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……なんか分けなきゃよかった……か、も(汗
なんだか腹が立ってきたので(?)連投します。
青天の霹靂そのものの出来事のせいで服のことなどすっかり忘れていたが、いやに体に張り付いたTシャツとジーンズを身に着けているようだった。まるで水洗いしてはいけないものを間違えて洗濯機に放り込んでしまったようである。着られるし現に着ているがほとんど隙間なくぴっちり四肢に合わさっているといった具合だ。
体が縮んで幼子のようになっているみたいだから服も圧縮されてしまったのだろうか。
そういえばバッグもない。
リューディアに確認しても首を横に振るばかり。とはいえ服がこんなに小さいのだからバッグがあったとしても携帯も財布も取り出せないだろうし、ミニサイズの携帯なんて使えるはずもない。
連絡を取る術も、パトリシアを証明するものもなくなってしまった。
ひとまずは体への締め付けを感じつつ、それよりもパトリシアは確認すべきことがある。
「その服、変わっているわね。それにあなたが履いているものも」
改めて見てみればリューディアの服は絵のものとは違っていた。ワンピースではあったが柔らかい若芽色で、胸元が元々開いたものではなく襟があってボタンが付いている。
それを控えめに寛げてリューディアはまた微笑む。
着ているものさえ違わなければ、部屋の様子も寝台の横に座る位置さえも気味が悪いほどに似通っている。パトリシアはまた頭がくらくらしてきた。
言葉は通じている。如何せん幼児化したようだから(パトリシアはまだそれを認めたくなかった)口が拙い。
思考力は前と変わっていない……と思う。
なによりもパトリシアは喉を破りそうな勢いで飛び出さんとする言葉たちを意味が伝わる会話に組み立てるのに内心悪戦苦闘していた。
うっ、ううっ……。
リューディアは肩をぷるぷる震わせて拳を固く握る彼女を心配そうに見つめる反面、なんだか胸が熱くなるような感覚を覚えていた。
「りゅッ、りゅーでわわっ……。わたちを呼んだのっ?!」
結局口から出たのは単純明快な質問でも理路整然とした説明でもなかった。
りゅーでわって誰ぞ。
わたちって何ぞ。
口を開けたまま固まったパトリシアをリューディアはきょとんと見つめていたが、いきなり両手で口元を押さえて体を震わせ出した。手も小刻みに震えている。
笑われた。
当たり前だろうが、心は二十一歳のはずであるパトリシアには堪えた。
突如として椅子から立ち上がり駆け寄ってきたリューディアの美麗な顔が一瞬にしてパトリシアの鼻先に突き出される。
落ち込んでいたパトリシアは当然展開についていけず。
「わわあっ!」
「リュディ!リュディでいいの!リュディって呼んで!!ええ、そうよ!私があなたをこのおうちに呼んだの。あなたはお呼ばれになったお客さまよ!いらっしゃい、可愛い小さなお客さま」
ひっくり返りそうなパトリシアをなぜかシーツ越しに掴まえながら、きらきらと言うよりぎらぎらした目がパトリシアの瞳に映り込むほどリューディアは間近に迫る。
ひいいと掠れた声も上手く出せないままにパトリシアが見たのは、とろけた極上の笑みを満面に浮かべし美女の、男なら誰でも胸熱な甘い甘い顔であった。
……おそらく正常な意思疎通ができるようになるには少々時間がかかるであろう。
厳かな預言者のような声がパトリシアの内より聞こえてきて、なんだか先程まで警戒していたことすら馬鹿らしくなりそうであった。
あれ?私は何を聞こうとしてたんだっけ?
正常な意思疎通って、私の上手く口が回らないたどたどしいしゃべり方だけが問題じゃないよね。
いやほとんど私が原因だけど、1%くらい違う気がするんだ。
……よくわからないけど。
内なるにわか預言者に向かって弁明にもならぬ言葉を返しながらパトリシアはなんだか急に疲れを感じていた。