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アスティカ王国物語  作者: 白雨
8/12

Recollections

 ──無事、恐れていた事態も起きず、パーティーを終えることができた。

 レオンと家族の隔心については平行線を辿ったけど、それは私にはどうにもできない。こういう問題は、他人が口を出すと拗れるものだ。

 せいぜい私に出来ることは、三人とレオンの仲を取り持つことくらいかな。

 それはそうと。レオンがどうしてあんなに反発するのか分からない。

 今の段階では何も断定できる資料がないから、一方的にどちらが悪い、と決めつけられるものでもない。

 もし徹底的に原因を解明するのなら、四人全員から話を聞くことが必要もなるだろう。


 ……とまあ、とにかく。

 パーティーが終わってすぐに、レオンが私に「中庭に行こうよ」と誘ってきたので、今、私たちは二人っきりで、だだっ広い王宮の中庭にいる。

 ただ、会話をするというよりは、レオンが話して、私が聞き役に徹しているのだけれど。


「それでね、その時は十二歳だったんだけど…」


 話題は主に、レオンのこと。

 子供の頃に好きだった事とか、今の趣味とか。

 私は、相づちを打ったり短い返事をするだけだけれど、それでも楽しかった。

 私はそんなに話すのが得意ではないから、レオンの話を聞いているだけで、充分に楽しい。

 嬉しそうなレオンを見るのも好きだし、彼の子供時代のことを知りたいとも思う。

 レオンはレオンで、気分が高まっているのか頬も赤いし、楽しそうだし。

 家族の話題は一切出ない。私に、レオンが言いたくないのを無理矢理聞き出す趣味はないから、あえて聞こうとは思わないが。


「その時に兎を撃ったのが、初めてした狩りだったんだ。銃を撃ったときの反動が、思っていたよりも強かったのが印象的だよ」

「その時から、王宮の外に出て遊ぶのが好きだったの?」

「んー……もっと前からだよ。初めて王宮を出たのは七歳の時だから、それから」

「行き先は? 森?」

「いや、町。ここから森までは距離がありすぎるし、子供の頃は森の存在すら知らなかったから」

「楽しかった?」

「うん! いろんなところに行けたし、いろんな人とお話できたから。

 それからも、ちょくちょくお城を抜け出して、町に行ってたんだー」


 レオンの反応が、小さい子を相手にしているみたいだなと思う。

 どうしてそう思うのかと改めて考えてみれば、すぐに思い当たった。

 外見は美形の長身なのに、笑顔が小さい子のようなんだ。


「そういうの、わくわくするね。冒険みたいで」

「あ、フェリネも冒険とか、探検とか、好き?」


 僕は好きなんだよ、と報告してくる。屈託ない笑みを浮かべつつ。

 そうだよね。幼い頃って、冒険とかそーいうのワクワクするよね。男子の場合は大人になってもそうなのかもしれないけど。


「森の中の散歩を探検だとするのなら、好きだよ。毎日、新たな発見があるからね」

「森って、『精霊の森』のこと?」

「うん。……ていうか、『精霊の森』からあんま出たことないよ。出ても、せいぜい近くにある町に出掛けるくらいで」


 だから噂にも疎いし、物を知らない。

 王宮の実物を見たのはこれが初めてだし、活気がある市場や落ち着いた町並みも、今日ここに来るときに見たのが初めて。

 貴族や王族のことについての情報源は、書物だ。絵本もあるけど。

 その数少ない絵本の中に出てきた王子様のイメージに、レオンがぴったりだったから、精霊が『おうじさま』って呼んだときにも何ら違和感なかっただけで…。


「……王子様に憧れてたとか、死んでも言えない…」

「ん? 何か言った、フェリネ?」


 過去の自分が恥ずかしいやら黒歴史を思い出すやらで、落ち込み、ぶつぶつとボヤく。

 突然俯いた私を、どうしたのかと、下から覗き込んでくるレオン。

 何でもないよ、と力無く答えようとして、ふと気付いた。


 ──精霊たちが、騒いでいる。


『来るー』

『くる? たいき?』

『ようい、急ぐの』

『お任せあれ、なの!』


 ざわざわと情報を伝達し合う彼ら。

 突如顔を上げて視線をさまよわせ始めた私に、一瞬訝しげな表情をするレオン。

 次の瞬間には、私が精霊と話をできると思い出したのか、合点のいった表情になった。


「あのね…」


 精霊たちが騒いでいるの。

 そう、説明をしようと、口を開いた、ちょうどその時だった。



 ──パンッ


 乾いた音がしたと同時に、私の腕に鋭い痛みが走った。



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