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アスティカ王国物語  作者: 白雨
10/12

The supposition


 それからの、周りの行動は早かった。


 私たちは駆けつけてきた近衛の人たちに保護され、診察を受けた。


 質問内容は、怪我をしていないか(服に付いた血は隠し通した。頑張った!)とか、憔悴してはいないかとか。


 ──診察が終わって自室に戻ろうとすると、近衛の人に止められた。


「何ですか?」

「犯人についての報告がもうすぐあがってきますけど、聞かなくてよろしいのですか?」

「あー……聞きたい、です」


 精霊たちに聞くから別に良いです、とは言えず、その場に留まることにした。

 周りは近衛隊の人ばかり。私を守るように囲んで立っていることから、おそらく、先ほどみたいなことを警戒しているのだろうと予想できた。


「(あの時発砲した犯人が、今回の事件の主犯ではないのかな?)」


 ていうか、そもそも、レオンと私以外の人たちは、今回の事件とレオンの失踪事件を関連付けてるのだろうか? 私は、レオンから、失踪事件の詳しい経緯を聞いているから、自然と関連付けられたけど。


 ……いや、別物として考えているだろうなー。

 レオンの証言無しには、失踪事件と今回の発砲事件を結び付けるのは難しい。けれど、レオンが私以外の人に進んで話すとは到底思えない。

 ……。

 二つの事件が別物なら良いけど──いや、それだと主犯が二人以上いることになるから、余計に時間がかかるんじゃ?──いずれにせよ、このままだと、失踪事件の方は解決しないだろう。

 

「(レオンに重傷負わせといて、のうのうと生き延びるとか…許すまじ)」


 精霊に諜報活動頼んで、真相を明るみに出すか? ──いや、私一人の証言では上を動かすことはできないよね。

 じゃあ、真相を掴んだところで闇討ち決行でもしようかな…。精霊たちには退去してもらって。 ──あ。でもこれって、私が殺人犯になってないか? さすがに法を犯すのはマズい。それはしたくない…。


 そこまで考えてから、ふと思った。


 ──あれ? レオンの失踪事件って、レオンが勝手に失踪したことになってるんじゃないか? と。


「(事件にすら、なっていないってこと!?)」


 ええっと、私にできることは……。

 まず、レオンを説得して、失踪したときの全容を話させて…それから、──泥沼にはまりそうな思考は、突然開いた扉から入ってきた、一人の騎士によって中断された。

 彼は、入室の挨拶も早々に、この場の指揮を取っていた人物──すべての情報がその人に集まっていたことから、たぶん近衛隊隊長さん──へと、足早に駆け寄った。


「──…今回の発砲事件の糸を引いていた人物は──」


 そこまではなんとか聞き取れたんだけど、そこからはグッと声の大きさを落としたようで、何も聞き取れなかった。

 そのまま彼らを凝視していると、近衛隊隊長の表情が強ばった。

 ただ、さすがというか、その変化は一瞬の出来事だったので、話の内容を推測するには至らなかったが…。


『はっぽーじけんっ、ジハク』

『れおん、かいけつー!』

『はっぽう?』

『フェリネ傷ついたの…』

『フェリネ、大丈夫ぅ?』


 ……。

 精霊の声が聞けてよかったわ、ほんと。


「大丈夫、ありがと」


 心配してくれた精霊(発砲事件を知らなかったのだと思われる)に小声でそう返してから、再び思案する。


 精霊たちの話から分かったこと、その一。レオンの失踪事件と、今回の発砲事件が同時に解決したということ。

 その二。今回発砲した犯人が、失踪事件も自白したということ。


 ……何でこんなに分かるかって?

 伊達に、生まれてこのかた、毎日精霊と意志疎通を図ってきたわけじゃないからね!

 精霊のもたらしてくれる少ない情報から、彼らの言いたいことを類推するのは慣れてるよ。

 …まあ、あくまでも予測だから、読み間違えているかもしれないけれどね。



「(……レオンのところ行ってこようかな)」


 隊長が報告を受け始めてから、周りの近衛さんたちの雰囲気が殺伐さつばつとしてきているので、癒しが欲しいんです。

 じゃないと心病むかも?


 自己判断で、そう断定したフェリネは、レオンと話すべく立ち上がったのだった。





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