表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/264

三十五話 『タレムの暗躍』


 神剣を手に持って、堕天使の前に堂々と立つ、タレムの姿。

 それを見て、司祭、アベル・ベルアベットは、数刻前を思い出し微笑んだ。


 ――それは、アベルが教皇ドラクレアに《女神復活の儀式》を強要された時のこと。

 ドラクレアが立ち去り、アベルが、これから犯さなければならい、悪魔の儀式を想い心を痛めていた……その時だ。


「やっぱり、最愛の妻を人質にされていた訳か……」

「――っ!」


 不敵に笑うタレム・シャルタレムが現れたのは。


「おおっ。神よ。貴方は僕に救いをもたらしてくれたのですね」

「……」


 タレムの姿を見たアベルは、腕を組んで祈りのポーズを取ると、膝を付く。

 そして、


「ナイト・タレム。今の話、聞いていたのですよね?」

「だったら?」

「――僕を殺してください」

「……」


 そういうと瞳を閉じて、十字架を握った。


「どうか、僕に、悪魔の行いをさせないでください」

「……」

「貴方が正しき心を持つ、善良な騎士であると見込んで頼みます……御慈悲を」


 アベルには、タレムが罪を裁く、神の使い。そう、見えたのだ。

 これが……最後の希望。


 ――だが。


「だったら、俺に、善良を神父を、殺させようとしないでくれよ」

「……っ!」

「まあ、ここに来るまでは、半分くらい拘束して、監禁しようと思ってたんだけど」


 そんな神父を前にして、タレムが裁きの剣を抜くことはなかった。


「何故っ⁉ 僕は、マリカくんをも、犠牲しようとしているのですよ」

「望んでいる訳じゃないんだろう?」

「僕はもう、一人じゃ、止まれない。例えそれが、望まれないと解っていても、僕に妻を諦めることはできませんっ」


 ――だから。貴方が、僕を殺して止めてください。


 ……そう、アベルは続けようとしたが。


「だからこそ。俺は貴方を殺さない」


 云うより早く、タレムが、そう言って、アベルの肩を掴み、体を起こした。


「俺は貴方を咎めない。俺だってきっと、マリカちゃんを人質に取られたら、世界だって滅ぼすから」

「しかし、それでは、僕が――」

「――大切な妻の為になら、悪事ですら働ける。やっぱり、貴方は、マリカちゃんが一番尊敬する神父だった」

「――っ⁉」

「アベル司祭。あなたが、そんな人間だったからこそ、俺に協力して欲しい。必ず、囚われたアベル婦人も助けらるから」

「協力? ドラクレア教皇聖下を相手に、妻を人質とられた僕が、何をできますか?」

「――いや。敵は、ドラグレア……なんて、三下じゃないんだよ。詳しくは言えないけど……さ。どうする?」

「僕は……」


 こうして、タレムの要請を受けたアベルは、悪魔の儀式《女神復活の儀式》を取り止め、神子から堕天使を払う《神払い》の儀式を行った。

 ……誰にも悟られることなく。

 それが、タレムに警戒するドラクレアや、全知全能の力を持つ、堕天使の目を欺けた最大の要因である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ