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二十二話 『ロック村の廃教会』

ブクマ百個突破!! 記念。

気分が良いので放出。

感謝と感激を乗せて。

 タレム、イグアス、マリカの三人はロック村の北にあった廃教会まで足を運んでいた。

 穏やかな渓流の小河に囲まれ色とりどりの花が咲く場所だ。

 ……ロック村にもかつては教会があったのである。

 

「ま、こんなものだよね」


 しかし、数年間、手入れもされず放置された教会は、酷く埃を被り、天井や壁、床には穴が、聖堂の椅子や女神像に至るまでボロボロであった。


「この村の方々はっ……」


 そんな様子を哀しそうに見つめたマリカが諦観した声で呟くと、真っ先に女神像に近寄って、手ぬぐいを取りだし磨きはじめる。


「マリカちゃんっ!? 汚いよ?」

「ええ、だから磨いて綺麗にしております」

「いや……そういう意味じゃなくて」


 タレムはマリカに近寄ると、腕を掴んで止める。

 ……マリカの綺麗な手が汚れるのを見ていられなかった。

 イグアスも埃臭さをどうにかしようと、錆び付いた窓を開けようと試みている。


「別に、マリカちゃんの為なら、新しい教会の一つや二つ。新築するよ?」

「……」


 腕を捕まれたマリカは、目を丸くしてタレムを見やると、


「ふふ」


 軽やかに微笑んで、タレムの胸に体重をかけ、身を預けた。

 その際、さりげなく頬を擦り付け、タレムの暖かい体温と心落ち着く香りを愉しむ。


「その、お心遣いは大変、嬉しゅうございますが、教会は禁欲が理。お金ではなく、人の愛でもって成さねばなりません」

「禁欲……ね」


(修道女と結婚したら、毎回、禁欲、禁欲って言われるのかな? ちょっと、面倒臭いかも)


 やはり、昨晩のアレは、何かの間違いのだったのだろうか?

 そう、思えるほど、普段のマリカは欲がない。


(結婚したら、ハメを外そうと思ってるのに……くっ。我慢するしかないのか)


「ふふっ」


 そんなことを思って心で苦虫をかみつぶすタレムを見て、マリカは微笑むと、


「禁欲とは金欲とも言います」

「……ん?」


 人差し指で、タレムの身体に渦を書く。

 それは、くすぐったくて、どこか官能的な感情を刺激される。

 そして、


「欲は心を汚しますが、豊かにも致します」

「……つまり?」

「夫が妻に向ける情欲は、咎めるモノではございません」


 さりげなく、マリカはタレムに身体を抱かせていた。


「……タレム様が求めてくれるなら、求めてくれるだけ受け止めます。と、言っているのでございますよ?」


 ――ごくり。

 唾を飲み込んで、腕の中で可愛く微笑むマリカを直視。

 この状況、男なら誰でもマリカを自由にできるだろう。

 マリカだってそれはわかっているはずだ。

 ……それこそがマリカの覚悟なのでは?


『好きな女の覚悟ぐらい、男なら受け止めてやれよ』


 そんなイグアスの言葉を思い出し、


「タレム様……一人の夜は寂しゅうございます。……恐れないでくださいまし」

「もしかして、そこも夫唱婦随……?」

「はい……。タレム様」


 ……カチリ。


 それで、理性のダガが外れた。


 ――ぎゅっ。


「ひゃっ……」

「マリカちゃん」


 抱き締め、名を呼び、


「はい。マリカとお呼びくださいまし」


 答え、


「マリカ……」


 マリカの薄ピンク色の唇を、人差し指でなぞり、


「コレ……貰っていい?」

「そんなこと、いちいち聞かないでくださいまし」


 すーっと近付けた。

 ……それがくっつく一瞬、手前。


「おい」


 イグアスが冷たい視線で、えんがちょ。

 

「そういうのは、屋敷でやれ」

「「……」」


 それで、無言になる二人。

 しかし、すぐに、


「もうっ! 兄様のお邪魔虫! なんで? なんでなの? 馬鹿! アホ! クズ! イグアス!」

「おい……最後のはオレの名前だぞ」


 熱したヤカンの如く顔を真っ赤にしてマリカが怒りだした。

 

「大嫌い! 大嫌い! 大嫌い! ――」

「お、おい……オレはただ――」

「大嫌い。大嫌い。大嫌い――」


 完全にイグアスを嫌悪し言葉を聞かない。

 そんなマリカを、


 ――ぎゅっ。


 と、タレムが柔らかい身体を抱き戻し、


「マリカちゃん。まって」

「……っ。タレム様。もしかして、まだ……!」

「いや、そうじゃなくて。向こう」

「向こう……?」


 そういいながら、マリカの視線を、窓の方に誘導した。

 そこには、覗き見る村人達……。

 神々しい程に美しいマリカを遠目からでも一目見ようとしているのである。

 

「……っ」


 イグアスは、コレに気づいて止めてくれたのだ。

 ……今の状況は、修道女であるマリカが、人前で見せて良いものではない。

 村人達の視線で、ほてった感情が急激に冷えていき、オロオロするマリカをタレムは隠すように抱きながら、


「マリカちゃん。後にしよう。俺も、もう少し、落ち着いてから考えるから」

「うぅ……落ち着く前に終わらせたかったのにぃ……」

「え?」

「なんでもございませんっ!! 今夜こそ、頑張りますので、問題ありませんので!」

「マリカちゃん……漏れてるよ?」

「はぅ!? 聖女式記憶消却術! 《シスタークロスアターック》」

「ぐふっ! ……なにそれ」


 と、いう事態になったのだった。

「一日遅れのメリークリスマスでございますね。兄様。(ゴソゴソ」

「そうだな……で、お前は生クリーム持って何するつもりだ」

「はぁ? そんなの……身体に塗ってタレム様へ献上する。に、決まっているではございませんか」

「……決まってはないと思うがな。(流石にタレムも引くだろ)」

「兄様。無知は無恥でございますよ? これは『白聖夜女体盛(ホワイトクリスマス)』と言う、伝統なのでございます。知らないのですね。ぷぷぷっ」

「そうか……因みに、誰から聞いたんだ? 去年まではやってなかっただろ」

「え? リン様でございますが、それが?」

「い……いや、何でもない。喜んで貰えると良いな……(ほんとに)」

「はいっ。あのお方に喜んで頂ける姿を想像すると今から胸が高なってしまいます」

「お、おぅ……(後でタレムに伝えておかねば……)


《百ブクマ記念即興クリスマス小劇・完》

 注意・本編の人間関係、状況、心理状態には一切関係ありません。

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