表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バニラ  作者: 徳次郎
1/36

【第1話】

小説を書く場合、特にジャンルを意識しないので「その他」としていますが、青春ファンタジーな作品だと思います。

 月の無い夜だった。

 東京の夜空は月が無くても真っ暗と言う事は無い。

 煌々と照らし出される街の灯が、上空の大気に反射して夜空を明るくするのだ。その代償として、ほとんど星は見えない。

 寺澤豊は、新宿落合に住んでいる友達の家の帰り道、青梅街道を車で走っていた。

 途中で右折して、石神井公園の横を通って大泉に向かう交差点を通り過ぎた時、ヘッドライトが人影を照らした。

「うわ!」

 寺澤はあわててブレーキを踏んだ。

 ABSが作動して、ペダルに激しいキックバックが伝わる。

 そんなにスピードは出ていなかった為、車は僅かな距離で停止した。

 ぶつかった音や衝撃は無かった。が、今見えたはずの人影がいない。

 寺澤は、急いでドアを開けると車の外へ出た。

 少女が一人、車の前に倒れている。

 自分は、轢いてはいないはずだ。

 寺澤は少女の傍に近づいて、怪我の具合を見た。

 何処かの高校の制服を着ているが、寺澤には、それが何処の学校かは判らなかった。

 こんな夜中に・・・・

 夜中の1時を過ぎていた。

「おい」

 寺澤は、怪我をしている様子がないその少女の身体を、少しだけ揺すってみた。

 ぐったりして、反応が無い。

 病院へでも運べばよかったのだ。何か病気を抱えている為に倒れたのかもしれない。

 しかし、寺澤は自分の車に乗せると、自宅へ連れて行ったしまった。

 もう、あとほんの僅かで彼のアパートだったから仕方ないかもしれない。

 いったんアパートの前に車を止めて、少女を抱かかえると自分の部屋へ運んで、ベッドの上に寝かせた。

 車を駐車場へ入れないといけない為、寺澤は再び部屋を出ようとした。

「う、うん・・・」

 小さなうめき声で、寺澤が振り返えると、少女は目をぱちくりとさせながらベッドの上で起き上がっていた。

「ああ、良かった。目が覚めたのか」

 寺澤は、ホッとしたようにベッドへ近づいた。

「あなた、誰?ここは、何処?」

「ああ、キミ、いきなり車の前に飛び出したんだ」

「あたし、車に轢かれたの?」

「いや、轢いちゃいないけど、何でか気を失って倒れたんだ」

「それで、さらって来たのね」

 少女は少し身を引くようにして言った。

「いや、さらって来た訳じゃないよ。道路に放って置くのもなんだろう」

 寺澤は、病院へ連れて行けばよかったのかと、今更思いついた。

「あ、俺、寺澤豊って言うんだ。君は?」

「安二崎成美」

「よかったよ、気がついて。何処も何とも無い?」

 成美と名乗った少女は、自分の身体を見回して「ええ、たぶん」

「じゃぁ、家まで送ろうか」

「いい」

「は?」

 彼女はベッドの布団に素早く潜り込んで「帰りたくない」

「いや、帰りたくないって・・・」

 寺澤は思わず困惑して

「あのさぁ、困るんだけど」

「もう寝る」

 彼女は、布団をさらに頭まですっぽりと被ってしまった。

 寺澤はそれを見て、しばし唖然とした。

「キミ、家出?」

 寺澤は布団を剥ぎ取るべきか迷っていた。

 すると、突然今度は

「喉かわいた」

 成美が布団を被ったまま言った。

「は?」

「喉かわいた。飲み物ある?」

 成美はガバッと、布団をまくって起き上がった。

 何て図々しい・・・・最近の娘はこんなもんなのか。

 寺澤は仕方なく、キッチンの冷蔵庫から烏龍茶を持って来て成美に渡した。

「とりあえず、俺、車移動してくるから」

 なんだか変なのと関わりあってしまった。寺澤は正直、そう思いながら車を駐車場へ移動する為に外へ出た。

 東京の明かりを反射した夜空は、月がなくても薄明るかったが、どんよりと敷き詰められた雲からは、細い雨が降り出していた。


 寺澤が部屋へ戻ると、成美はすやすやと寝息を立てて寝ていた。

「マジか・・・・」

 彼女の顔を覗き込む。

 少し茶色い髪、マスカラの着いた睫毛、ピンク色の唇。

 寺澤は溜息をついて、ソファにゴロリと横になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ