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自販機暮らしのサンピエール(3世)  作者: ブリ大根
ハムハム公国編〜波乱
19/42

ハムゥ〜! その十一!

あらすじ!

崩れそうな塔から逃げ出した先には現実味のない白ばかりの光景が待ち受けていた。果てがぼやけるほどの白は、過去の匂いを漂わせる。照りつける陽光を遮る闇を二つ失ったヒイバーに相対するは芳しい香りの茸地獄でオーラを感じた気配の主であった。

万理を解すものと呼ばれた天才ハムネ一世。この謎多き天才が編み出した理論や装置なくしてハムハム公国の発展はありえない。その発明のすべてが有数の技術国である猿の国でも時代を何代か経てようやく辿り着くだろうものばかりなのだ、当時のハムたちにハムネ一世の齎した影響は甚大だった。


その発明のうちの一つが転移能である。


読んで字のごとく物体を転移させることができる能力である。とはいえ全ての物質を転移させられるわけではない、質量や体積が大きければ大きいほど複雑な術式が必要になってくる。


転移能の資質を持つものたち全てが複雑極まる高等術式を使えるわけではない、扱える術式によりランク付けされた彼らのデータをヒイバーが閲覧できたのはひとえにハムネ三世の右腕であるからで、ほかの中枢部連中でも易々と許可されない。


傷目の真白の名はデータの備考欄にポツリと載せられていた。そこにはかつてハム原陣営であったはずの英雄がハム平に鞍替えする原因となるようなことも、第三次原平合戦についても取り立てて記入されていなかった。

過去三度にも渡る原平合戦についてはハムネ三世でさえも特別の事情がない限り情報開示が許されない。

ヒイバーさえも他の一般ハム同様に眉唾ものの脚色過剰な原平合戦しか知らない。寝物語の英雄とランク付けのデータを見るまで実在を疑っていた。


さて、傷目の第三層位となると、異空間感知と次元穴の開閉、またヒイバーの第七層位は複数の座標指定が可能となる。


転移能の最高層に達したのは、ハムネ一世ただ一匹。一世は自身の思うがままの異空間を創り出すことができたといわれ、その空間たちは今なおハムハム公国に根付いている。第三層位が可能なのはこの空間の座標の察知と開閉だ。空間を開くには自分が存在する次元とその空間との間を通す穴を空けなければいけない。ここまでが第三層までができることだ。

第七層位の複数の座標指定は複数の地点から物を同時に転移させることを可能としている。


ヒイバーのサン・ピエトロ大聖堂の材料は看守塔からほぼ拝借している。だから灰色だけのもの寂しい仕上がりなのだ。看守塔はとても堅固な石材を使っている、そうやすやすとは壊れない。この空間に入るために開けた次元穴は未だに開いたままで距離も近く、術式の展開速度は普段よりも格段に早められた。決してサマリーへの嫌がらせではない。


瞬息(しゅんそく)建築家(アーキテクツッ)と呼ばれるヒイバーは二つ名のように建築家、戦闘向きのアニマルではない。そもそも転移能自体も戦闘向きではない。最下位層である第一層の術式でも紙におこせば50枚は下らないのだ、刻一刻と状況が変わるような場でその量の術式を操作できるものはそうそういない。ヒイバーの場合も様々な好条件が重なってようやくサン・ピエトロ大聖堂を完成させられたのだ。


建築家であるヒイバーに戦闘の心得はない、しかも相手は元英雄、無策で挑めは負ける。よってヒイバーはサン・ピエトロ大聖堂ベストマッチサイズレプリカに忍者屋敷さながらの仕掛けを施していた。


「というわけで!水攻め!」


「ブクブクブクゥ」


「火攻め!」


「熱い!」


「兵糧攻め!くらえハムハムフード!」


「ムグゥ!上手い!もう一丁!」


「くらえ俺の秘蔵ハムハムフード!」


「ムグゥムグゥ!おかわり!」


「くらえお蔵入りハムハムフード!はいドバーィ!」


「ご馳走になった!風味がやはり素晴らしいな!だが今まで食したハムハムフードと味が違ったの。もしや今のは新作ではないか?」


「お客さんお目が高い!その通り、新作抹茶風味!まだ試作品なんですが初のデザート系ハムハムフードとなっておりましてね!私一口で気に入ってしまって最近これの試作品ばかり!やはり抹茶は何にでもあいますよ!」


「ほー!発売が楽しみだよ!」


白ハムにハムハムフードが効いているか探りを入れたヒイバーはその結果におののく。脳裏に浮かんだ言葉はハムハムフード完全耐性。ハムハムフードのあらゆる作用を完全に無効化する、現ハムネ体制においての脅威そのもの。


水攻め火攻め兵糧攻めともてる策のほぼ全てを使い果したヒイバーに残されたのは、建築家の禁忌、それのみだった。


「自爆ボタンポチッ!」


煙と炎の風はヒイバーと白ハムを空に誘い、地面から遠ざける。不安定な空の旅の中でも己の作品が崩れていく様をヒイバーはずっと見ていた。そのせいでうまく着地出来ず尾を痛めてもヒイバーは己の子供とも言える作品の最後を目を離さずにずっと見ていた。


「俺のサン・ピエコが…ぁああ」


風に攫われるピエコの名残をヒイバーは必死で掴む。細かく砕けた破片は、手に収まるほど小さくなっても尖りを残しヒイバーの手を傷つけた。


「ごめんな、ごめんよ。俺のピエコ!不甲斐ないお母さんで、お前を守れなくてごめんな!」


「別れの挨拶は終わったか?」


「まだかかるかな!」


「そうか…」


「おお、ピエコ。お前の墓はどんな形がいいかな。大仙古墳?ピラミッド?ストーンサークル?お父さん頑張って立派なお墓を作るからな、期待してまっていてくれよ!うーんでもここら辺ろくな材料がないな。お!こんなところに秘文書!これでいいか!」


こうして第三秘密文書はピエコの墓として新たなスタートを切った。

次回予告!

ハムスターとは!大気圏外までの飛行も可能!

ハムスターとは!深海深くまでの潜水も可能!

出典は〜何でしょうか!

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