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13話 それぞれの夜

メアルの家を出た俺は、現在自宅に戻る途中だが

はっきり言って落ち着かなかった。

〝メアルは俺にぞっこん?〟

昼間、おばちゃんに言われた言葉を思い出す。

今まで俺は自分の片思いだと思っていたが、

両思いなら、告白すれば直ぐに結ばれるだろう。

だけど……

〝このままではダメだ〟

と俺の直感は告げている。

彼女には何か秘密がある。

ずっと感じている彼女への違和感。

近くにいるのに遠い感じ。


何故だろう?

何を秘密にしているのだろう?

言えないこと?

誰にも言えないことに悩んでいる?

俺にも言えない?


今日のメアルの様子も今になって冷静に考えてみたら、市場を出たあたりから雰囲気が変わり、

思いつめた感がどこかあった、と思う。

急ぎ戻り、メアルに問いたい気持ちになったが、

でも 何と聞く?

秘密にしているなら正直に答えてくれないだろう。

などと考えている内に自宅に着いてしまった。


玄関で 妹に会ったが

俺の表情を見たからか、なにも話掛けては来なかった。

無言で食事を済まし、自室に戻ると

すっかり陽も落ちて月夜となっていた。

ベッドに腰をかけて窓越しの月を見上げた。

メアルも月を見ているだろうか?

しばし月を見つめていた。


………月はまるでメアルの様だ。

強く眩しい光ではない。優しく儚げに光り、とても美しい。


はぁ、とため息が漏れた時、ノックされた。


「開いてるぞ。」


「兄さん入るね、って 真っ暗じゃない!」


入って来た妹が驚く。


「いい月夜だからな。 眺めていたんだ。」


と明かりを灯しながら誤魔化す。


「兄さんにそんな風情ないでしょ。」


「俺をどういう風にみてるんだ?ひどい妹だ!」


とトボける俺。 しかし、


「メアル(ねえ)と何かあったの?」


リリィはいきなり核心に触れて来た。


「いや、別になにも。何も無いさ。 ただ一緒に買い物しただけだよ。」


「腕組んでたって聞いたけど?」


「ごほっ ごほっ!!」


思わず咳き込んだ。

一呼吸して落ち着いた。


「誰に聞いたんだ?」

<誰にも見られてないと思ったけど?>


「ふふーん。 ひ・み・つ。」


アンの魔の手はリリィにも伸びていたのだった。


「うーん? 本当に何があったの?

聞いた話と兄さんの表情が一致しないんだけど?

メアル(ねえ)の家で失敗しちゃった?」


爆弾を落とす(リリィ)


「ブハッ!!!」


吹き出した。


「なぜそれを!!!」


「だから、 ひ・み・つ。

ありゃー 本当だったんだねぇ。

で、 何があったの?」


「黙秘だ!」


「ここはひとつ、可愛い妹に話してみなさい!

力になれるかもよ?」


「うーん? 本当か?」


「乙女心は、乙女に聞けってね。」


「誰が乙女なんだ?」


「そんなこと言うと 言いふらすよ?」


「ごめんなさい。力になって下さい。」


「よろしい。 では話しなさい。」


カーライルは必死にこの事実をメアルの名誉の為に隠そうした。

が、アンに知られている以上すぐに広がるだろう。

アンはメアル為にメアルの求婚騒動に幕引きを図ろうとしているからだ。


「なぁ リリィからみて メアルはどう思っていると思う?」


「間違いなく、兄さんにベタ惚れなんだけどね。

でも、そうね、なにかそれだけでは済まない

何かある感じはするよ。」


「そうだよな。 そうなんだよな。その何かが

気になって仕方がないんだよ。」


「 兄さん、それでメアル(ねえ)の家で何もしなかったんでしょ?

その何かが何なのかなんて関係ないじゃない!」


「え!?」


「男なら、何も聞かずに包み込むのよ!」


「んな 無茶な!」


「兄さん!女性が一人の男性を家に招くことの意味くらいわかるでしょ?

きっと待ってたんだよ!

メアル(ねえ)失ってもいいの? 他の人に取られちゃうよ?」


「それは……」


「はぁ、 いい?兄さん ここが勝負どころなの!

砕けてくるくらいの気概をみせなさいって!」


「砕けるって、お前……。 でも まぁ ありがとうな。 そうだな、悩むなんて俺らしくなかった。メアルを包み込めるのは俺だけだ!」


「それでこそ兄さんだわ。」


(リリィ)に励まされた俺は、

本当は今日はメアルを元気づける為の1日のはずだった事を思い出した。

あれ?

そういえばコイツ(リリィ)の言葉に乗せられてデートと意識したんじゃないか?


「なぁ リリィよ。 どうして俺とメアルをくっつけたがるんだ?」


その言葉にリリィは待ってましたとばかりに

ニヤーっと笑う。


「そりゃもちろん、恋バナ大好きだからよ!

まぁ 後、昔から兄さんメアル(ねえ)に判りやすくゾッコンだし。 兄さんがメアル(ねえ)とくっついてくれたら私も安心だし。」


<コイツ! 俺の秘めたる想いに気づいてたのか!>


「そんなに、俺って判りやすかったか?」


(リリィ)は呆れた表情を浮かべて


「えー? まさか 秘めたる想いだったとか言わないでしょうね?」


質問に質問で返すとは失礼だなと

思いつつ、

自分の顔が赤くなっていくのを自覚してした。


<そんなに判りやすいのか?俺>


「別に秘めては無いさ。 でも口にも出してこなかったからな。」


誤魔化そうとしてみるも


「男は口じゃ無くて、行動で示せ!ダヨネー。」


揶揄うようにいいながら

人の悪い笑みを浮かべている。


「恋バナを楽しむ小悪魔め。」


「やだなー。むしろ私ってキューピッドでしょ。」


「そうか?」


訝しむ表情をワザとつくった。


「昔から兄さんを見てるのよ?

丸わかりだよ。あまりに一途で応援したくなるわ。」


そう言ったリリィは一瞬だけ表情を硬くしたが

すぐに笑顔に戻った。

どうしたんだ?


「まぁ、では応援頼むぞ、妹よ。」


「はいはい、わかりましたよ、兄さん。」


妹は 〝じゃ、お休みー〟とばかりに手を振って

部屋を出て行った。

兄とは言え、男の部屋に長くいるもんじゃ無い。

再び、1人になった俺は、ため息をつきながら

どうにかメアルの悩みを解消してやれないものかと

考えるのだった。



=======================


リリィは自室に戻ってきた。

先ほどまで兄の部屋で兄を励ましてきたばかりだ。

自身の結婚を控え、

兄にもそろそろパートナーがついて欲しいと思っていた。


「焦ったわ。兄さんが気づかなくてよかった。」


独り言を呟く。

そうリリィは兄をずっと見てきた。

顔が赤くなるのを見られまいと、失言の後

すぐに部屋をでてきたのだった。

本当はもう少し話をしていたかったのだ。


<未練、なのかなぁ。>


〝もし兄がメアルと結ばれた時

果たして心から祝福できるだろうか?

もしかしたら、自身の未練を断ち切る為に

2人をくっつけたいのでは無いか?〟


リリィはそう考え、ため息をつく。

リリィは幼少期、単純にカーライルを兄として好きだった。

虐められているメアルをかばう兄を誇らしくカッコよく思っていた。

カーライルががメアルを庇うので

妹のリリィもイジメの対象になっていたが

やはり庇ってくれたのはカーライルだった。

だから、幼少期は兄をとってしまうメアルに嫉妬をしていた。

町を苦死病が襲って、メアルの両親や、カーライルとリリィの父も亡くなった。

それから、カーライルもメアルも生活の為に働き出した。

以降、カーライルはリリイと2人の母親を養っきた。


リリイは思う。


〝兄には深く感謝という言葉では足りないくらいに

感謝している。

私も働いて家計を助けるつもりだったけど

それを兄は許さなかった。

寧ろ、好きな事をさせてくれた。

実は私は勉強が好きだった。

流石に家庭教師を雇う余裕などなかったけど、

兄は勉強の為の本を買ってくれた。

兄は自分のことは後回しにして私と母の事を優先してくれた。

だから、私は服や身だしなみのことで

嫌な思いをした事は無い。

年頃の町娘の普通の格好をさせて貰えた。

兄は隊服以外に、ろくな服も無いというのに。

兄は隊服さえあれば十分だという。


兄には夢がある事を知っている。

でも兄は私と母を養う事を優先してくれた。

兄は父との約束だからといって笑ってくれていた。

だから私は勉強して稼げる仕事に就き、

兄を解放してあげたかった。

兄を自身の夢に向かって進める様にしてあげたかった。

そして、私の勉強を見てくれたのは、メアル(ねえ)だった。

仕事が忙しいはずなのに、

休みの日に解らない所を一緒に考えてくれた。

メアル(ねえ)は天才だった。

自身も読み書きくらいしか教わってないのに

本の内容を一度読んで理解し、

わかりやすく教えてくれた。

私はお陰で算術もできるようになったし、

色々な知識も得ることができた。

この頃から嫉妬の対象だった人が親しい人に変わった。

メアル(ねえ)と呼び出したのもこの頃で、

本当に姉になってくたら良いのにとも思っていた。

メアル(ねえ)は色々と助けてくれた。

兄の稼ぎだけでは家計が苦しい時、

大目に買ったからと、

食材を兄に内緒でこっそり分けてくれたり、

兄のプライドを傷つけない様に

裏で我が家を助けてくれていたのだ。


兄が成人した時、兄は母に呼び出され

母から真実の話を聞かされた。

私もこっそり壁越しに聞いていた。

そこで兄と私が血の繋がりがない事を知った。

苦しかった。

いままで兄だった人は実は血の繋がりが無かった。

私の中でどんどん兄は、兄ではなく異性になっていった。

でも兄の心はメアル(ねえ)に向かっているのを知っている。

メアル(ねえ)も兄が好きなのを知っていた。

兄の話になると食いつきが全然違うから。

私は、血の繋がらない兄を、男として見ている兄を

それでも兄としてしか接することしか出来ない。

兄も私を、血の繋がりがない妹の私を、

異性では無く、今まで通りに妹として接してくれているのだから。

私はメアル(ねえ)には敵わない。

兄にふさわしいのはメアル(ねえ)しかいない。

本心でそう思うし、自分の心に言い聞かせてもいた。


転機は、私の成人前に訪れた。

私はアン(ねえ)の友人の結婚式に参加していた。

町の有力者の息子さんとの結婚式で

盛大に催され、あまり縁のない私も呼ばれたのだった。

ちなみは兄はこの日は警護隊の当番だった。

そこで私は〝彼〟と知り合った。

少し話してすぐに気が合うと思った。

その日以降、よく待ち合わせて会うようになった。

兄への想いもあったが、彼に惹かれ出してる自分がいることに驚きがあった。

自分が気の多い女とは思いたくなかったのだけど。

しかし、彼への想いが大きくなっていくのを

望んでいる自分も自覚していた。

彼はこの町の有力者の商人の跡取りだった。

だから、算術ができて色々な知識を持つ私に興味を持ってくれたのだと思う。

デートを重ねるうちに彼が興味から、

恋愛感情に発展していくのがわかったし、

そのことは私も嬉しかった。

私は彼のことが好きなのだと思う。

そして私が成人したその日に彼はプロポーズしてくれた。

私は即座に了承した。

今にして思えば、兄の夢の為に彼を好きになったのでは無いかとも思う。

ただ兄への想いは恋愛を超えたところに行ってしまったとも思えた。

彼と人生を歩んで行けることに幸せを感じている。

だからこれは自己犠牲ではない。

でもせっかく兄を譲ったのだ、

食事や身の回りのことには無頓着な兄と

メアル(ねぇ)を私の結婚までに

なんとしてもくっつけ、兄の面倒を見えもらわないと。

でないと安心してお嫁にいけない。〟


<やっぱ未練だね。>


クスリと笑うリリィ。


〝兄への想いだけは、誰にも知られる訳には行かない。〟


とリリィは改めて決意する。

しかしその想いを母は知っていた。

知っていて優しく見守っているのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


コンコン!


男がドアをノックしている。

スタの高級住宅が立ち並ぶエリアの中でも

一際豪華な屋敷の裏口のドアをノックするこの男は

運送屋だ。

スタの町の中の物品の配達を生業ととする男が

夜にも関わらずこの屋敷に訪れたのは、

配達の仕事の依頼があったからだ。

しかも時間指定もされた。

これが〝裏の仕事〟の依頼である事を男は知っている。

ここは裏の仕事のお得意様だ。

扉が開き、中に招かれ、個室に通される。

テーブルと椅子以外に何もないそっけない部屋だ。

中には、老齢の執事がいた。


「まいど。」


いつもの挨拶をする男。


「席にどうぞ。」


男が席につくとテーブルの上に置いてある二つの物が

目に入った。


男が黙っていると

執事は口を開いた。


「早速本題に入らさせて頂く。」


「今回は、どこの何を御所望で?」


「判っていると思いますが他言は無用ですぞ。」


「判ってますって。哀れな末路は辿りたくはないっすよ。」


執事は黙って頷く。


「場所はメアルという小娘の家で、物は土地の権利書、報酬はいつも通りです。」


しばし男は考え込み、ニヤリと笑う。

ここのお坊ちゃんがメアルにご執心なのを

男は知っている。

何をしようとしているかも分かった。


「なるほど、町一番の美女の家に入れるなんて

役得っすね。」


苦い表情をしながら執事は釘を刺す。


「念をおしますが娘には手出し無用ですよ。」


「判ってます。判ってます。」


慌てる男。


「いつも通りに届けものをして下さい。」


そこで テーブルの上の2つのものを渡される。

一つは〝仕事〟に必要な魔道具だ。

もう一つは綺麗な包装をされている。

届け物だろう。


「これの中身はヤバイものじゃないっすよね?」


「安心なさい。どこにでも売っているただの贈り物です。」


あとで足がつくようなものではないかと心配する

男を執事が宥める。


「では明日、ご依頼の物をお届けにあがりやしょう。


「お願いしますよ。」


2人の商談は終わった。

屋敷を後にする男。

これをネタにゆするなどということは男は考えない。

命が惜しいから。

しかしだ、町一番の美女の家の鍵が手に入るのだ。

すこし役得があっても良いだろう。

相手は女だ。脅せば誰かに話すことは無い。

男は振り返り屋敷を見た。

男は舌なめずりしながら、


<お坊ちゃん、味見は先にさせてもらいやすよ。>


と下品な笑いを浮かべた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


コンコン!

部屋をノックする音がする


部屋の主人は何も言わない。

黙ってワイングラスを片手に外の景色を眺めている。


扉が開き執事が中に入ってくる。


「失礼致します。」


男は振り向きもせずに一言。


「どうだ?」


その質問に執事もまた簡潔に答えた。


「お望みの通りに致しました。」


「そうか、下がって良い。」


一礼をし、執事は部屋を後にした。


男はグラスのワインを飲み干す。


「可哀想なメアル。これからは私が面倒を見てやろう。」


この男は、朝の市場でカーライルとメアルのデートを目の当たりにした尊大な態度のイケメンだ。


男の名は ロヨイ・チューハ。

この町の有力者の貴族の息子だ。

チューハは歪で下品な笑いを浮かべた。


========================


カールを送り出した後、

私は掃除、洗濯を手早く済ましました。

時間的に部屋干しになってしまいましたが、

消毒の魔法も使える私は部屋干しの匂いを消すことが出来るので問題ありません。

消毒の魔法は治療よりも生活魔法としての

衛生面で重宝していて、職場でも治療器具の消毒に使っています。

その後、お昼の残りを使い簡単な食事と

明日のお弁当の下ごしらえをして

明日に備えて、体、髪を洗い、そして

まだ眠くなかったので、

ベットに腰をかけました。


窓に越しに月を見上げながら

カールも見ているかしら?と考えてしまう。

そして、大胆なことをしてしまった事を

思い出す。

<わたしったら!>

思わず ベットの上で転げ回ってしまいました。


やがて転がるのをやめた私は、

起き上がり、改めて月を見上げました。

これからの事を考えないと。

本当は今日、一夜だけカールと共に過ごして、

そしてその思い出を胸に 彼の前から姿を消すつもりでした。

ひどく身勝手なのは承知していました。

私は、私が死んだ後、

来世でも悪夢に苦しむだろう毎日のなかで、

幸せだった人生があった。そんな夢を見れたなら

きっと頑張れると思ったのです。

そんなたった1日の夢の為に、彼を利用しようとしました。

私は身勝手な女です。

彼は何もせずに帰っていきました。

カールは私の様子に何がしらの違和感を持っているのかもしれません。


改めて今後の事を考えます。

彼の前から姿を消すのは現実的では無いと考え直しました。

彼は探すでしょうし、私を探す事で

騎士採用試験を後回しにしてしまうかもしれません。

それに、どこに行けばいいの?

わたしには行く宛もありませんでした。

馬車を使えば直ぐにバレてしまうでしょう。

歩きで行くのは女の私には厳しいものがあります。

なにより、一度でも彼に幸せを与えられてしまったら、

もう離れられなくなると思いました。

たった一度 腕を組んで歩いただけなのに

嬉しかった。楽しかった。手を離したくなかったから。

だから、距離を保つしか私には出来そうもありません。

私は彼と王都には行けない。

ここであなたの成功を祈りますと断るしか無いでしょう。

それが、私に起こる不幸から彼を遠ざける

きっと一番いい方法。


私はいつもの様に

ベットの脇に膝をつき、両手を合わせて

月に向かってカールの成功を祈り始めます。

この祈りを、17歳の誕生日からするようになりました。

不思議なことにその日から祈りたい気持ちになったのです。

これまでは、(今でも続けていますが) カールの成功を戦を司る女神 ラーファルの神殿で祈っていました。

〝カールを守ってください〟と。


今私が祈っているのは同じくカールの成功についてですが、ラーファルにではありません。

私は私を包んでくれる〝何か〟にお祈りを捧げているのです。

半年前までは、寝るのが怖くてなりませんでした。

しかし、17才の誕生日を迎えたあの日から、

寝る前に祈りを捧げる様になってからは

眠ることが怖く無くなったのです。

相変わらず悪夢は見ます。

でも〝何か〟に祈りを捧げると

優しく暖かく〝何か〟が

私を包み込んでくれてる感じがするのです。

悪夢の中でいつものように殺される瞬間も、

殺されたあと響く、あの呪いの声も

後ろから抱きしめられている感じがして

怖く無くなりました。

恐怖から私を守ってくれる〝何か〟

とても懐かしい気がします。

私は私を守ってくれる

大いなる〝何か〟に祈るのです。

カールの成功を。

カールの事も守ってあげて欲しいのです。

私は呪いにより強制的に眠くなるまで祈り続けます。

祈ることは私への救いでもあるのだから。



カールが成功して立派な騎士になれます様に。


月がカールを優しく包んでくれます様に。


お日様が、カールの行く先を照らしてくれますように。


カールが素敵な女性と巡り会えます様に。


カールが愛する人と幸せな家庭を築けます様に。


カールが満ち足りた人生を送れます様に。


カール が成功したら私の事を忘れます様に。

忘れて幸せになります様に……。


========================

自身が涙を流していることに

一心に祈るメアルは気付かない。

メアルは強制的に眠くなるまで今日も祈りを捧げる。


13話了

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