4-1
※ここには、ロリコンについて少しばかり描写しております。また虐待の描写も出てきます。
苦手な方は4-1と4-2は飛ばしてお読みいただくことをおすすめします。
また、この二話を読了した際に生じた精神的苦痛に関しては、当社はいかなる責任も負いかねるものとします(?)
……いえ、R15にそぐわないとかでしたら改稿を考えますです。
ステルラリスの南東、マリューヌ地方。ここにマルド・カルヴァート男爵の小さな領地があった。
隣にはバルドゥイン辺境伯の広大な領地がある。南のハーリーンと国境を接しているために大きな権限があるのだ。
王都からも離れ、さらに権威と多大な領地を有する辺境伯の傍にあって彼は田舎領主として細々と居を構えていた。
そんな彼は人柄もまた凡庸であり、年のほどは三十の半ば。長身で細く、その肉の薄さは男としての箔に欠ける。さらに婦女子の如き青白い肌がいっそう貧弱さに拍車をかけていた。周辺貴族だけでなく、荘園農民からも幽霊男爵と陰で揶揄されるほどであった。
灰色のものが混じる茶髪と髭、落ち窪んだ薄緑の小さな瞳はいずれも三十半ばのものとは思われぬ。
こんな何一つ取り得もないように見える男爵だったが、ここにきてとみに良き噂が広まるようになっていた。
あの幽霊男爵が、身寄りのない孤児を引き取って養育しているらしい。
孤児院や人身売買の市場などで十をいくつか過ぎたくらいか、または十歳未満の少女を引き取り館に住まわせる。
何でも男爵の若妻が娘を産んだのち夭折したとのことで、寂しさに耐え切れなくなったのか奉仕に目覚めたものか、とにかく稀有なこともあったものだと一様に好奇な目を向けられたのだった。
――というのは表の話。
真実というのは往々にして隠匿されるものである。
マルドは小児性愛者だった。
思えば彼の妻は十六歳でこの世を去っており、それはマルド男爵の許に嫁いで四年後のことだったという。
ステルラリスでは一般的な女性の結婚可能齢は十三歳からだが、政略結婚が通例だった貴族間では女性の年齢を偽って嫁がせるということも少なくない。
一方、マルドの年齢は三十三。親子といっても通じる年の差である。
だからその余波はあったのだろう。
彼へ胡乱な視線を向けていた周囲の目はこの表向きの噂が流れたことで敬意のこもったものに変わり、誰も怪しみもしなかった。
真実を知る内部の者は全員箝口令が敷かれるか、真実が明らかになる前に首にされた。
よって館を出入りする者が全くといっていいほどいなくなった。
反面、いじらしい体の、まだ女ですらない幼児や少女が地下室や貯蔵庫に押し込められ、溢れかえるほどになっていた。
使用人はほとんどいなくなり、その代わりに館内は薄衣をまとった少女の小さな足だけが行き来している。
逃げ出そうとした少女は散々陵辱を加えられた上で惨たらしく殺され、庭や近くの森に埋められた。
もはやマルド男爵の暴虐ぶりを止められる者はいなかった。
そしてそれは彼の実の娘に対しても等しくふるわれていた。
「虫けらめ」
彼は娘をそう呼んでいた。
パティーシャ・カルヴァートの髪は父親と同じく茶色で、違う風合いではあるが瞳の色も共に緑であった。
くせの強いパティーシャの髪を掴み口汚く罵る男の濁りきった目に、父としての情愛など欠片もない。
娘が黄金に輝く髪を持ち、瞳は宝玉の如き蒼翠であったなら或いは少しは愛されたのだろうか。だがこの男の愛など塵芥にもならぬに相違ない。
確かに、集められた少女たちは金髪碧眼の者が多かったようである。
そして亡き妻に似て、だが夫婦のそれとはまた違うパティーシャの鮮やかな緑の瞳はマルドを酷く苛立たせた。
「何を見ている」
海老のように縮ませた体をそろそろと上げかけた娘に向かってマルドは吐き捨てると、ワイングラスを乱暴に置いて歩み寄った。
「ひっ」
パティーシャに実父の顔を仰ぎ見る勇気などあろうはずもない。
逃げようとしたが再び髪を掴まれ、顔を無理やり上げさせられる。
「……ふん。汚い。芋虫のような顔をしよって」
限界まで髪を引っ張られた痛みにパティーシャの大きな目は潤み、涙の筋がいくつも走る。
それでも声をあげまいと唇を噛み締めるパティーシャを鼻で笑ったマルドは片手を振り上げて娘の頬を張った。
「生意気だ」
このとき四歳だったパティーシャは目鼻立ちもまた母親譲りにはならなかった。
大きな緑の目、丸っこい鼻の辺りにはそばかすがあり、唇はぽってりした赤い実のよう。
だがマルドの形容する容姿など誰もが眉を顰めて否定するだろう。愛らしい、とても子供らしい顔立ちはしかしこの男には何の感慨も与えず、むしろ苛立ちを募らせるものにしかならないようだった。
倒れこんだパティーシャに近づき、胴をつかむ。
衝撃で朦朧としていたパティーシャは逃げ遅れた。
マルドの、それこそ虫のような指がパティーシャの服の中から這い寄ってきてひたひたと全身を触り始める。
パティーシャは悲鳴をあげて暴れだしたがすぐに口を塞がれてしまい、もう片方の手は相変わらず娘の肌の上を這い回っている。
マルドの指がまだ膨らむことを知らぬ小さな蕾や或いは最も禁忌な、絶対に触れてはならぬ部分にまで及ぶと、パティーシャは想像を絶する不快さに胃の中のものを戻した。
手にかかったと言って再び打擲するマルド。
パティーシャの服は虐待が始まる前からすでにぼろ布のようになっている。
彼女にはまともな服などなかった。ほとんどはマルドに引き裂かれてしまったのである。比較的損傷の少ない服を大切に着るか、食事を運んでくる少女たちに内緒で針と糸を貰い、つたない指を傷つけながら一生懸命縫い合わせたものを着ていた。
彼女は部屋に閉じ込められ、一切の出入りを禁じられていた。
そして今日のように気まぐれにマルドがやってくる。




