ハブゥ〜! その二十三!
あらすじ!
ドアマット偽装加工!
ハムの着ぐるみ(と推定される形状)!
()内は以降の記述では省略する!
一度はアリークイッに潰されてハム山の一角を担ったクマハチだが、脅威の回復力をみせすぐさま立ち上がる。
「止めきれなかった……オレが、力負けした……」
低く唸りながら元の手より指の数が減ったそれをみるクマハチ。赤く腫れた手の中で掴み込んだ怒りを圧し潰す様は、クマハチを知るものにしてみればあまりに静かで痛々しくうつることだろう。
「お兄貴様、仕方ありませんわ。あなたはまだ変身による急激な体の変化に慣れておられない」
ハム山に聞こえないように小さく囁くリスゴロウ。アリークイッの聞いたクマハチの悲鳴は慣れない体で戦闘を行ったつけだった。
「慰めはいらねぇ。……リスゴロウ、お前アリークイッさんを止められるか」
クマハチもまた低く小さくリスゴロウに確認する。問いかけではない、クマハチは断定していた。今の自分には無理だと認めたある種の敗北宣言に、リスゴロウは淡々と肯定した。
リスゴロウの残したそよ風が、クマハチのさらさらキューティクルファーをなでる。
クマハチはアリークイッが爆走していった方向に背を向け、ハム山を一度崩してまた己の肩に山を築きだす。
リスゴロウが正直に今の心情を述べたとすれば、面倒、この一言につきるだろう。
だが敗北の味を苦く噛みしめるクマハチにそのようなことが言えるわけもなく、リスゴロウはアリークイッを追う。
今なお加速し続けるアリークイッのスピードはリスゴロウの最高速度に迫るほど。しかもアリークイッには鼻の壁がある、展開中一切の攻撃ができない代わりに鉄壁とも言える防御力をほこるのが鼻の壁だったが、あれは鼻に意識神経を一点集中するため、他の行動が制限されるという原理だ。
しかし今のアリークイッは相手へ向かって転がるだけで攻撃になる、攻撃と防御の両立が可能となったのだ。アリークイッの鼻の壁により負けてしまったリスゴロウには、一見すると勝ちの目はないように見えるだろうが、リスゴロウには方策があった。
速さを武器とするリスゴロウがクマハチのように力比べで挑んだとしても負けは見えている。
その速ささえも追い抜かれようとしているリスゴロウが一体どうやってアリークイッに勝つというのか。
非常に簡単な話だ。まきびしをまけばいい。ご丁寧にアリークイッはご自慢の鼻が届かない無防備な部分になんの防護もしていないのだ。
そこに集中してまきびしをまけばアリークイッの進む道は己の血で赤く濡れそぼり、自動的にスリップを起こし壁に激突死。または出血多量で死ぬ。
どちらにしろ停止はする。
完璧な作戦に思わず笑みを浮かべるリスゴロウ。とはいえ今のアリークイッのスピードでは先回りして進行方向へまくのも難しい。
そのため鼻の届かない範囲を見極め胴体部分に回転逆方向連続キックをお見舞いする。
この回転逆方向連続キックの情景は、タイヤの上でジャンプしながらコサックダンスをするシマリスを思い浮かべていただければ分かりやすいだろう。
想定よりも重い反動に減速が思うようにいかないリスゴロウだが、アリークイッが激突死する予定のカーブまでの距離は縮まっていく。にわかに焦りだすリスゴロウは計算していたよりも早くまきびしをばらまくことにした。
まきびしにも種類がある、高価なものほど所持数が少なく高性能高機能だ。アリークイッに貴重なものを使うのも抵抗があり廉価版のものを尻尾の収納から取り出そうとするリスゴロウ。
一度大きく跳ね、空中でフサフサの尻尾の中を探るリスゴロウ。それを見計らったのか、減速させられたうさを晴らすように鼻に力を込めて加速するアリークイッ。
このとき起こった少しの風がアリークイッの明暗を分けた。
まきびしを探していた途中で気を抜いていたリスゴロウの足先が、意図したものより角度が2〜3度ずれた。
空中での身体制御は地上でのものとは違いほんの少しの加減で出鱈目な方向に進んでしまう、非常に緻密で繊細なもの。リスゴロウの回転逆方向連続キックは正確に計算を行える頭とその通りに動く体が不可欠な高難易度の減速なのだ。
すぐさま立て直しを図ったリスゴロウだったが時すでに遅し。リスゴロウの体はアリークイッの後ろへと修正不可能なまでに傾いていた。とっさに体をひねり、掴んだまきびし入りの特製竹筒の封を開けて放り投げる。
苦し紛れの行動ではあったが、竹筒はまきびしをアリークイッの前方、しかも鼻が届かない胴体から下が通る辺りにまいた。
達成感に包まれたリスゴロウだが、地に落ちていく竹筒にふと違和感を覚える。
廉価版まきびし、名称は確か「今日から君もニンニンドロン!虎柄竹筒まきびし入り!」
筆箱にも使えるおしゃれアイテムでデザインに心惹かれて買ったはいいが、まきびしの棘で竹筒の中が削れてしまって筆箱として使うのを諦め、その後一度も尻尾の外に出たことのない箱入り竹筒のはず。
優れた動体視力をもつリスゴロウは、膨らんでいく違和感から目を背けるように竹筒を注視する。
そこで竹筒がきらりと光る。
同時にリスゴロウの脳裏に稲光がきらめく。
思い出した、私が投げたあの竹筒は、少数限定販売「MAKIBISHI〜パラライズ〜」しかもシリアルナンバー560含む前後づめ!
麻痺薬が塗られたMAKIBISHIで竹筒の方にも使いやすいようにまき散らし補助が付いている超高性能MAKIBISHI SET!
一度しか使えないので観賞用としてとっておいたものを今!ここで!アリークイッのために!使う羽目になるとは!
心の内で嘆き絶叫するリスゴロウの絶望をよそに、麻痺薬がたっぷりと塗り込まれた高級MAKIBISHI道を直線的に進むアリークイッ。
超高性能MAKIBISHIの鋭い刺は分厚いハムの着ぐるみの皮を破りアリークイッ本体に突き刺さる。
そしてパラライズ、鼻の動きが止まり、体が膠着、棘が皮に食い込むことにより、壁にアリークイッの鼻がめり込むだけで済んだ。
次回予告!
夢のプリティ!
ドリームビッグにビーアビシャス!
壁に鼻ありドアノブ意味なし!




