後悔
やってしまった。
全身が痛い。
おそらく、暴れるだけ暴れて倒れたのだろう。
精霊術の使いすぎで倒れるときは体の至るところが痙攣してそれによって筋肉痛になる。幼い頃から何度か経験したがいまだになれない。
元々ヒョウカのように精霊にたくさん指示を出しそれを何度も使える体ではない。やろうとすることに体がついてこない。
最悪だ。
「マイル!入るよー」
返事をする間もなくナナオが入ってきた。
「せめて形だけ確認ぐらいはちゃんとしてくれ」
「ハイハイ、わかったーわかった。それよりもよく我慢したね。てっきりあの紙を使うのかと思った」
「この前の作りおいてるやつ?あれは使えるようなものじゃないよ」
「そうなんだ・・・・・・」
「・・・・・・・・」
空気が重い。
ナナオが心配していることが分かるだけに何をいっていいのか分からなかった。
明るくふるまうことも、できない自分をアピールすることもどれを選んでも不誠実だと思った。
かといってどういうことを言うのが正解なのかもわからない。
頭の中でずっと考えているからか一秒が一瞬がとてつもなく長く感じる。
この空気をなんとしても打ち破りたい。でも、どう言うのかが決まらない。
何かを言うことが不誠実だと思った。何が正解かわからない。
何も言うわけにもいかない。
それこそが不誠実で不正解と言うのは分かる。
でも・・・
「ねえ、無理矢理つれてこられたことがそんなに嫌だった?」
ナナオは顔を見つめながらポツリと呟いた。
さっきまでとは全くタイプが違う、正確には痙攣による体が動かない重みとは別のものが体全体にのしかかった。
返事を待たずにナナオは話を続けた。
「みんなはやっかいばらいしたくてマイルを追い出したわけじゃないよ。ただ、単純に外の世界を見てほしかっただけだよ。だから、私と一緒に小さな村社会から出したんだよ。それだけは忘れないで。あと、これはお父さんが試験会場についたら渡してって。じゃあ、もういくから」
そういうと、足早に部屋を出ていってしまった。
ナナオから渡された袋には手紙が入っていた。
・・・・・・・・
「ふぅー」
長年の付き合いとはいえ緊張する。
マイルとは家族同然の関係だ。だからこそ、なかなか本音で話すことがない。特に話したいとも思わない。そこに見えない線があるようなそんな感じだ。
だから、さっき勢いよくあんな雰囲気の中話せたことが意外だった。
それぐらい、自分にも思うことがあったということだ。
やっぱり、マイルは大切な家族なのだ。
わかっている、これがお節介だと。
お節介だとわかっているからこそ障害は排除しておかないといけない。
「ねえ、ユーリ。盗み聞きはよくないと思うんだけど」
「あれっ?気づいていたんだ」
「私、意外と鼻が利くのよ。あなたみたいなのには特に」
「それは怖い」
ユーリは飄々としたまま答える。
「副村長の息子たちを唆したのユーりでしょ」
「違うよ。唆したとは人聞きが悪い。僕は聞かれたことを答えただけだよ。それで過剰に反応したのは子供たちだし、安い挑発にのったのはマイルだ」
「まぁ、それもそうか。マイルは優しいから」
「人のために怒ることができるのはすごいことだと思うよ」
気に入らない、この飄々としながらこっちの反応を観察するようなこの感じが。
絶妙に噛み合わない会話がイライラさせる。
確実にマイルのことを狙っている、そう感じる。
であればなおさらだ、余計な詮索をされてマイルを傷つけたくない。だから、わたしに出来ることをするだけだ。
「ねぇ・・・ユーり。いや、”オーサー”。あまり調子に乗らないでね」
「おお、怖い怖い。そんなに睨まないでよ。これ以上、僕からなにもするつもりはないよ。安心してよ」
「そう・・・それならよかった。でもせっかくだから次に手を出したらどうなるかぐらいは見といてよ」
そうナナオがいった次の瞬間警鐘がまるで地震のように低く重く響きわった。




