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好感度が数字として見えるようになっちゃった

作者: 鳴嶋ゆん

 横断歩道を渡ってる途中で目の前に大型トラックが迫ってくるとか、異世界転移物のファンタジー小説のプロローグではあたりまえの情景でも自分がその立場になるとは思ってもいませんでしたよ。

 もちろん、このままぶつかったら一巻の終わりです、普通は異世界とかいけませんからね。

 なんとかギリギリよけることができたかなって思いましたが、持っていたカバンをトラックがかすめたようで、わたしは跳ね飛ばされました。目の前の歩行者信号に激突……ってところまでは覚えていたのですが、ここはどこですか? 異世界とか来たりしてないよね?


 目を覚ますと天井に蛍光灯が見えますね。知らない天井、わたしは寝ているようです。どうやらここは病院でしょうか。

 ふと横を見ると心配そうなお母さんと目があいました。

「さやか、よかった。気がついたのね」

 ダンプに跳ねられ? かすっただけか……それで病院に運ばれたってところでしょうか。

「あら、気づかれましたか、すぐに先生をお呼びしますね」

 看護師さんが声をかけてくれました。それまでの間にお母さんに状況を聞くと大筋間違ってなかったようです。

 わたしは歩行者信号に頭を打って気絶していたようです。そして暴走トラックはそのままガードレールにぶつかったようです。運転手さんがどうなったかはお母さんも知らないみたい。


 わたしは安田やすださやか、読書が趣味で運動音痴な中学二年生です。

 学校帰りに事故に遭っちゃったみたいです。

 日頃からいろいろどんくさいって言われてるんだけど、まさかこんな目に遭うなんてねぇ。思いもしなかったですよ。

 でも特に痛いところとかないし、何も問題ないよね。


 しばらくするとお医者さんがやって来ました。まだ若い感じがする男性です。あまりかっこよくはなさそうだけどね。

 でも、そのお医者さんの顔を見て、???って感じになりました。

 どうして、おでこに赤く「4」なんて数字を書いてあるんだろう?

 じーっと顔を見てたら、お医者さんに、

「どうしたのかな? わたしの顔に何かついてる?」

 って聞かれたけど、「はい、ついてます」なんて言えないよね。

 この数字はなんだろう? よーく見てると数字は書いてあるんじゃなさそうですね、浮かび上がってるみたいです。

 だって、そのお医者さんは前髪でおでこが少し隠れてるのに数字ははっきりと見えるんだもん。

 あれれ、じーっと見てたら数字が「6」に変わったぞ。何が起こったんでしょう?


「先ほどCTによる検査もしましたが問題はないようです。頭を打っているようですので念のため一晩入院してください」

 お医者さんがお母さんにそう説明してます。問題はないようで、それはそれでよかったんだけど、このお医者さんのおでこの前に数字が見えるのは問題ないのかな?

 でも、このことを口に出して聞いてみるのもはばかられたので内緒にしておくことにしました。

 だって、何か精神的に異常をきたしているなんて思われたら嫌じゃないですか。


 お医者さんはすぐに行ってしまいました。

「それじゃ、パジャマとか着替えを家まで取りに行ってくるけど何かほかにほしいものある?」

 お母さんがそう聞くので、

「んーと、退屈しないように、適当にわたしの部屋から文庫本を三冊くらい持ってきて」

 と注文しておきました。一晩の入院ならそれだけあれば十分でしょう。


 あの数字はいったいなんでしょうね。お医者さんだけに表示されてて、お母さんや看護師さんにはなかったね。

 誰もお医者さんのことを不審そうに見てなかった感じだから、わたしだけに見えたのかな?

 途中で数値が「4」から「6」に変わったのも不思議だよね。

 いろいろ考えてたけど、さっぱり見当もつかないや。


「おトイレ行ってきてもいいですか?」

 病室にまだ看護師さんがいたので聞いてみると、

「問題ないわよ。病室から出て左手のほうに行ってね」

「はーい」


 病院の廊下を歩いていると、入院しているらしいおじさんとすれ違いました。そのおじさんのおでこの前にも赤く「0」の数字があるではないですか。

 お医者さんだけじゃなかった!

 お医者さんと今のおじさんの共通点は……男の人ってことかな?

 ナースステーションのところに女性の看護師さんが数人いましたが、全員数字は表示されてないみたい。

 さっきの仮定で正解? ちょっとサンプルが少なすぎですね。


 病室のベッドでゴロゴロと退屈していると、お母さんがお兄ちゃんといっしょにやってきました。

 なんとお兄ちゃんのおでもにも「70」の数字があるじゃないですか。なんかいきなりの大きな数字ですね。

 でも、男の人限定で数字が見えるって仮説はあってるのかもしれませんね。

「ちょうどまさるが帰ってきてたから、車で送ってきてもらったんだよ」

 お兄ちゃんは大学二年生とずいぶん年齢の離れた兄妹です。地元の大学に自動車で通学しています。

「お兄ちゃんありがとうね」

 わたしが笑顔でお礼を言うと、数字が「71」に変わりました。

 いったいなんだろう? この数字は。


 二人が帰った後、ゆっくり考えてみました。

 知らないおじさんが「0」。わたしを担当したお医者さんが「4」から「6」へ。お兄ちゃんが「70」から「71」へ。

 わたしとその男の人との親密度? うーん、ちょっと違うか。顔をじっと見てたら親密度が急に上がるってのはどうも違うような気がします。

 それならば……わたしへの好感度かな? それならなんとなく説明がつくような気がします。

 顔をじっと見てたら、もしかして気があるんじゃないかと思うかもしれませんよね。それで急に好感度がアップしたと……有り得る話です。

 お兄ちゃんの場合はわたしが笑顔でお礼を言ったから、ちょっとだけ好感度がアップしたと。

 そう考えればなんとなく辻褄つじつまが合うよね。


 そうなるとこの数字の最大は「100」かな? お兄ちゃんとわたしはわりと仲がいいと思うから、きっとそこそこ好感度も高いと思うんだ。

 最大が「100」のうちの「71」なら高い方だよね。最大が「200」とか「1000」とかだとは考えたくありません。

 この数字を上手く使えば、わたしって好感度バツグンになれるんじゃない?

 何をしたら好感度が上がったり下がったりするかが一目瞭然なわけだから。

 もしかして、憧れの田崎優馬たざきゆうまくんのハートもゲットできるかもしれません。

 これは燃えてきましたよ。なんかゲームみたいな気もしますね。


 翌日、午前中に再検査があったけど、当然のように何も問題なし。お母さんが迎えに来てくれるのを待って無事に退院しました。残念ながらお兄ちゃんは大学の講義があるということで、自動車でのお迎えはなしでした。

 お母さんと家までの帰り道にすれ違った男の人の数字はすべて「0」ばかり。知らない人ばかりですから、「0」なのは仕方ないところでしょうね。

 明日、学校に行ってから周りの男の子たちの数字を見るのがちょっと怖いですね。低い数字ばかりだったらどうしよう。

 特に田崎くんの数字が気になるところです。

 ちなみに夜になって、お父さんのおでこを見ると「62」の数字が。お兄ちゃんのほうが高いけど、やはり家族は高めの数字なんですね。


 さて、ドキドキの登校です。

 登校途中に見かける男子の数字が気になってしかたありません。

 他の学年の男の子たちを見ると、一桁から多くても「20」までって感じ。部活もしてないしほぼわたしのことが知られてないせいでしょう。「0」って男の子もそれなりにいますから。

 さすがに同学年となると、それなりに顔くらいは知ってるのでしょう。一度も同じクラスになったことにない子も20~30くらいの数字って感じです。

 そして、ついに同じクラスの男子を発見。あまり口を聞いた記憶のない子ですが「42」の数字が見えました。

 まぁそれなりの好感度はあるって感じかな?


 教室にはいって男子の顔を見回すと、最低が「39」で最高が「58」でした。

 うーん、特に好かれてもいないし、嫌われてもいないってところでしょうか。

 一人くらいお兄ちゃん以上の数字の男の子がいてくれてもいいのになぁと思いましたけど、まぁしかたないよね。


「ねぇねぇ、さやか。ダンプに跳ねられたって聞いたんだけど」

 仲のいい明美あけみがさっそくわたしに近づいてきて聞いてきた。

「ちょっとかすっただけで、かすり傷だけだよ。念のため一日入院させられちゃったけどね」

「大丈夫なのか? ムリするなよ」

 隣の席の秋山あきやまくんがそう言ってくれた。

「ありがとう。でも大丈夫だよ」

 と言ってにっこり笑ったら、数字が「53」から「54」に上がったよ。

 結構、好感度って簡単に上がるんだね。


 そう思ってると、憧れの田崎優馬くんが教室にはいってきました!

 ドキドキしながら数字を見ると「50」……なんて微妙な数字なんでしょう。

 特に好きでもなければ嫌いでもないってのが一目瞭然じゃないのさ。

 もしかして「90」とかいうすごい好感度だったりしたらどうしようなんて考えてたのに。

 やはり現実はそれほど甘くないってことですね。


 田崎くんは右斜め前の席、席に着く瞬間を狙って、「おはよう」って声かけたら、「おはよう」って返してくれた。

 そしてそれだけで、数字が「51」に上がったじゃないですか。

 こういう地道な好感度アップを積み重ねて行きましょう。


 そうは思ってもいざってなるとドキドキしちゃってなかなか好感度アップってできないよねぇ。

 なんて考えて特に何もできないまま一日が終わってしまいました。そして帰り際に田崎くんの数字を見ると「50」に下がってる!

 好感度って何もしないと自然に下がっちゃうものなの?

 それとも、何か好感度を下げるような出来事があったのかな?

 どちらの可能性も考えられますね。

 好感度は常に上げ続けないといけないもののようです。


 それからというものの、せっせと好感度を上げるための日々。

 本当にあれこれいろいろ試してみながら、何をすれば田崎くんの好感度が上がって、あるいは逆に下がっていくのか確認していきました。

 最初は何をするにせよドキドキしてましたぇど、途中から少しだけ慣れたかもしれない。

 なにかしては田崎くんの数字の変化をじっと確認、いろいろ頑張っちゃいましたよ。


 少年マンガの話題で好感度 +1

 テレビのドラマの話題で好感度 -1

 人気のバンドの話題で好感度変化なし

 女性アイドルグループの話題で好感度 +2

 くだらないギャグで好感度 +1

 おやじギャグで好感度 -2

 田崎くんのギャグに大笑いして好感度 +2

 田崎くんの話にせいいっぱい相槌を打ってたら好感度 +1

 ちょっと言葉遣いを変えてみたら好感度 +1

 薄っすらとメイクしてみたら好感度 -1

 前髪を少し短くしてみたら好感度変化なし……たぶん気づいてもらえてない……


 そんな感じで頑張っちゃいましたよ一ヶ月間。

 田崎くんの好感度はなんと「78」。ついに家族の数字を抜きました。

 ちなみに家でもそれなりにお父さんやお兄ちゃんの好感度を上げるように気にしていたところ、お父さんは「62」から「65」へ、お兄ちゃんも「71」から「76」へ上げることに成功しています。

 ふふふ、家族以上の好感度ってのはなかなかたいしたものでしょう。

 これはアタックしちゃっても大丈夫だよね。

 この好感度でふられるって確率は少ないでしょう。


 なんか周りの男子の好感度も軒並み高くなってるのは何故でしょうかね。

 きっと、田崎くんのためにいろいろしたことが他の人にも好印象を与えたんでしょうね。


 田崎くんの好みのシチュエーションはこの一ヶ月でずいぶん理解したつもりです。

 明日の授業が終わってから、帰り間際の田崎くんが一人の時を狙ってアタックしちゃいましょう。


 そんな思いを込めて登校したんですが、田崎くんの顔を見てビックリ!

 好感度が「89」っていったいなんだ?

 昨日わたしが帰るときには「78」だった田崎くんの好感度がいきなりどうして11も上がってるんでしょう……


 びっくりして田崎くんの顔をボーッと見てたら、「おはよう」を言うタイミングを逸してしまった感じ。

 でも、最近は田崎くんってわたしより先に「おはよう」って挨拶してくれてたよね。今日はどうしたんだろう?

 なんかわたしの視線を避けるような感じで席についたまま……

 いったいなにがあったんだろう?


 ちょうど明美が登校して来たので、そのままちょっと引っ張って廊下へ。

 ここじゃまずいかな。そのまま女子トイレまで明美を引っ張り込みます。

「さやか、いきなり朝っぱらから何よ。女子トイレまで拉致してきて」

「昨日、わたしが帰ってからクラスでなんかあった?」


 実は昨日は事故後一ヶ月ってことで、午後早退して検査のために予約してあった病院に行ってたんです。当然のように問題なしってことでしたけどね。

 まぁ実際は変な能力がついてるから問題はあるのかもしれませんが、わたしが内緒にしていたらわかるものじゃありません。


「なんかって……田崎くん関連?」

「どうしてそこで田崎くんの名前が出てくるのよ!」

「えっ? 無自覚だったりするの?

 このところずっと、さやかが田崎くんにせっせとアタックしてるのって丸わかりなんだけど」

「ほわっ!」

 丸わかり……せっせと田崎くんの好感度をあげようとしてたのが皆に丸わかりだったのか……

 まったく周りのこと気にしてなかったよ。


「気づいてないのは本人たちだけだったようねぇ。

 なんか昨日の帰り間際に田崎くんは男子たちに囲まれて、ひやかされてたみたいだったよ。

 ついに田崎くん本人にも、さやかの気持ちが伝わってしまったようだね。

 で、なんかあったの?」

 明美はニヤニヤしながら昨日のことを教えてくれた。

 ぐぬぬ、そんな事になっていようとは……なんともタイミングの悪い……

「何もありません!」

 もしかして他の男子の好感度が上がってたのって、せっせと田崎くんにアタックしてるわたしと、それに気づかない田崎くんを見て暖かく見守ってくれてる気持ちが好感度の数字になって現れてたとか……なんとなくそんな気がします。


 どうしよう、どうしよう……

 でも、わたしの気持ちがばれて好感度がぐーんと上がってるってことは、その気持ちを悪くは思ってないってことだよね。

 これはどっちかと言うとチャンスと考えてもいいんじゃないかな?


 もうそれからは一日中授業は上の空です。

 ボーッとしてても表面上真面目な顔をしてるのは昔から得意なので特に問題なくその日一日を乗り越えることができましたけどね。


 さぁ、アタックすべきか、それともしばらく様子を見るべきか。

 田崎くんは今日一度もこちらの方を振り向いてくれません。きっと何か気恥ずかしいものがあるんでしょう。その気持ちはよくわかります。

 立場が逆だったらきっとわたしもそんな感じになってることでしょう。


 そう思うと皆がいる前で普通に話しかけることもできません。

 これはとてもよくないですね……

 きっとこのまま放置していたら、せっかくここまで上がった好感度が徐々に下がってしまう、そんな気がします。

 やはり当初の計画通りに今日、田崎くんにアタックしたほうがいいでしょう。たった今そう決めました。


 校舎の影で田崎くんが出てくるのをじっと待つ……ひたすら待つ……それでも待つ……ちょっと遅いんじゃない? でも待つ……やっと田崎くんが出てきました。

 今日も一人です。

 田崎くんが一人で帰る確率はほぼ八割。週に四日は一人で帰ってますので高確率なんです。


 覚悟を決めて、わたしは田崎くんのところへ駆け寄ります。

「田崎くん!」

 わたしが田崎くんに声をかけて、田崎くんがこちらの方を向くと、

「安田さん、危ない!」

 え?


 何か頭に大きな衝撃があり、わたしは意識を失ってしまったようです。


 わたしが目を覚ますと眼の前に田崎くんの顔がありました。

「ここは……」

 どうやら保健室のようです。いったいなにがあったんでしょう?

「あ、気がついたか。よかった。

 ここは保健室」

「なにがあったんだろう?」

「安田さんがボクの方へ走ってきたところへ、タイミング悪くサッカーボールが飛んできて、安田さんの頭に……」

 そんなことがあったんだね。なんてタイミングなんだろうね。

 それにしても一ヶ月前のトラックやた、今日のサッカーボールやら……なんかわたしってトラブルに巻き込まれまくってない?

 変なトラブル体質になってたりしたら困るなぁ。


「あれ、見えない?」

 そこまで話してて急に気づいたよ。

 田崎くんの顔に数字が見えないよ?

 一ヶ月前の事故で身につけた能力が、サッカーボールが当たったショックで消えてしまったのかも……


「え、どうしたの? 目がおかしかったりするの?」

 田崎くんが心配して聞いてきてくれた。でも、本当のことは言えないね。

「うーん、なんでもない。目はちゃんと見えてるから安心してね」

「ふぅ、ビックリさせるなよ」


「あら、気がついたの? 大丈夫だった? どこか変な感じはない?」

 保健室の神谷かみや先生が部屋に戻ってきたようだ。

「はい、大丈夫みたいです」

「頭を打ったみたいだけど、どこか痛いところとかない?」

 そう言われて頭の後ろを触ってみると、大きなコブができてるのがわかりました。

「コブが……」

「コブができてるくらいならいいんだけど、何か不安があったら病院に行ってみてね。

 特に問題ないようなら帰ってもいいわ。

 キミはクラスメートって言ってたよね。悪いけど家まで送って行ってあげて」

「はい、わかりました」

 神谷先生の言葉に田崎くんはそう答えます。

 やったね、田崎くんに送ってもらえるみたいだよ。


 好感度が見える能力はなくなっちゃったけど、もうここまで来たらそんな能力なんて不要だよね。

 あとはタイミングよく田崎くんに告白するだけ。


 田崎くんと並んでの帰り道。

 ぎくしゃくしてたのが嘘みたいにいろいろ話してくれる。

 田崎くんの目の前で事故なんてことがあったけど、それがいい感じに作用してくれたみたいだね。


 よし、言うぞ。

 田崎くんに告白しちゃうんだからね。

 そう思うんだけど、いざってなるとなかなか最初の一言が言い出せません。

 よし、頭の中で十数えたら思い切って言おう。

 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1……


「田崎くん!」

 なんか緊張して声が裏返っちゃったよ。すっごく緊張してる……

「はい!」

 なんか田崎くんも返事が変だね。わたしの緊張が感染ってしまったのかも。

「今日は送ってくれてありがとう。そして、なんか巻き込んでしまってごめんなさい」

「あ、いや……」

 道端で向かい合って、二人して直立不動で話してる男女ってどうなんだろうね。


「実は今日は田崎くんにお話したいことがあって、待ち構えてたんです。

 そしたらあんなことになっちゃって……

 田崎くんのことが大好きです。わたしとお付き合いしてください」

 よし言ったぞ、ちゃんと言ったぞ、噛まなかったぞ。

 あーすっごくわたしの顔が真っ赤になってるのがわかる。

 すっごく恥ずかしいぞ。恥ずかしくて恥ずかしくてたまらないぞ。

 田崎くんがわたしの顔をじっと見てる。

 なんて返事をしてくれるんだろう?

 ダメかな? どうかな?

 今はもう見えないけど、あれだけ好感度があったんだから大丈夫だよね……今の告白で好感度の数字がどういうふうに変わったんだろう?

 すっごく怖いよ……


「ありがとう……ボクでよかったら」


 やったよ!

 わたしの聞き違えじゃないよね。

 今のはOKってことだよね。


 ありがとう。今はなくなってしまった好感度を見ることができる能力よ。

 あの能力がなかったら、きっとこの日は来なかったと思うから。

 もうなくなってしまったこの能力のことは、話したとしても誰も信じてくれないでしょうね。

 もしかしたら、ただの幻だったのかもしれません。


 でもやっと実ったこの恋は本物でしょう。

 横で恥ずかしげに微笑んでくれてる田崎くんがいます。

 これからはもう数字が見えないから好感度の変化はわかりません。

 いろいろやらかして好感度を下げることがあるかもしれませんね。

 でも、この一ヶ月のおかげで田崎くんのことがずいぶん理解できたと思います。

 きっとなんとかなる、そんな気がしますよ。


 わたしの胸のドキドキが止まりません。

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[良い点] 面白かったです!ゲーム感覚で、でも本気で好きなひとにしっかりアピールしていく肉食系主人公がとても好き。ポイントが見える、というのは一種のチートスキルですが、何をしたら上がるかはわからずいろ…
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