表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自販機暮らしのサンピエール(3世)  作者: ブリ大根
ハムハム公国編〜波乱
9/42

ハムゥ〜! その一!

続きものです!

ピエトロ小学校マラカス組のアイドルといえば〜?そう僕サンピエール3世!御歳8才の女の子!今日は夏休み!だから自由研究しなきゃなの!


テーマは決まってる!マウスでの動物実験!だからまずネズミを捕まえなきゃなんだけど1匹も捕まえてないの。


今日こそは!と思って町中至る所にネズミ捕り機を設置したんだけど収穫はなし。代わりにUMAがいっぱいだったけどネズミじゃないとできない実験だったから解放してあげた!


あ!ドブネズミ発見!絶対捕まえてやるんだから!


ジリジリと肌を焼く熱射、汗をだらりと流したままに、サンピエールは目前の獲物に気取られぬよう息を殺す。

暢気にウロチョロと動くどぶネズミの毛皮は見るからに汚れておりまさに不衛生そのものだ。尻尾を小さく震わせて残飯に食い付いている。


今までに何度となくネズミを逃したからこそ、慎重に背後からドブネズミに近づくサンピエール。そして手にした虫取り網を振り上げ目にもつかせぬ速さで網の中へと囲い込んだ!


が、此のドブネズミ尋常のネズミではない。なんと素早く網に齧り付きダッシュで逃げ出す!


追いかけるサンピエール3世!逃げるドブネズミ!


ドブネズミがいたのは薄暗い路地裏の脇道もない行き止まりだ。薄暗い割に壁や塀は真新しく、ネズミが通れるような穴はない。


ドブネズミゲットだぜ!と捕らぬ狸の皮算用をはじめるサンピエールだが、ドブネズミはまだ諦めていない。


素早く周囲をそのつぶらな瞳で見回して活路を見出そうとしていた。一見身動きもしないその様はしおらしくも映り、勝利を確信したサンピエールの網が再びドブネズミに向かい振り下ろされる!


しかし油断ゆえに狙いは甘くそれを見逃すドブネズミではなかった。振り下ろされた網をひらりと躱し、網の枠から持ち手へと一気に駆け上がっていく。サンピエールがネズミを登られているのと反対の手で捕らえようとするも、ネズミの俊敏さに追いつけず、サンピエールの手はガブリと噛み付かれた。


痛みに驚き噛み付かれた手を大きく振り回すサンピエール。その動きを利用して宙を優雅に泳いだドブネズミは危うげなく着地し、狭い路地裏を背にどこぞへ走った。


一人路地裏に取り残されたサンピエールはたかがネズミにコケにされ、怒りを燃え上がらせる。


「またネズミ逃しちゃった〜、ハァァ!」


まさにしょげ返る童のごとくかのようだか、しかしよくよく見ればその目にはネズミへの憎悪が燃え盛る炎のように揺れていたのがわかっただろう。


このような絶技を為すドブネズミだ。無論尋常のドブネズミではないのだが、サンピエールは知らない。


ドブネズミに対して打つ手なしと思わられるサンピエールだが、実は最後の切り札があった。


そう、サンピエールには密かに交誼を交わした産業スパイの豚がいるのだ。


「お邪魔しま〜す!」


「お前サンピエールか?!何の用だ!お前が欲しがるような情報はなんもねぇぞ。さっさと帰りな」


「これ何かわかる?」


サンピエールの手にはカニカマ、ネズミ捕り機に設置するためと用意しあまったカニカマだ。


「そ、その程度の餌で俺がつられると!」


健康志向の豚にとって抗いがたい誘惑!しかしサンピエールのその目を見れば、己が極地に追い込まれるのは自明。精神力を振り絞って拒絶する豚であったが…


電話をとり出すサンピエール。


「あ!もしもし屠殺所の人ですか!実は目の前に…」


余ったカニカマで豚と交渉し、サンピエールはハムハム公国への道を歩む。ハムハム公国とは人間以外の動物達には周知であるハムスターの国だ。疎まれながら人間の生活圏で息を潜める暮らしを倦厭し奮起したあるネズミが興し、当初は小さな規模であったが急成長をなした新発展国。種として短命であるハムがそれほどに発展したことを疑問視するものもいるが、ハムハム公国はハムスター以外の往来を固く拒んでいるため、真実を知る者はいなかった。


「サンピエール、ハムハム公国では非ハムと見做されれば即ハム吊りの刑に処されるからな、語尾を気をつけろよ」


「なぁに〜?ハムとでもつければいいハムか〜?」


「初めてにしては上出来だ。いいか、監視の目はそこらじゅうにある、そのことを忘れるな」


注意を促す豚であったが、サンピエールは上の空で生返事とそれにしては完璧といっていい擬態。しかしハムハム公国の監視体制は強固。豚はこの後を憂いながらも遂に第一の難関たるハムハム公国関所前へたどり着いた!

次回予告!

ハムハム公国関所前で待ち受ける数々の問題!

ネズミは〜チュゥ!

豚は〜ブヒィ!

人は〜ヒュマ!

そして〜ハムは!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ