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自販機暮らしのサンピエール(3世)  作者: ブリ大根
ハムハム公国編〜波乱
23/42

ハムゥ〜! その十五!

あらすじ!

だんご!

スピン!

暴れん坊!

サンピエールは表彰台の天辺から白ハムとヒイバーを見下ろす。サンピエールには自分がなぜそこにたっているのかもわからなかったが、誰かを物理的にも精神的にも見下せる表彰台の上はサンピエールにとってひどく居心地が良かった。つまり溜まっていた鬱憤をぶちまけた後の清涼感と表彰台の上の景色で有頂天となったサンピエールは周囲に対する警戒を怠ってしまったのだ。


その結果生じた隙はこの場においてはツンドラ地帯に全裸でオーロラをみにいくほど致命的なことにサンピエールだけが気づかない。


いつの間にやら表彰台から降りていたヒイバーが手に抽象アートを持ちそれをサンピエールの前に差し出していた。


「優勝賞品の秘文書だ!受け取ってくれ!」


なんの構えもせずいたって無防備に両手を伸ばしたサンピエールは、サングラスを外したままのヒイバーに結束バンドによってあっという間に抽象アートとがっちりと固定され引きずられる。もちろん抵抗するサンピエールだが紙の地面の上をするすると移動する様は、深く積もる雪のなか屈強なトナカイが空に浮かぶソリを引いているかのようだった。


つまりサンタだ。


思い出して欲しい、サンピエールがハムハム公国に赴くきっかけとなったのは夏休みの自由研究のためにネズミを捕まえようとしたことだ。


そう、夏休み、熱射、ホットサマー。


雪は降らないしサンタは薄着、プレゼントは貰えないし、ソリの中身は空っぽだ。


サンピエールのケツは引きずられることで痛みを覚えていた。ケツに敷くダンボールが欲しいという切望は叶えられないままヒイバーの暴力を止めることも出来ない。


神には祈らない、サンピエールは仏教徒だ。

だからサンピエールはサンタに願うしかなかった。


果たして季節外れの願いは思わぬ形で成就した。


これもサンピエールがイイコでいたからだろう、約半年遅れのプレゼントは見事サンピエールのケツを紙から解放してくれた。


救世主の名前はサングラス。走っているうちにヒイバーの懐からこぼれ落ちたサングラスだ。引き摺られながらその様子をみていたサンピエールが咄嗟にケツを浮かせ、無事ケツは地面との蜜月を終えることになった。だがしかしサンピエールの思いをよそにケツは突然愛しい人と引き裂かれた悲しみからか血の涙を流し胸の哀切を語る。


石灰がわりに鮮血をぶちまけるライン引きと化したサンピエールは、あまりの痛みに薄らぐ意識のなか、紙の色とは異なる白をみた。





ヒイバーは追い詰められていた。ピエコの残骸(秘文書付き)とついでに投擲するための武器として使用可能なサンピエールを抱えるヒイバーは、状況だけをみれば白ハムよりも有利といえる。しかし白ハムは腐っても元英雄、本来建築家であるヒイバーとの基礎能力の差は歴然なのだ、現在優勢を保てていることこそ相手の策略。


こちらの切り札もすでに何割か見切られている。先のダンス勝負で白ハムが回転し竜巻を巻き起こしたのはピエコ自爆の際に破片とともに辺りに散布した罠を吹き飛ばすため。鋭いスピンは地面との接触面が少なかったことも影響しているだろう、バレリーナの爪先立ちそのままの姿勢での完璧な静止、そして極僅かだっただろうセーフティーポイントを一気に広げたその力量、自らの策略を完璧なまでに破られたヒイバーは乾いた笑みを浮かべる他なかった。


実際派手なだけで無駄にもおもわれる荒技だが、接近戦でヒイバーを圧倒できる白ハムならば罠さえなければよかったのだろう。あの場に人質がいなければ秘文書もなにもかもが掻っ攫われて今頃ヒイバーは無様を晒していたはずだ。


単に幸運とみるべきか、いやそれだけではない。


相手にとってサンピエールが人質として機能した。


こちらが予想していた以上にハム平は秘密を知っている。この上秘文書まで奪われればハムネの治世がどうなるか分かったものではなかった。もうアレを使うしかない。ヒイバーは追い詰められにわかに冷静さを欠いた頭でおもった。そして、気力を必死にかき集め緊急時の非常用術式が収められた己の尾に手を伸ばす。


「ヒイバービイバーアルバータ!!!」


ヒイバーがそう唱えた瞬間、辺りが眩い光に包まれ、サンピエールとピエコの残骸(秘文書付き)が消えた


「かかったな小僧!お前らハム源の秘密はもう丸裸となったも同然だ!ハハハハハハハ!」


まだ残照で視界も明瞭でないながらも哄笑する白ハム、呆然としはっと我にかえったヒイバーはぶるぶると体を震えさせて白ハムに詰め寄った。


「謝れよ!全身の毛を代償にしたオレに小坊主?!丸裸だと?!!!なに笑ってんだ!!!謝れよ!!!!滅茶苦茶痛いんだぞ!!!」


「私は小僧といったのであって……」


「また小坊主っていったな!もう許せねぇ!お前の毛全部毟ってやる!!!その毛を寄越せ!!!」


「……ごめん」


毛の一切を抜き取られ痛みと羞恥に震えるヒイバーに申し訳なさそうな白ハムの声が腫れ物に触れるように恐る恐るかけられた。

次回予告!

数年分のハウスダストです!

会議は踊るよどこまでも!

ついにあの蝙蝠が登場!

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