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バニラ  作者: 徳次郎
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【第16話】

「あの・・・・」

 成美は足を踏み入れて驚愕した。

 微かな明かりに照らされて見えたのは、佳代の下着姿だったのだ。Tシャツとスカートが、床に無造作に投げ捨てられているのが見えた。

 タオルで猿轡をされ、髪の毛がクシャクシャに乱れた佳代が涙目でこちらを見ていた。

 佳代は成美に向かって何かを言おうとしているようだった。

「佳代!」

 成美は思わず叫んで、佳代に駆け寄ろうとしたその時

「おっと」

 誰かが成美の腕を後から強く掴んだ。

 驚きと痛みで顔を歪ませて、成美は振り向いた。

 そこにいた男は見たことが無い。いや、あの時、ライブハウスの控え室の中で見た顔かもしれない。


 成美はとっさに声が出なかった。

「おい、一人増えたぜ。どうする」

 成美の腕を掴んだ男は、奥の連中に言った。

 奥には3人の人影が見える。そのうちの一人がゆっくり近づいて言った。

「二手に分かれて、一人2プレイでいいんじゃない」

 それは、ケンジのバンドのギターでリュウと呼ばれている男だった。

「ケンジは何処?」

 成美はやっと声が出せた。

「さぁね」

 リュウは薄ら笑いで応える。

「あんた達、佳代を・・・」

「これからって言う、丁度いい所へ来たな」

 瞳孔が開ききったリュウの目に、天上から射す暗いライトの光が吸い込まれていくようだ。

 その数メートル後ろでは、佳代がうめいている。

 成美は両腕をつかまれて、佳代と少し離れた場所に誘導された。

 これから自分達の身に起こることを想像するだけで、不安と恐怖で足が震えた。

 リュウが成美のTシャツを捲り上げて脱がせようとした。

 彼女は、両腕を下げ、脇を締めてそれを拒む。

「ほら、Tシャツ破いたら帰り大変だよ」

 リュウが笑って言う。

「やめて!」

 成美は身を捩って抵抗する。

 しかし、その時ふと頭に浮かんだ。

 こんな所で大勢に乱暴されるより、暴れ膜って殺させた方がいいかもしれない。

 どうせ半分以上は投げやりな人生だ。

 佳代は多分、男を知らない。

 こんな奴らが最初ではあまりに惨い・・・・

 勢い余って自分が殺されでもしたら、こいつらだって慌てて、佳代を置いて逃げ出すだろう。

 成美はそう考えると、何故か少しだけ冷静さを取り戻すのだった。

 自分が身体の力を抜くと、彼女を掴んでいる男の手の力も心持ち緩んだ気がした。

 「やめろ!」

 成美は大声を上げて全身に力をこめ、両腕を思い切りメチャクチャに振り回した。

 突然の事で、彼女の腕を掴んでいた男の手も外れた。

「バカ野郎!しっかり抑えとけ」

 リュウが怒鳴った。

 捨て身でメチャクチャに暴れる成美の身体を抑えるのは、男二人でも容易では無かった。

「この女、イカレてんじゃねぇの」

 男は、暴れる大魚のような彼女をなかなか掴めなかった。

 その時、倉庫の入り口から誰かが走り寄る足音がした、と思うとガンッと、成美の腕を再び掴もうとしていた男が床に倒れた。

 成美は一瞬何が起こったのか判らない。

「リュウ!お前」

 その怒鳴る声はケンジだった。彼は角材を手にしている。

 身体が自由になった成美は、佳代の所へ駆け寄って、彼女を抑えていた男の一人を力いっぱい突き飛ばした。

 ケンジの乱入に驚いた男は油断していた。

 飛ばされた男はシートの掛かった荷物に全身をぶつけて倒れた。

 佳代のもう片方の腕を掴んでいた男は、ケンジの乱入と事態の混乱に驚いて、完全に怖気付いていた。

 無言のまま突然思い切り走り出して、倉庫から逃走した。

「佳代!」

 成美は、佳代の猿轡のタオルを外した。

「成美!」

 自由になった佳代は、成美に思い切り抱きついた。

「リュウ、お前だったのか・・・・ 女の子に乱暴しているって言う噂の根源は」

 ケンジは肩で大きく息をしながら言った。

「はん。お前が真面目すぎるんだよ。こんな事でもなけりゃ、やってらんねぇぜ」

 リュウは悪びれた様子も無く吐き捨てた。

「佳代、大丈夫?」

 成美が声を掛けると

「うん、危機一髪って感じ」

 そう言いながら、佳代の目からは次々に涙が溢れてこぼれ落ちる。

 成美は佳代の頭を自分の肩で受け止めた。

 何時もの二人の役割は逆転していた。

 しかし、これが親友同士だからこその、ケースバイケースなのだと、成美は思った。

 その時、佳代がいきなり近くにあった角材を手にして振りかぶった。



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