第6話 死霊魔導師は手に入れる。
デバンによる爆弾発言から意識を取り戻した俺は、ダンジョンについて考えることにした。
場所的にシュヴェールト辺境伯家の領地で間違いなさそうだ。
森に蔓延るモンスターの多さゆえに、元々広大な領地の約半分しか開拓できていないのが現状。
開拓と、モンスターの驚異から領地を護る盾、その役割のためにシュヴェールト辺境伯の屋敷が森の近くにあるくらいだ。
そこにこんなにも大きな湖があり、しかも領地の収入に大いなる貢献をもたらすダンジョンがあるとは思ってもいなかった。
『シュヴェールトの屋敷からここにたどり着こうとするならば、切り立った山に囲まれ、レッサーアースドラゴンの群生地である渓谷を抜けねば来れない場所ですな』
視界を湖から広げてみれば納得だ。岩山にぐるりと囲まれた場所に見える。
あれだ、ここ、カルデラ湖なんだ。
『主、あのダンジョン見てきたっすけど、鉱山ダンジョンっすよ。そのせいかモンスター硬いっすけど』
ジェイミーがデバンの説明に補足を入れてくれる。
「鉱山ダンジョン! それ、凄いよ! シュテルネ王国でも二つの侯爵家にしか無いダンジョンだよ!」
シュテルネの貴金属含む鉱石を採掘できるダンジョンは二ヶ所。
産出する鉱石でシュテルネ王国に多大な貢献をしたと言うことで、男爵と子爵の下位貴族から高位貴族の侯爵にまで陞爵した歴史がある。
うちは辺境伯だから、侯爵と同位だから上がることはないだろうけどね。
「あ、でもアースドラゴンか」
『レッサーっす』
「うん、それがいる渓谷を抜けなきゃ駄目なんだよね」
『っすね、強いっすよ』
そうなのか、ジェイミーたちが強いと言うくらいだ、ちょっとここまで道を通すには難易度が高すぎるな。
「凄い発見だけど、問題が山積みだよね。一旦保留かな。デバン、まだ気になるところがあるんだよね?」
『でしょうな。ここははじめての影転移で混乱した主の安全を考えての場所だったゆえ、本題は次ですな』
そう言うことか。
『次の場所はモンスターに襲撃される可能性が高いゆえに主よ、油断せぬよう』
「うん、装備もなにもしてないけどね」
森に行く用の防具も武器も持ってない、ただの普段着だ。屋敷の中だったしな。
『そこは我らがお守りするゆえ、ご安心を』
『でも、次、ネクロウ様の得意分野』
『そっすね、どんくさいノロマなレイスは見えてたら余裕で避けられるっすからねー』
レイスか、デバンたちのゴーストとどこが違うんだろ。
『主、小回復で無双』
『そっすよ、レイスの奴らは小回復でやっつけられるっす』
「そうなんだ!」
あ、いや、冷静に考えるとRPGでもアンデッド系モンスターの定番攻略法か。
『そこで主のレベルを上げれば良いかと。そうですな、ざっとレベル50まで上げれば良かろう』
「50!? いやいや無理でしょ!」
レベル50なんてうちの騎士団長でもなってないだろ。たぶん王城の近衛騎士くらいじゃないか?
『なーに、低位のレイス、ゾンビ、グール、スケルトンで20、上位種で30、高位種どもを倒せば40は行くでしょう』
『そーっすよ、吸血鬼もいるし、50なんて余裕っす』
『謹慎十日ある。夜だけで余裕』
「ええ………………」
完全に引いてる俺を見て自信満々に頷く三人。
謹慎中、暇は無くなりそうです。
そしてやってきた二ヶ所目もダンジョンだった。
まあレイスが倒し放題と言ってたからそうだとは思っていたけどさ。
崖の中腹に人一人がなんとか入れるような穴が開いていて、そこが入口だそうだ。
ちなみについてすぐに襲ってきたオーク単体はジムが一撃で首を飛ばした。
肉が絶品だけど持ち帰るわけにもいかず、破棄が決まった。残念。
『主、喜べ、この森には三ヶ所ダンジョンがあることが分かったのだ』
「三ヶ所も!」
このアンデッド系モンスターが出るダンジョンは、今のところ一番森の最深部にあるとのことだ。
さらに奥はまだ調べていないとのこと。もしかするとまだまだダンジョンが見つかるとかあるかもしれないな。
とりあえず見つかってるダンジョンの位置的には屋敷→カルデラ湖→アンデッドの順番に並んでるそう。
おそらくだけど、このダンジョンは森を相当開拓しないと見つかることもないだろうってことだ。
考え方を変えれば、アンデッドに特効の小回復が使える俺専用ダンジョンにしても問題ない。
職業を授かって三日目にプライベートダンジョン手に入れちゃったよ……。
『うむ。それからホブゴブリンのことであるが、ダンジョンから湧き出たと考えられる』
『そっすね、入口が見つけにくいところにあったっすけど、屋敷から近いところにあったっすからねー』
「えっと、それ、大丈夫? 通常ダンジョンからモンスターって出てこないよね」
と、言ってから湖のダンジョンを思い出した。
いや、島の範囲でしか動きが見えなかったけど、ダンジョンから出てきていたってことだよな。
ということは……モンスターって自由にダンジョンから出てこれるってこと!?
『スタンピードと呼ばれる現象ですな。今回、主を襲ったゴブリンどもは、いわば先遣隊、本隊は直に出てくるでしょうな』
「出てくるでしょうな、じゃないって! 駄目でしょ! 早く父様に知らせないと!」
『大丈夫。間引きしてる。だから問題ない』
『そっすよー、ここに俺たち三人、主の部屋に二人、残り八人でダンジョンで数減らしてるっすからねー』
「えっと、大丈夫ってことでいい、のか?」
『うむ。さて主よ、そのようなことよりレベルを上げに行きますぞ』
混乱が覚める間もなくデバンに肩をもたれ、影に引きずり込まれ、次の瞬間、目の前に洞窟があった。
よく考えたら初ダンジョンだよな……ヤバい、緊張してきた。
『じゃっ、先頭行くっすからついてくるっすよ』
ちょっと心の準備と覚悟するから待ってと言おうとした。
言おうとしたのにジェイミーはさっさと進み、デバンが俺の背中を押し、なんの気構えもなく初ダンジョン入りを果たしてしまったようだ。
こうなってはもう『どうにでもなれ』と開き直るしかない。
ほぼ不意打ちでなにも観察できていなかったが、あらためてあたりに視線を広げてみる。
崖に開いた穴だから中は洞窟風だと思い込んでいた頭の認識が追いつかない。
「なんで墓場なんだよ……いや、アンデッドが出るから墓場なのは有りっちゃ有り?」
『主はダンジョンははじめてとみえる』
「そうだよ。中は外から見た感じのまま洞窟だと思ってた」
『その認識で合うダンジョンも確かに有るのだが、石造りの迷宮、ここのような外と見間違うダンジョンも多々ある。中にはいきなり水中だったダンジョンに入った時は死ぬかと思いましたぞ』
「いきなり水中!? よ、よく死ななかったよね、それ」
多分、鎧着てただろうし、沈むよね……。
『そっすよねー。あの時団長殿を引っ張り上げるの苦労したっす。溺れながらモンスターの相手して無双っすからねー』
『暴れすぎ、あと鎧、重すぎ』
『そういえば湿地が続くダンジョンでも――』
デバンたちが色々説明してくれてるんだが、どうにも気になるものが二つ宙に浮いていて、耳に話が入ってこない。
半透明で、不定形の浮遊物。俺の考えが間違ってないならあれがレイス。
ゆっくり、本当にゆっくりと俺たちの方へ近づいてくる。
それも二つだけじゃない。最初に見えたのは確かに二つだったが、今見えているのは倍の四つ。
あれに小回復をかけるんだよな。
でもどうやってやればいいんだ? 父様に腕を折られた団長さんにやった時は手をかざして発動させた。
だけど攻撃魔法として使うとなら、近距離はもちろん、中距離、遠距離も対応できなきゃ駄目ってことだ。
かの、かめは○波のイメージか? いや、どっちかといえば銃のイメージの方が合いそうだ。
小回復だし。かめは○波ならあるかどうか知らないけど、小があるんだから大回復くらいじゃないとイメージできない。
そんなことを考えている内にレイスらしきものは、その数を十個に増えていた。
いくら動きが遅く、気分的にもまだ余裕があるとはいえ、相手はモンスターだ。
ぐだぐだ考えている時間は無いな。
「やってみるか」
右手を前に出し、指をピストルの形握り込む。
「魔力を集中させてっ!」
腕から手のひら、手のひらから人差し指へ魔力を集め、指先に集まる魔力に蓋をするよう圧力をかけ、さらに魔力を流し込んでいく。
「行けっ! 小回復っ!」
指先で留めていた圧力の蓋を消し、放出させた。
ピシュ! パンッ!
「おお! 一発成功! こんなの攻撃魔法じゃん! どんどん行くぞ!」
何発か撃っている内に要領をつかめてきたので二丁拳銃に挑戦。
ちょっと倒したレイスから、よく見ないと気づけないほどだったけど、ほんのり光る半透明なものが飛んできて体に入った時はちょっとビビってしまった。
聞くとそれを一定量吸収すればレベルが上がると聞き、気を取り直して次から次へと現れてくれるゆっくりと動く的に向かって小回復を乱発。
「小回復っ! って言いにくいなっ! って出た!?」
魔法名が魔法発動のトリガーじゃないのか。
「だったらっ! ヒールショット!」
だったらでも出たけど、やっぱりヒールショットの方が格好いいよな。
と、調子にのってレイスを倒す俺の横 でデバンたちがおかしなヤツを見るような目で見ているのが気になる。
何か俺、変なことしてるのか?
読んでいただきありがとうございます。
本日の1話目です。
2話目は夕方18時頃を予定しています。
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