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四十九話 『愛しい君に食べて欲しい』

今日からラストまで、一日一話更新で行きます!(平成、終わらないように)

と言いつつ、明日、全部公開するかも。そっちの方が、まとまりが良いので。

「ふふっ。では、仕切り直して、初めましょうか」

「今更だけど、その姿、綺麗だよ。マリカちゃん」

「はい♪ ありがとうございます♪♪」


 マリカとタレムの結婚式、会場は廃屋の様な大聖堂、見物人はグレイシス家の兄弟と鬼仮面の少女リン、詠み手は聖母マリア。ついでに時間停止状態の……省略。

 なにもかも、ボロボロでめちゃくちゃで、賎しくて、貧相で……


「……ねぇ。マリカちゃん。仕切り直すなら、日取り改めない? これじゃ、折角の結婚式なのに、あんまりじゃ――」

「いいえ。だからこそ、良いのでございます。ふふ、わたし達は汚く貧しく苦しく辛い、馬小屋で過ごした 糟糠の夫婦ではございませんか。綺麗で華麗で流麗な結婚式よりも、むしろ、こっちの方がわたし達らしいと思います」

「……本当に良いの? マリカちゃんの夢なのに」

「ふふ、わたしの夢は……元々、タレム様のお嫁様になることだけでございます。それを、思い出しました。だから……っ」


 ――ぎゅうっ。


 タレムに、濡れた瞳でそう言って、つるつるのウエディングドレスをくっつけて、ふかふかむちむちの乳房を潰しながら、満開の微笑みでマリカは伝える。


「今、貴方のモノにしてくださいまし」


 当然、タレムの返事は決まっていた。


「うん。マリカちゃんそれで良いなら……大歓迎だよ」

「ふふ♪」


 そんな二人の同意を聞いて、聖母マリアが式を進める。


「では、異義のある方は今。無ければ今後一切、如何なる理由があろうと、例え帝であっても、邪魔することは認めません」

「(ふふっ。さっき、ここでタレム様が来てくれたら……って思っておりました)」

「(言わないで……意外と警備が厳しくて……)」


 聖母が詠む言葉も耳半分で、タレムはマリカのマシュマロの様に柔らかい身体を抱いてコソコソ話。

 神聖な結婚式では不謹慎な行為だが、マリアは正に聖母の如く温かい視線で見守って、


「ふふっ。……タレムさん。貴方はこの女性を、病めるときも、貧しい時も、痛いときも辛いときも寂しいときもひもじい時も、どんなに悪いときも、《永遠に》《悠久に》《永久に》、愛し、敬い、慰め、助け、《不偏に》愛する事を誓いますか?」


 ニッコリと誓いの言葉を詠んだ。


「あ、あれ? なんか、違くない? 幸せな時とか……」

「誓えませんか? 誓え無いのなら――」

『そんな軟弱者に娘はやれ――ん!』


 何故か帰った筈のグレイシス公爵が、ちゃっかり息子達に交じって見物していた……。


『幸せになれよ~んっ。俺のマリカあ~ん♪』

「お父様っ♪ はい♪ もう幸せでございますけど♪』

「ふふ、不器用なお方」

「……」


(どんだけだよ! ってか! マリアさんもマリアさんだな。流石はマリカちゃんのお母さん、さりげに言うことがえげつない)


 そんなイレギュラーが起きようとも、グレイシスの一族は馴れているのか全く動じずに受け入れている。

 マリアもアルフリードに小さく手を振りながら微笑むと、すぐに……


「タレムさん。誓えますか?」

「ふっ。……誓います。誓いますよ! 必ず! マリカちゃんを、マリカを、どんな時でも一生、愛します」

「永久に?」

「はい」

「悠久に?」

「はいっ」

「永久に?」

「はいっ!」

「だ、そうですよ? マリカ」


 言葉を振られたマリカは、股をキュッと閉じてタレムの腕を抱き込むと、


「嬉しいな♪ えへへ♪」


 デレデレしていた。

 それを見て、マリアは頷くと、


「では、マリカ。貴女はこの男性を――」

「永久に、永遠に、悠久に、命果てた後も! 何処までも!」

「……」


 早過ぎるマリカの返答に、マリアは何もなかったかのように、


「……誓いますか?」


 省略した。


「はい。誓います♪」


 マリカは誓った。

 微笑みを一瞬も絶やさず、タレムから一ミリも離れずに。


「では、誓いのキスを……」

「タレム様っ♪」

「……うん。分かってる」


 向かい合い、ドレスのベールを上げて……


「……」

「……タレムさま?」


(あっ。俺、キス出来ないんだった……)


 凄まじい事実を思い出してしまった。

 かといって、このタイミングで、言い出すことも出来ない。

 ……言ったら、冗談じゃなく、今度こそアルフリードに殺される。


(ここは……やり切るしかない。……ごくり。大丈夫。マリカちゃんが俺を食べるわけないんだ!)


「……」


 今も尚、残るアイリスに咀嚼された恐怖とタレムが闘っていると、


「やっぱり……」


 何かを勘違いしたマリカが、微笑みをけし、肌色を白くする。


「ウィルム様と浮気をしたわたしは……ダメなので……ございますね」

「……っ」


 ポロポロと涙を零す。

 ……アルフリードが少し瞳をギラつかせている。


「タレム様には……もう、わたしなど……汚れた身では……」

「違う……そうじゃなくて、これは、アイリスちゃんに食べられ……」


 言い訳しかけたタレムは、自分の言葉に、ピンッと天啓を覚えた。


(食べる……か。そういえば……クラリスが言っていたっけ……クラリスも俺を食べられるって……俺も……マリカちゃんなら……そうか……)


「マリカちゃん」

「……はい?」


 バシンと、タレムはマリカの両肩を掴んで、真剣な瞳で、


「本当に、俺だけのモノ)になってくれる?」

「……それは……はい。でも、わたしは……汚れてっ」

「なら――受け入れて」

「――っ!?」


 ――ちゅっ……。


 ……口づけした。


「んっ!」


 とろとろで甘いマリカの味。

 タレムは、それを味わいながら、プルプルの唇を舌で舐めずり……中に押し入り、内側を……


 ――カブっ。


「ん――ッッ!?」


 ……噛み付いた。

 ズブリと歯を肉に差し入れ、力を入れる。


「んっんっ……んん――っ!!」


 噛まれているマリカは激痛に目を見開き、驚愕し、暴れる。

 それはそうだ、その痛みは、タレムも知っている。

 ……だが、


(耐えて。マリカちゃん。俺を本当に好きなら……耐えられるから)


 タレムは暴れるマリカを抱きしめて押さえ付け、更に深くへと入ていく。


 ――ぶちぶちっ。


「んんん――ッッ!」


(大丈夫。俺も痛かったけど、アイリスちゃんを嫌いになったりしなかった。むしろ……そう、むしろ、近くに感じるようになった)


 ――ブチブチブチ。


「んっんっんんーっんん!!」


(きっとそれを、クラリスは言ってたんだ……だから、耐えて! マリカちゃん。俺のモノになって!! マリカちゃん!!)


「……っん」


 そんな思いが、マリカに通じたのか、マリカは暴れるのを辞めて、タレムにシッカリと掴まると、身を任せるように力を抜いた。


 ――ブチんっ!


 噛み切り、マリカの肉片を飲み込む。

 同時に自分の唇も噛みきって、


「ん……」


 傷口から溢れる血を、マリカの唇に塗る。

 そうして、暫く傷口を舐めるように、たまに舌を絡めつつ、キスを続けてから、マリカの表情が落ちいたのを確認し、唇を離した。


「マリカちゃん」

「……はい」

「君の汚れは文字通り、俺が喰い取った。残っているのは、全部、俺のモノ)だ」

「はいっ」

「だからもう、心残りも、シコリも全て捨てて、俺のモノ)になってくれるかい?」

「はいっ! わたしの全てを、貴方に捧げます」


 ――ちゅっ。


 涙を拭きもせず、満面の微笑みでマリカはタレムにキスをする。

 そして、


「タレム様っ……。もっと……もっーと! わたしを食べてくださいまし♪」

「え?」

「痛いけど……貴方に貪られるのはとても、快楽的でございました! ゾクソクしました!!」

「あん?」

「つまり、でござます。ハマってしまいました♪ どうぞ、文字通り、わたしをお食べくださいまし♪♪」


 こうして、マリカの開いてはいけない、パンドラの扉を開けてしまったが、


「ふふっ。これにて、タレムさんとマリカは夫婦でござますよ?」 

「タレム様っ。食べて~っ、くださいまし♪」

「一回、一回、落ち着こう。俺は別に、人喰い鬼じゃ無いんだよ?」


 マリカが正式に、タレムの妻となったのであった。(エピローグかな? 後、三話か二話) 

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