反撃
「まさか、ジーニモンキーの巨体種がこんなことまでするとは・・・」
あまりの衝撃にそこから言葉が続かなかった。
いくら狂暴な生物とはいえこんな組織だった行動をするとは思ってもいなかった。間違いなくこちらの判断ミスだ。
護衛の半数はすでに巨体種の攻撃で絶命している。
護衛の数人が私を無理矢理にんでも引っ張り出そうとしている。
だがそれを見越してなのか巨体種はゆっくりとこっちへ向かってきている。
このままでは私だけではなく護衛もろともやられてしまうだろう。そう思い通りにさせるわけにはいかない。
護衛を突き飛ばして防御の構えを取る。これは自己防衛のためではなく護衛が反撃に転じるための時間稼ぎのためだ。ヒョウカほどではないが私も氷の壁を作ることぐらいは出来る。術のなかで最強の強度を持つこの壁であればなんとか出来るだろう
「アイス・ウォール!」
こちらからは相手が見えないほどの厚さの氷の壁が現れる。
これなら・・・これならなんとかなるはずだった。
しかし、そんな願いも虚しく巨体種の腕が氷の壁を突き破ってきた。
奇跡的につき出された腕が自分に当たらなかったものの、何をしても無意味だとその場にいた全員にそう思わせるには十分だった。
ただゆっくりと巨体種が壁を越えて私を丸太のような腕で殴ろうとしているのが見えた。私自身、避けようとすら思わなかった。
ヒョウカ、すまない。お前には外の世界を知ってほしかった。だが、それも叶わない。このまま、無事にヒョウカが生き残ったとしても村の復興のために残るだろう。
私が弱いばっかりにすまない。
「炎桜ー八重」
目の前に淡いピンク色の花弁の形をした盾が現れた。
巨体種は何度も体当たりしているがいっこうに壊れる気配がない。
「危なかった。ギリギリ間に合った」
その声の主は巨体種の真後ろにたっていた。
巨体種もそれに気がついたからか振りかえりざまに殴りかかった。
巨大な腕が少女にむかってつき出される。
確実に少女が吹き飛ぶと思った。それはその場にいた巨体種含め全員がそう思っていた。
しかしそうはならなかった。
少女の肩幅よりも太い腕が少女の拳によって止められた。しかも、微動だにせずにだ。
「ねえ・・・これはあれかな?たかだか猿の分際で私を殴ろうとした、ということでいいのかな?だとしたらあんまり調子に乗らないでね」
屈託のない表情でそう言った。