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さすがに短すぎる……。
区切りが悪くてなんだかかゆくなってきたので(?)連投します。
すみません……丁度良く区切るのが下手なのです……orz
木目の通った床、背景は小さな窓、半分だけ描かれた寝台は左手に、やや中央に座す若い女性の姿。
そしてそれらが一つの鏡の中に映っているように描かれている。楕円の鏡は蔦状の装飾によって縁取られ、額縁と相まって女性は二重に守られているようである。
殺風景な部屋もさることながら、女性が着ている白いワンピースも何の飾り気もなく、ただ胸元が控えめに開いただけのもの。だがだからこそ緩やかなひだを描くその純白さは目を射る。
しかしそれ以上に惹きつけてやまないのはもちろんこの絵の主だ。
顔の輪郭を覆い隠す豊かな髪はワンピースほど白くはない。光り輝いてはいるが薄ら翳りを帯びている。鈍色の雲のよう……いやそれよりも透き通っているとパトリシアは思う。そう、それはちょうどこの美術館の白亜の壁のように柔らかく優しいのだ。
女性の髪は緩やかに波打ち、光を受けている所は蜜色に照っている。窓は背後の隅に一つだけしか描かれていない。おそらくその窓以外に光源はないから、画家が作為的に光を取り入れたのだろう。
微光を放つ髪に覆われた肌は、その髪の甘やかさに比べるとどうも冷え冷えとしているように思われる。肌の青白さ、溶けたやわい髪の色、女性の玲瓏さを現したような衣装。
異なる白を配しているとはいえ同じ色と言ってしまえばそれまでで、なぜ絵画から際立たせるのではなく空気に溶け込んでしまうような描き方をしたのか。
初見の頃はパトリシアにもわからなかった。だが矯めつ眇めつ眺めるうちに、ある一点に自分がどうしようもなく引きつけられていくのを感じざるを得なくなった。
アメジストとかすみれの色などと言って形容もできよう。パトリシアが驚いたのはその瞳の暗さだった。しかし完全な闇ではない。落ち着いた静寂の中に、見る者を夢幻へと引き込む艶やかさがある。
この感覚と、この瞳に似たような色があったかを考えてみて、ようやく見事な夕暮れの空を思い浮かべた。茜の太陽が滲んで暗くなった空と混ざり合い、葡萄酒のように染め広がっていく。ほんの僅かの一時でしかない、ひどく鮮やかでいて深みに沈んでいく色。
だからパトリシアは、せめて女性の服に何か色が付いていればよかったのにとはもう考えなくなった。
そのえも言われぬ麗しい顔と全てが曲線で構成された姿態は印象派のそれのようで内から仄かに輝く柔らかさがあり……だがいつも、ここで夢から醒めるような感覚を覚える。
何故、この女性はこんなに悲しそうなの?