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ホーリィ・キャバリェ

「団長、昨夜、皇帝陛下に呼ばれたと言う事は、任務ですか?」

日はまだ登りかけ。白い制服を着た一人の騎士が、《団長》と呼ばれる、同じく白い制服の若い騎士に話し掛ける。

「解放の剣……彼等の掃討が大まかな概要だ、 猊下が我々に助力を求めたらしくてな」

彼は応える。姫が人質では、皇帝陛下であれ逆らえない。その下である彼等が枢機卿に逆らうも、禁句〈タブー〉であった。

表に出る。

途中で、濃紺の軍服を着た軍人に《団長》は呼び止められる。

「枢機卿の部隊を貶めるマネをすれば、どうなるかわかりますよね? 聖騎士団長、オーウェン・ボルディオン殿」

枢機卿の右腕のレーゼル。

「変な気を起こさない事を、期待してますよ」

卑しさのこもった口元から言葉が出る。レーゼルが通り過ぎた後、オーウェンは、壁を殴りつけた。


朝か。ルインはベッドから出て、着替える。学生服のままで寝てしまったか。ひとまずはベッドの脇にたたまれていた物に袖を通す。そして、部屋を出た。まだ瞼が完全に開かない。漂うように歩みを進めるルイン。

女性とぶつかりそうになる。なんとかこちらが尻餅をついたお陰で、相手はこけずに済んだか。

「あの、大丈夫ですか…?」

歳はルインより二つは上か。差し伸べられた手を取り、ルインは立ち上がる。シックなドレスを纏い、髪は束ねている。

「すいません、寝惚けてて……」

ルインは尋ねる。

「大丈夫ですよ、洗面所、個室に用意されてないんですよね」

ルインは女性の案内で御手洗に向かった。立ち振る舞いはどこか上品さを伺わせ、見た限りでは左翼とは程遠い雰囲気だった。

案内された洗面所で軽く顔を洗い、目を醒まさせる。

そして、食堂へ向かった。

やはり朝は辛い。ルインにとって、いつも思う軽い悩みだった。

食堂に入り、テーブルの上に乗せられたバスケットのパンに齧り付く。急ぎで喰らっているため、まるで獣のようだ。

隣の少女が、呆れたようにサラダボウルにフォークを立てている。

「ルイン君、喉に詰まるわよ」

彼女は昨日の昼頃、アルグレスに乗っていた少女か。ルインはコップの水を流し込み、意識をそちらに向けた。

「お前は……」

「ほとんど初対面の相手にお前はないじゃない?ソニア、ソニア・ボルディオンよ」

髪は肩にかかる程度か。それに華奢な体つき。ルインと同程度には、まだ幼さが少し残っている。

「ン……そういえば、この組織について詳しく聴いていなかった……教えてくれるかな」

目が覚めたので、気になっていた疑問をソニアに尋ねる余裕が出来た。

「わかった」


「創設者はディラン・ハウグリス、現在のリーダーはその息子のリーテ君」

「リーテ?あの士官の制服羽織ってた…」

「そう。表向きは皇帝支配体勢の崩壊が目的とされてるけど、本質は皇帝による支配の奪還、ルイン君、わかるよね?」

さすがに失敬だとルインは少し腹を立てる。

「真逆じゃないのか?それだと」

「ン、創設者のディランさんが、枢機卿による支配体制に勘づいて、脱走したのよ。この戦艦、エッケザックスと一緒にね」

枢機卿。皇帝が悪政を行っていると話題にはなっていたが、その大元は枢機卿だったか。

「色々な訳あって、皇帝も枢機卿の言いなりらしいわ、直下の兵団も全て実権を握られているそうだし」

つまり、この先に皇帝に仕える兵と戦うこととなるのか。少し不安になる。

「概要はこんな感じ、わかったかな」

荒方の戦う理由は分かった。礼を言い、その場を去る。


独房。金髪の少年と眼鏡を掛けた小柄な少年がそれぞれの鉄格子の中で向かい合い、項垂れている。

「なんで敵やっつけたのに牢屋入れられなきゃならないのよ、おい」

見張りを勤めるブレイドにヘルムが問う。

「手柄とはいえ、勝手に逃げたんだ、心配しなくても、無理矢理街に下ろしてやるさ」

呆れ果てた様子でブレイドは返す。

「降りないね、こんな面白そうな事むざむざ捨ててたまりますかよ」

鉄格子にしがみつきヘルムは怒鳴る。

「朝食の時間だ、持ってきてやる」


「あぁ、いた」

ルインが呼び止められる。リーテだった。そういえばまだ話が出来ていなかった事をルインは思い出す。

「そういえば話せていなかったが、何の話を?」ルインが訊ねる。

「ルインさんの出生とか、そういうのかな……補助装備を切り離して戦ってたんだから普通の産まれとは思えなくてさ」

その事か。ルインは聴かれると大体分かっていた、そんな気がした。


「団長、今、敵は何処にいると?」

聖騎士団の一人が、オーウェンに訊ねる。前回の戦闘からさして時間は経ってないはず、そこまで移動できていると踏む必要性は皆無だった。

「この小型艇で、全滅した第七魔艇団の通信が途絶えた地点に近づく。帝国が目的地ならば、そのうち遭遇するはずだ」

オーウェンが返す。

「そういえば団長、家族は居るので……」

「今は目の前に集中しろ、そういう話をして生き残った奴はいない、そんなジンクスだ」

すかさずオーウェンが静止する。

朝の九時。騎士達はいずれ来る、英雄を模した逆賊との戦いに腹を括った。枢機卿の配下達と共に。


「ルインさん、勇者の息子だったんですか……」

いつもの返答だ。珍しい苗字も災いし、直ぐに親の名は当てられる。最も、彼はルインが名乗った時点では偶然だと思っていたそうだが。

「親父と同じ体質でな、そのお陰か」

空虚な日常よりも、こちらの方が愉しい。この体質も活かせる。ルインの空白に、この戦乱はとてもぴったり納まった。

警報が鳴る。通信士の男の声が響く。

「ルインさん、あの二人は独房に入れている上、ジュリエザは予想以上の出力が流れて不可が掛かったので、メンテナンスをさせてます。なので今は出せません。その代わりと言っては何ですが、一人、増援を向かわせますので」

ルインは頷き、カタパルトに向かう。そこにはソニアが居た。

「今度から私も一緒に乗るよ、アルグレスに傷付けられたら困るからね、それと」

ソニアから渡されたのはゆとりのある一繋ぎのスーツだった。

「コンダクトクローク。これがあれば、ある程度体に流れる魔力を抑えて負担を軽くできるから

今の服を脱がなくても、上から着れるよ」

ソニアから受け取り、それを纏う。そしてコクピットに入り、機体を外に歩ませる。

アルグレスがカタパルトから飛び出す。敵が展開したのが見えたが、一つの小型艇から出た数が極端に少ない。

黄金の鶏冠を湛えた騎士の鎧が、森林地帯に降り立ったのが確認出来た。ルインが追う。ソニアが、固唾を飲み込み、鎧の降りた場所を見据える。

「あの黄金の装飾、まさか……」


「警報、それに艦長の声……敵か?」

独房のヘルムが、ブレイドに訊く。

「聴こえたか、ジュリエザは今メンテの最中、だそうだ

脱獄してバアルに乗ろうとしても無駄だぞ」

くそ、とヘルムは決まりが悪そうにしている。向かいでラディが口を開く。

「つまり、今戦ってるのは…での」

ブレイドが、質問されると分かっていたように返答する。

「彼のアルグレスだ」


「降下部隊なら、敵じゃないか……

ソニア、周りの敵はあと幾つだ」

ルインは手際良くアルグレスを駆り、降下舞台のケステロス達を撃ち落とし、斬り落としてゆく。

「上から来るのが四つ、降りて向こうに居るのくが五つ、かな」

ならまずは、上から減らすか。アルグレス手に構えたマナショットを、空に構える。ンが、片目を瞑り、狙いを済ます。落下位置を予測し、操縦桿に備えられたトリガーに指を掛ける。

今だ。

トリガーを引き、ケステロスの首を吹き飛ばす。コントロールを失い、地に落ちる。他の機体も、同じ容量で倒してゆく。

ソニアは額汗を拭った。

空中の敵は倒した。 あとは向こうに降下した連中。アルグレスが背中のブーストを更かし、加速する。

機関銃が、ルイン達に向かって翔んでくる。アルグレスはそれを間一髪でかわし、応戦する。アルグレスの頭部からバルカンを発射し 、牽制。隙を作る。そして、ケステロスの胸板に 渾身の蹴りを決める。しかし…

華奢なアルグレス では、致命傷には至らない。払われ、突き飛ばされるアルグレス。宙返りをし、体勢を立て直す。

「コイツ自身の筋力が無いのか…… 」

ならば。アルグレスが、腰に提げていた剣を抜く。ミスリル霊銀の光沢が、登り暫く経過した陽で反射する。

疾走。翼を開き、ブースト。さらに加速する。アルグレス、敵の眼前で飛び上がる。 刀身に魔力を纏わせる。

振りかぶり、重力がアルグレスを大地へ引き 付けてゆく。

「これで……っ!」

アルグレスが剣を振り下ろす。ケステロスは眉間から一直線に斬痕 が刻まれた。勇者はそれを横切り森の深くへ。ケステロスは爆音を立て、弾け飛んだ。


「雰囲気の違う機体、ここに来ていると思ったが……」

ルインは辺りを警戒する。

「前よ、ルインくん! 」

黄金の装飾が施された、騎士の鎧がそこにあった。

ソニアが、無意識に呟く。

「兄さん……」



尺伸ばし過ぎた…

まさか次回に聖騎士戦が延びるとは

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