は、鍵穴に当てて起動すると

以降で、その鍵穴に最初にさした鍵の形状に変化する。

鍵複製の魔導具だった。

当然、表のルートで手に入るものではないし

使い捨ての上、非常に高価なものだ。

効果時間も精々3時間と言ったところか、

今回わざわざ高価な魔導具を使った理由は

メアルの家が割と人目につく場所にあり、

堂々と鍵開けできないからだ。

今回、メアルの出勤中に用事を済まさなければならない。

夜間に忍び込むのも得策ではない。

彼女を傷つけることなく、知らない内に

土地の権利書を取ってくる必要があるのだ。


ちなみに 〝アンロック〟という解錠の魔法があるが

〝ロック〟という魔法式施錠に対してだけ有効であり

ロック時に設置したパスワードが必要になる。

強制解錠は〝ディスペル・ロック〟という魔法になる。 魔導師の範疇であり、一般人の生活には関係はないだろう。


ジェッポの手には〝メアルの家の鍵〟がある。


<へへへ。 こいつで複製を作れば、今夜はしっぽりお楽しみだ。>


その前に仕事を完遂しなければならない。

この魔導具が鍵に変わったという事は女は既に家を出たという事だ。

だが、もう少し待つ必要がある。

それからしばらく経った頃が

このあたりから人一番気が無くなるのだ。

表の商売が配送屋であるジェッポは

このスタの町の人の流れをほぼ把握している。

でなければ届け物などできない。


やがて この辺りから人気(ひとけ)が無くなった。

ジェッポは何食わぬ顔でメアルの家の前まで戻ってきた。

辺りに人の気配はない。

素早く魔導具でつくった鍵を使い家の中に入る。

一応、今はまだ辛抱だ。

万が一、日中に帰ってきてもいいように

荒らす訳にはいかない。

兎に角、権利書を素早く探さなければならない。


ふと、ゴミ箱に目がいった。

先程届けたばかりの小箱が包装も解かれずに捨てられている。


<可愛い顔して酷い女だな。 まあ、そんなことは関係ない。要があるのは身体だけだ。>


探し始めて10分

女の部屋かと思ったが違うようだった。

女の部屋は意外と殺風景だった。


案外大事にしていないのか、

ほかに隠し場所があるのか。

さらに10分。

女の両親の部屋と思われる場所の

机の引き出しの中に目的の権利書はあった。

部屋自体は綺麗に掃除されているが

机の引き出しが開けられた形跡が無い。

引き出しの中は整頓されておらず、

書類がいっぱいだったからだ。

書類自体は仕事の書類だったのだろう。

今さらゴミのようなものだが、

その書類と一緒に土地の権利書がでてきた。


<こりゃ、あの女、権利書のことなんて知らないんじゃないか? だとしたらあの坊ちゃんの計画通りに運ぶかもしれん。>


案外ロヨイ・チューハに絡め取られる可能性が高そうと考え、小心者のジェッポは一旦怖気付くが

直ぐに考え直す。


<あれだけの女、諦めるなんて勿体ない!

しっかり釘をさしときゃ気の弱そうなひ弱な女だ。

大丈夫だろう。それに上手く立ち回れば

これからもだって…へへへ。>


何事もなかったかの様にメアルの家から出て、

施錠する。

()()()()ジェッポの犯行を目撃するものは無かった。


ジェッポの計画はこうだ。

急ぎ、自宅に戻り、この鍵の型取りをした後に、

権利書と、魔導具を依頼者に届ける。

あまり時間をかけると怪しまれるから

型取りだけしておく。

鍵は後でゆっくり自身で作れば良い。

鍵屋に頼むのはチューハ家にバレると命が危ないのでNG。

裏の仕事柄 鍵の複製なんて手持ちの材料だけでできる。

バレることは無い。


男は完璧な計画に下品な笑いが止まらなかった。


<久しぶりに女が抱ける。しかも極上の玉だ 。>


男は今夜が楽しみで仕方がなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


診療所にて


アンは忙しかった。

メアルをからかうどころではない。

朝イチから外傷をこしらえた若い男どもが診療所内に溢れかえっている。

ほぼほぼメアル目当てだろう。


<昨日の一件が広まったにしろ早すぎだろ。>


横のつながりがあるのだろうと思いつつ

アンは人員配置を再編する。

外傷治療班にメアルを含め4人の医助士を当てることにした。


<メアルに当たるのは運次第よ。そして私も加わろう。

頑張ってね 男ども。(ニヤリ)>


獰猛な猛禽類を思わせる目で男どもを見るアン。

メアル目当ての男からすると

当たり4分の1、外れ 2分の1、地獄4分の1といったところだろうか?


だが事実はもっと酷かった。

アンとメアルがセットだったのだ


アン+メアルと他1名づつの 3チームでの処置だった。

これでは男どもは何も言えない。

アンはメアルの横で患者の状態を聞くだけだ。


患者が入るなり 、


「こんにちは。 あなたは何処が悪いのかしら?」


とアンが先制パンチをかます。

ギョッとした男どもは、

素直に怪我の場所を言う以外の発言を封じられる。

その内容に合わせメアルは無言で回復する魔法をかけていく。

治療が終わるなり、


「では、お大事に。次の方どうぞ!」


と追い出してしまうのだ。

1人3分もかかっていないだろう。

しかしそれでも患者の数が多く、お昼ご飯を食べる余裕が無かった。


「アン。なんかごめんなさい。」


メアルはお昼を食べれなかったアンに謝る。


「いいって、仕事だからね。

しかしいつにも増して大人気ね。」


「今日はたしかに多いわね。どうしてかしら?」


メアルの天然発言に


<昨日のカールとのイチャラブ♡デートのせいじゃ!>


とは流石に言えず、


「どうしてかしらね。昨日何かあったんじゃない?」


と振ってみるアン。

メアルは首を傾げ、


「カールに買出しを手伝って貰った位で

別段いつも通りだと思うけど。」


<それが既にいつも通りじゃ無いんじゃー!!>


とはやはりアンは言わない。


「へぇ。それってデートなんじゃない?」


「そうかしら?」

嬉しそうに答えるメアル。


「男どもにはそう映ったんじゃないかな?」


「アンもそう思う?」


嬉しそうなメアルに


「腕組んでいたりしたら一般的にはそう見えるかもね。」


アンは一気に仕掛けた。


「そう、だよね。」


メアルのトーンが下がる。

そして寂しげな笑みを浮かべた。


<ん? これはヤバイやつだな。>


「 ま、数日の辛抱じゃない?」


「そうね。」


<だめだ。これ以上はやめた方が無難だな。

狙うならカールか。>


アンはメアルへの聞き込みは諦めた。

反応を楽しむならカールの方が良い反応をしそうだとも考える。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夕方の診療所にて


カーライルは診療所に顔を出した。

これより夜の見回りがあるが、まだ少し時間ある。

その時間でメアルの様子を見に来たのだった。

診療所はまだやっていたが

流石に患者は数名しか居ない。

アンは診療所に入ってきたカーライルを見るなり、


「やあ 色男じゃない。あんたも怪我でもしたかい?」


と切り出す。


「こんばんはアンの姐御。俺は怪我じゃないんだ。

ん?、あんたもって?」


案の定食いついた。


「言葉の通りよ。今日は若い男に限って怪我が多くてね。 指切っただの、擦りむいただのって。

見せてやりたかったよ。」


「へえ。忙しかったんだな。」


その言葉にアンが切れた。


「ちょっとカール。こっちおいで。」


「ん? 俺はメアルの様子を見にきただけなんだけど?」


「いいから おいで。」


有無を言わせず休憩室にカーライルを連れ込むアン。

そして、カーライルはなぜか正座をさせられていた。


「これは一体?」


仁王立ちのアン。


「なぜ、本日こんなにも患者が多かったのか!

それは、あんたとメアルが市場でデートしたからです!」


「何故それを!」


「何故も何も目撃者が0だとでも?あんなに堂々といちゃついてて?」


「ひょっとしてアンの姐御も見てた?」


「イエス! 腕組んでメアルの家に入るところまでバッチリとね。」


「ぶは!まじか!」


<リリィが知ってたのは、

アンの姐御が情報源だったのか。>


「マジです。 市場でのデートでのイチャイチャは

皆見てたから、男どもの危機感を募らせた結果が今日の怪我人大発生に繋がった訳! 判る?」


「そ、そうか。」


「毎日これじゃ私もメアルも体が持たないんだけど?」


「そ、そうだな。」


「あんた、ミランに休み譲ってもらったんでしょ?

人生の大事だからって。

しっかり決めてきたんででしょうね?

こっちはこの騒動に幕引きしたいんだけど。

診療所の平和の為にね。」


「グフ! ミランから聞いたのか。」


「ったり前じゃない! で、どうなの?」


「いやあ、ぼちぼちかな。」


その返事にため息をつくアン。


「さっさとくっつきないよ。」


「これがなかなか。なぁアンの姐御。」


「なにさ?」


「メアルに何か相談受けてないか?」


「ん? 言いたい事はわかるよ。

残念ながら受けては無いけどね。」


「そうか。」


「心を開かせるのはあんたの役目でしょ。

しっかりなさい。」


「そうだな。ありがとう。 それでメアルは?」


「メアルはもう帰ったよ。今頃はラーファルの神殿じゃないかな。」


「ん? 何故 戦女神の神殿に?」


「どアホ! あんたが騎士になって成功する様、武運長久を祈る以外に理由なんてあるか!!」


「え!」


「嘘だと思うなら行って来い!」


「わかった 有難う。」


足がしびれて、ぎこちなく出て行くカールを見ながら


「やれやれ世話が焼けるね。」


とアンは呟いた。



15話了

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