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つくもの国  作者: AAキャンセル
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お使い

やっとこさ第一話です。

応接室を出てノコギリガザミ曰く局長より伝達があるらしい。

「次は本部局かあっちにこっちに…忙しいな、今日は」

『人気者はつらいナ、ハリウッドデビューも夢じゃないゼ?』

「裏方で働いてんのにどうやってハリウッドに出るんだよ?」

『裏の顔のジョージ・クルーニー位いけるんじゃネーカ?』

「俺は政治家嫌いだから無理だな」

『じゃああきらめるこったナ』

「もとからするつもりなんかないっての」

そんなこんな雷雲と話している間に本部局の局長室にたどり着いた。

扉をノックして部屋に入る

「失礼しますミズヒキガニです。」

眉間にしわのよった黒いスーツの男がニヤリと笑う

「ノコギリガザミはきちんと言伝を伝えてあったようでよかったよ。あいつはMOO以外のことに対しては興味を全く示さない奴だからな」

この男はクラブズ日本支局局長コウナガカムリだ

「それで今日はどのようなご用件で?ノコギリガザミの陰口を言う為にわざわざ呼び出したわけではないでしょう?」

「くくく、まあそれでもよかったんだが。

それはまた飯時の話の肴としてとっておこう。

さて、お前に紹介した酒場で今日依頼者が来るらしい。その依頼内容をお前が聞いて俺に報告してほしい。

パン君でもできるようなお使いだ、簡単だろ?」

「それ俺じゃないとダメなんですか?あの酒場には俺以外というかほとんどクラブズ構成員が職員じゃないですか」

「MOOを連れた初めてのお使いにしてはちょうどいいだろ?」

「ええ…まあ…そういうことなら引き受けます」

「というか上司の命令は普通〈はい〉か〈YES〉だろ?」

「申し訳ありませんでした!コウナガカムリ支部長様!

なにぶんクラブズが最初の職場でまだ二年ほどしかたっていなかったもので!社会の常識に欠けていましたどうぞお許しください!」

「お前帰ってきたら寮舎内のトイレ掃除今日中にやっておけよ」

「え゛!そんな小学生の罰当番じゃないんですから!!そもそも清掃員は雇ってあるじゃないですか…」

「今から臨時休暇を清掃職員に与えてやるから頑張れよ。それと、上司の命令にはなんだったか?」

「…ヤー…」

「よろしい。下がっていいぞ」

くっそ、すげえ笑ってやがる

『ナハハハハハハ!!!お前バカダロ!損な性格ダナア!!』

「テメエ…便所にこびりついた糞やら固まった小便お前で削り取ってやるからな」

『オーケーオーケー、俺が悪カッタ。お前と俺は親友で相棒ダロ?』

「今日会ったばっかりでほぼ初対面に等しいだろうが!」

『oh…ジェフリー・ダーマーですらこんなヒデエことしないゼ?それにオマエもそんな汚ねえ武器触りたくもないダロ?』

「んなもん知るか。そもそも綺麗に拭いたら一緒だろ?」

『おお…神ヨこのクソ野郎ニ天罰を与えてクレ』

「これから糞野郎になるのはお前だけどな」

『ハア…せめて帰ってくるときは忘れててクレ』

「覚えとくから安心して心の準備しとけ」

それじゃあ仕事しに行くか。


クラブズは裏では反社会組織だが表では公共職業安定所。

要するにハローワークの紹介所だ。そこで紹介された酒場で俺はバーテンとして働いている。

仕事をしていると問題の依頼人がやってきたようだ。

写真の通り少しオドオドした男の様だ。

依頼人の前に立ち対応する。

「ご注文は何にいたしますか?」

見た目の通り自信なさげに答える。

「く…クラブズカクテルでお願いします」

「かしこまりました。では、奥へお通し致します」

カウンター左側の扉の奥へ通す。

男は周りをキョロキョロと落ち着かない様子で通される。

扉の向こうは一方通行で両の壁際にいくつかの扉が等間隔で付いている。

壁際の入ってきた扉から最も近い部屋へ案内する。

扉は分厚く頑丈にできていて部屋は殺風景で防音の壁と家具はほとんどなくスチールチェストが扉側の隅に一つ、あとは同じく金属製のデスクとそれを挟むようにパイプ椅子がふたつだけだ。

奥の椅子へ依頼主の男を座らせ俺を含めてもう一人の男が入る。

向かい側の椅子へ座りもう一人の男がチェスト側に立ち白紙の紙とボールペンを渡してくる。

「まずは名前と免許証なければ保険証でも構わない。名前はこの紙の一番上に振り仮名も付けて書いてくれそれと名前の横に拇印を押してくれ。それと住所と電話番号もな」

「わ…分かりました。」

男はオドオドと財布から免許証を差し出す。

「これのコピーと確認頼んだ。」

後ろにいる男に免許証を渡し、男は扉の鍵を開けて外の太った男と交代で出ていく。

「オーケー。それで?まずあんたは誰からクラブズの話を聞いた?」

男は用紙に名前やその他諸々書き込みながら答える。

「ある情報屋から聞いたんだ。MOO関連の依頼ならなんだって引き受けてくれるって」

「何でもじゃねえよ。割に合わない仕事はしないし依頼を受けるかどうかも俺じゃなくて上が決めることだ。で?その情報屋の名前は?」

険しい顔つきで男が答える

「それは…言えない…」

「おいおい。言ってもらわねえとどこの経由で俺たちの話が出てるか分からねえんじゃ安心して仕事が出来ねえじゃねえか」

「でもこういうことは言うわけにはいかないだろ!情報をくれた人にも失礼だ!!」

腰の後ろ側に挿した雷雲を抜いて依頼主の喉に当てる。

乾いた声で男が悲鳴を上げた。

「ヒィッ!」

ドスの入った声で相手を脅す。

「いいから言え、うちの組織も知られてるんだ。これ以上茶番を続けるってんなら口封じさせてもらうぜ」

そこで、ありえないことが起こった。小学生でも知っているMOOの常識。

それが、今覆された!

『全然ダメダナ。そこじゃスパッと殺せないゼ?動脈切るんなラもっと側面ダ。んでもって角度もだめダナ。横からジャなくテ下から削ぐ様にやるんダ』

「うるせえ、今はこっちと話してんだ。ありがたいご高説ならあとにしろ」

男が困惑する。

「は?」

「は?じゃねえ!舐めた口きいてると本当にテメエの首ぶった切っちまうぞ!」

男は慌てて訂正する。

「違う!今誰がしゃべった!?後ろの人じゃないだろ!!?」

恐怖で幻聴でも聞こえてるのか?そう思った時。

『俺以外居ないダロウ?お前やっぱり頭弱いんじゃネエカ?』

俺も男も驚愕し目を丸くした。

「やっぱり!あなたのナイフだ!MOOは他者とはコントクトをとれないはずなのに!」

「どうなってやがる!ありえない!なんでおまえにも聞こえてやがる!?その場しのぎに適当なこと抜かしてるとただじゃ置かねえぞ!」

そこで後ろの太った男が笑い出す。

「っぷ!くくく!!あははははは!!!だぁよなぁ!やっぱりそうゆう反応するよぉなぁ!」

『ふふふ、反応が初々しくてかわええなぁ』

酔った男の間延びした声と妖艶な女の声が聞こえるここには女は居ないはずなのに!

「どうなってやがる!なんか知ってるなら説明しろ!」

まだ笑いが堪えられないのか肩で息をしながら答える。

「ふぅー、ああ!久々にぃこんなに笑ったぜぇ。もうわかってんだろぉ?」

『せやなあ、きちんとうちの声も聞こえとるようやしねぇ』

「なんでだ!?なんで俺やお前のMOOの声が他者にも聞こえる!!?」

「そりゃあ俺たちのMOOが特殊なんだぁよなぁ。よくは知らねえけど詳しくはぁ開発局の連中にぃ聞いて見りゃぁ分かるんじゃぁねえのぉ?」

『うちらにも人とおんなじように自分らのことでもわからんことは有るからねえ』

「ちくしょう…もういい。後でノコギリガザミに聞いてくるあいつなら小一時間ほど長々と語ってくれるだろ」

『詳しくハ俺も知らねえしナア』

デブが頷いて肯定する。

「それがぁいいぜぇ」

依頼主の男に向き、聞き直す。

「それで情報屋は誰だ?一応もう言っといてやるが。うちの組織を紹介する奴は大体がうちの職員だ」

男は驚いたようなホッとしたような顔をして向き直る。

「なんだあ、そういうことなら早く言ってくださいよ!」

「いちいち説明しなくても答えてくれりゃあ楽に話が進むだろうが。いいからさっさと言えよ」

さっきまでの恐怖の顔が和らぎ答える。

「モズクショイさんです」

「ああ、確か裏町の居酒屋でよくカニカマ食ってるやつな。あんたよくあんなチンピラの巣窟みたいなところに行けたなあ性格的に無理だろ」

場所を思い出したのか身震いしながら答える。

「怖かったですよ!でも、彼女のためだと思って勇気を出して行ってきたんです!お願いします!彼女を救い出してきてください!」

「わかったわかった、そう興奮するな。まずは何故依頼しに来たのかを教えてくれ。」

落ち着きを取り戻したのかゆっくりと話し出す。

「まず彼女というのは私のMOOのことです。オルゴールなのですが、彼女が僕を励まそうと『もっと自信をもって!あなたはもっと自由に、なんだってやろうと思えばできちゃうんだから!』って言ってくれたんだ。そしたら次の日、国の役人が来て(あなたのMOOから犯罪的行動を支援したことが検出されました)と言って彼女を連れ行ってしまったんだ!」

用紙に事柄を描きながら依頼内容を聞く。

「だから!どうにか彼女を取り戻してくれ!金ならいくらでも出す!彼女は僕の…僕の大切な親友でありもう家族なんだ!!」

俺はなだめるように声をかける。

「だから落ち着け。依頼を引き受けるかどうかは上が決める。俺の独断で決められることじゃない。また明日この時間に来てくれ。まあせいぜい良い結果を期待しときな、辛気臭え顔してるよりずっといい」

男は少し気が楽になったのか肩の力が抜けていく。

「お願いしますよ。本当にお願いします。」

「はいはい。分かったよダメだったとしても何とか説得してみるよ」

男の顔は明るくなってゆく。

「有難うございます!ありが…」

「わかったから、さっさと出るぞ。お前まだ飲んでねえだろ?」

男は驚き尋ねる。

「え!?何か飲まされるんですか!?」

まったくあきれた野郎だ

「何ってお前、頼んだだろうが」

「頼んだって…依頼をですか?」

「そっちじゃねえよ。頼んだろ?」

俺はにやりと笑って答える。

「クラブズカクテル」


依頼主の男を連れてバーカウンターに戻る。

そして、きれいな赤と白が半々のカクテルが男の机に置かれた。


男にカクテルを出した後すぐに酒場を出て本部に向かう。

『いいのカ?下手に希望を持たせると絶望の淵に叩き落されるゾ。』

雷雲にしてはまじめなことを聞くな。

「お前がそんなこと考えるなんて思いもよらなかったよ。

…まあ、だめかもしれないとウジウジしてるよりずっといいさ」

『ヘエ、オマエ案外イイヤツなんダナ』

「そうでもないさ」


足早に局長室へと急ぐ。

局長室の扉をたたき中へ入る。

「失礼しますミズヒキガニです。依頼内容の報告に来ました」

朝と同じように眉間にしわを寄せ座っていた。

「思ったより早かったな、それで?報告書を出しに来たんだろ?」

支部長はは手を出して手招きする。

俺はその手に報告書類を渡す。

「これです。なるべく今すぐにでも答えを聞かせてください。」

手をひらひらとさせながら気だるげに封筒を開ける。

「まあそう急かすな、今読む」

しばらくすると眉間のしわがより深くなる。

「ふん…国からのMOOの奪還か…」

「よし、ミズヒキガニこの依頼にはお前も参加しろ」

ん?ふつうは他の支部局や幹部との話し合いのもと依頼を受けるかを決めるはずだ。

「え?幹部会などはしないんですか?」

彼は肩をすくめて言う。

「すぐに答えろといったのはお前だろう?なに構わんすべての責任は俺がとってやる」

「そ、即答ですか!?そして俺も参加するんですか!!?」

「そうだ!明日お前を含めた依頼に参加する構成員を集めて作戦会議を行う。依頼人に伝えろ。お使いご苦労下がっていいぞ」

思わず放心状態になる。

「は、はい。失礼しました」

俺は急なこと過ぎて頭が追い付かないまま局長室を後にした。


『いいのか?そんなに格好つけて?』

「いいんだよたまには」

『まだ忘れられないか?』

「そんなんじゃないさ」

『なら…いいんだけどな』


心ここにあらずで局長室を出たが、そこでふと思い出した。

「あ、ノコギリガザミに聞きたいことがあったな」

『MOOの他者とのコンタクトについてカ?』

「それだよ、あいつに聞けば大体わかるだろ」

『そうかもナ』

「んだよその意味深な口ぶりは?」

『いんヤ、特に意味はないゼ?』


電話でノコギリガザミに連絡を取り応接室で待つこと数分。

扉のノックが聞こえると同時にいつものよれた髪の男が入る。

「おう、どうした?お前からおれに話が聞きたいなんて言ってくるとは珍しいな」

「ああ、ちょっと気になることがあってな。」

ノコギリガザミの眉を片方あげて聞いてくる。

「なんだ?MOOのことなら大体答えてやるよ」

「そのMOOのことなんだが、うちの組織で扱っているMOOは他者とのコンタクトが取れるのは何故だ?」

それを聞くと彼は目を見開きすぐにニヤッと笑った。

「ははは!その様子だと気づいたみたいだな。いいぜ?教えてやるよ」

嫌な予感がする…

「まず国のMOOとクラブズのMOOには当然ながら違いがある詳しく説明するとだな…」


二時間後…

「わかった!もうわかった!!十分だ!!!要するに国のMOOにはリミッターが付けられていてクラブズにはそれを外してあるってことだな!」

ノコギリガザミはそれは楽しそうに答える。

「まあ簡単に言うとそんな感じだ。ほかにもいくつか理由はあるんだが…」

まだあるのか…

「もういい!これだけわかれば十分だ!!」

『オマエの話は長スギル!モット短く簡潔に話が出来ねえのカヨ!!?』

残念そうに声のトーンが落ちる。

「そうか?もう少し詳しく知っておいたほうがMOOと関わるにあたって有益だと思うんだが?」

ノコギリガザミが言い終わるやいなや言葉をつづける声がいた。

『そうよ!私たちと関わるにおいて相棒のことをより正確に認識する必要があるわ!!』

「やっぱりそうだよなあ!お前もそう思うか!!じゃあもう少し深い所に踏み込んで説明してや…」

「もう勘弁してくれ!」

俺はすぐさま話が始まる前に応接室を逃げ出した。


「あ゛ー、疲れたあいつはMOOの話になると止まらなくなる」

雷雲もさすがに疲れたのか声に力がない。

『アイツいつもああなのカ?』

「そうだよ、あいつはMOOのことでなら丸一日でも話し続けるぞ」

『もう疲レタ早く休みたイ…』

「それは痛く同感だ。てかお前らって疲れるのか?」

『逆に聞くガあれだけ話し込まれてオマエは精神的に疲れねえのカヨ』

「愚問だったなスマン…」

『分かればいいってことヨ。それより早く休もうゼ』

「ああ、だから早く終わらせないとな」

『他にやる事なんかあったのかヨ?』

「あっただろ?」

『ン?なにがあっタ?』

ニヤリと笑って答える

「寮舎のトイレ掃除」

『オマエ!…覚えてやがったのカ!?』

「むしろこのためにあいつの話を我慢して聞いていたといっても過言じゃねえぞ!」

『オマエ!タチが悪りいゾ!』

「さあ楽しい楽しいトイレ掃除だぞう!っはっはっはっはっは!!!」


トイレにて

「あーこりゃブラシじゃ無理だな。よし、お前の出番だ!」

『オイ!考え直セ!っナ!?誰が糞や小便にまみれたナイフを使うと思ってんダ!!?オマエなんだぞ!!嫌ダロ?っナ!!!?』

「きれいに洗えば一緒だろう?ほーらいくぞー」

「そういう問題じゃねえダロ!衛生観念の問題だ!!おい!聞け!!やめろ!!!やめてくれえええ!!!」



また一週間後にお会いしましょう。

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