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九話 『三つの種族』

先週は更新できなくてすみません。

更新待ちしている人がいるか不明だけれど。

とあるVチューバにハマり、長時間配信を視聴していたら、体調壊しました。

実はまだ本調子じゃないですぅ。

 本陣に戻ったレオ皇子は、いくつもある白い天幕のうち、一番大きく、戦場の見渡せる場所に位置する天幕に入っていった。

 おそらく、そこが、帝国軍の本部なのだろう。


 レオ皇子に続いて、タレム達も天幕の中に足を踏み入れる。

 すると、その中には、この戦場の主な騎士団長たちが強張った顔で待っていた。

 必要以上にピリピリと張りつめている場の空気が、あまり歓迎されていないこと伝えてくる。


 ちなみに、だが。

 アイリスの悪戯を受け、危うくこの軍議に参加できなくなりそうだったタレムは、イグアスの助けを受け、この場に参加している。

 ……相変わらず、レオ皇子は、一切合切、視線を合わせようとしないのだが。

 それは、もう、仕方がないことである。


「さて。戦況の説明を始める前に、まずは、貴様らが《精霊の国》にいる種族についてどこまで、把握しているか確認したい」


 十騎士長から千騎士長まで、そこそこ名の知れた騎士たち数十名。

 そんな騎士たちが静かに座っている長机の最奥に腰を下ろしたレオ皇子が、タレムを見ずにそう言った。

 長机の上には、書き込まれすぎて、もうほとんど役目を果たしていない周辺の地図や、何度も何度も机上戦を繰り返したのだろう《将騎盤》が乗っている。

 その乱雑具合に、どれほど苦戦しているのかが、写し出されているようであった。


 ピリピリ……ピリピリ……。


 ……ここで、見当違いなことを言ったら、斬りかかられそうな空気だ。


「俺たちに回ってきている情報は三つの種族……一つ目、この辺り、《精霊の国》外周の湿地帯を住みかとしているという、豚人族オーク


 天幕の中にいる騎士たちの重圧をものともせず、そう答えたのはイグアスだ。

 彼の堂々とした声が響くと、場の騎士たちが少しだけ、ざわつく。

 微かに聞こえ、見えるのは、歓心の色。

 ……英雄の家系、グレイシス。その名を持つ、イグアスの名は、こんな辺境の戦場でも、知れ渡っているようだ。


「特徴は、種族的な数の多さと、それゆえの多様性は脅威……が、知能が低い個体が多いと聞いている」

「素晴らしいな。イグアス卿。他の種族は?」


 そこで、イグアスは言葉を切り、一歩下がって、瞳を伏せた。

 発言の場を独り占めしないようにと、イグアスなりの配慮だ。


地精族ドワーフ。《精霊の国》一帯の地下に居住地を築いている種族ね」


 その意図を受け取り、アイリスが嬉々として語りだす。

 イグアスと同様に彼女もまた、場の空気に惑わされず堂々と。

 そんなアイリスの姿に、天幕の騎士たちは、好色の反応を示す。

 珍しい姫騎士、しかも、容姿端麗で、高名なクラネット家の令嬢とあらば、少しだけ気が緩むの仕方ないだろう。


「うふ♪ (にこっ)」

「「「……(もぞもぞ)」」」

「(ふん。馬鹿なオス共ね。気持ち悪い。死ねばいいのに、こんな面倒なことさせて、イグアス。後でぶっ飛ばしてやるんだから)」


 ……そう、屈強な騎士たちは知らないのだから。

 アイリス・クラネットという姫騎士の、悪魔のように恐ろしい本性を。


「小柄だけど、筋力が強く……異様に打たれ強い。土塊つちくれから命の無い怪物をつくる特殊な能力をもっている……って、聞いているわ」

「アイリス卿も。よく調べているな」

「敵を知れば百戦危うからず……ってね。うふ♪ (ウィンク)」


 イグアスに続き、アイリスも説明を終えると一歩、後ろに下がり、無理のある愛嬌を消す。

 ……ここで、そこまで目立つ意味もないと踏んでいるのだろう。

 そうして、三つ目の種族の説明は、まだ何も語っていないタレムへと託された。

 当然、タレムも、定期的に知らされていた事前情報は確認済みだ。


「……三つ目の種族は、この湿地帯の先にある、密林地帯を居住地としている《妖精族エルフ》」


 そのバトンをしっかりと受け取り、タレムも堂々と語った。

 ……が。しかし。

 先の二人と違い、騎士たちの反応は極寒であった。


「ケッ……」


 あからさまに、唾を吐き捨てる騎士もいる。

 レオ皇子も、視線を決して合わせない。


(あれ? もしかして、歓迎されてないのって、俺だけ? なんで? 新造貴族家だから?)


 その理由は、大事な軍議に参加しているというのに、タレムが泥だらけであることに起因している。

 いくら戦場でも、兵たちの上に立つ騎士として、身だしなみに気を使わないのは、騎士失格である。


「えっと、妖精族は身体能力もそうだが、特に知能が優れている。……代わりに、個体数は少ない。で、あってますよね?」

「ふん。愚か者。地精族と同じ土塊の怪物を作るうえ、まだ解明しきれていない、未知の能力をもっている。が、抜けているぞ」

「そ、それと、種族通して、容姿が整っていて、長寿である……」

「そんな情報は、どうでもいい」

「なんか、俺だけ……厳しくね? (ぼそっ)」


 レオ皇子に指摘されたタレムが、つまらなそうにボヤく。……が、それはさておき。

 精霊の国には、いま語られた、妖精族、地精族、豚人族の三つの種族が暮らしている。


「そして、その妖精族の王、妖精王オベイロンを盟主として、三つの種族が同盟を結び、我ら帝国に反抗している。というのが、この戦場の概要である」

「あん……? 同盟?」


 レオ皇子によって纏められた、最後の話。

 精霊の国の住人たちが、同盟を結んだというところから、タレム達には初耳の話であった。


「ふぅん。そういうことね」

「え、どいうこと? 精霊の国の種族は、種族間の仲が悪いって話だったはず」

「タレム。つまり、帝国が俺たち、増援部隊を送らなければならなかったほど、苦戦している理由が、まさにソレ、なんだろう。数と質、そして知能、机上能力値はどの種族も高いものがあったから、な」


 仲の悪い種族同士が、大敵を前に手を組んだ。

 これにより、一つ一つの種族なら、それほどの敵ではなかったが、それぞれの種族の長所が合わさったことにより、厄介な勢力になってしまった。


「っ! そういうことか」


 だからこそ、侵略が、予想よりも大幅に遅れて、まだ湿地帯で足止めされている。


 つまり、そういうことである。(続く)

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