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三十八話 『頑張れ! リン』

 そして、シャルルを背負いながら逃げていたリンは、王宮の広い地下室に追い詰められていた。


「そこまでだ。もう逃げ場はない」

「……それは、どうで、ござるかな?」


 リンはアークスに反抗的に答えたが、地下室の隅に追いやられ、そこをアークスの手下、千人が囲っている。

 ……確かに逃げ場はなかった。


「リン……どうするつもりなのだ?」

「それはもちろん――」


 シャルルの問いにも答えながら、クナイを十本、両指に挟み、


「無いなら作るまで! 忍法極技《万本影クナイ》! で、ござるよ!」


 一斉に投擲した。

 そして、投げられた十本のクナイ、それぞれが千本に分裂し、アークス達に雨あられと降りかかる。

 それを、


「ふんっ! 甘いよ。千人長。凍れ!!」

「――ッ!?」


 アークスは氷壁を作ってあっさりと完全防御。

 手下も全員無傷で守ってしまった。


「まだまだ! で、ござる!」


 それでもリンは、言いながら、朱色の小玉を放り投げ、そこに新しく取り出したクナイを投擲する。


「忍法合技。《火遁・千本影クナイ・爆》!!」


 千本に分裂し、氷壁に着弾したクナイが次々に爆炎をあげていく。


(この炎で……ッ!)


「ふん。溶かそうとしているのかい? 無駄だよ。僕の氷は、火山の溶岩でも溶けせはしない」

「――くッ! ならば!」


 すぐに効果の無い攻撃に見切りをつけ、今度は、黄・青・茶・緑・赤の五色の小玉を取り出して、それぞれクナイと共に投擲する。


「忍法合技《雷遁・千本影クナイ・(げき)》」

「忍法合技《水遁・千本影クナイ・(りゅう)》」

「忍法合技《土遁・千本影クナイ・(ガン)》」

「忍法合技《風遁・千本影クナイ・(たつ)》」

「忍法合技《火遁・千本影クナイ・(ばく)》」

 

 それは、同時に五つの忍法で、


「忍法奥義!! 《五遁・爆竜岩流激(ばくたつがんりゅうげき)!》」


 分裂し五千本となったクナイが巨大な五色の竜に変幻し、アークスに飛んでいく。


「……姫。伏せるでござるよ! 《土遁・土壁》」

  

 リンは急いで土の壁を生み出すと、シャルルの頭を強引に下げさせる。

 直後。大爆発が巻き上がった。

 その爆発は、水素爆発であり、粉塵爆発である。

 そして、リンの出せる手札で最大威力の攻撃でもあった。


 シュルシュル……


 が、爆炎が消えて、尚も健在なアークスの姿が現れる。


「まさか。汚れた血族の隠密兵がこんな大技まで使えるとは思わなかったよ。これはそっちの土俵で闘ったら手も足も出ないかもね。でも、これは直接戦闘だ。君の得意分野じゃない」

「……くっ。これが、魔法……っ。反則でござるな」


 リンの力は、アークスに何もかも及ばない……

 つまり、シャルルを守れない。


「ちっ。せっかく殿に褒めて貰おうと思ったでござるのに」


 鬼仮面の少女は呟きながら、水色の小玉を取り出して、チラリとシャルルに視線を向けた。


「姫……ここまででござる。拙者、ここで死ぬわけには行かぬので」


 そういって水色の小玉を床に落とすと霧が発生する。

 それは、リンの最後の奥の手。《水遁・水霧隠れの術》

 攻撃力は無いが、相手の目を確実に忍ぶ事ができる技である。

 つまり、有り体に言えば、究極の逃走。 

 

「姫には恩を返したかったでござるよ」


 発生する霧の中にリンは姿を消しながら、そう言った。

 シャルルはそんな従者に、


「よい。もう……充分だ。達者でな。我が友よ」


 満足そうにそう言って、リンの姿が消えるのを見送るのであった。(次話に続く)

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