第4話 死霊魔導師は契約しました。
黒い靄を纏った騎士たちが勝鬨をあげた後、俺のもとにやって来た。
『幼子よ。死霊魔法の使い手よ。我らと契約してもらえぬか?』
「け、契約?」
団長殿と呼ばれていた、ひときわ重厚な黒の鎧を装備し、背丈を越える大剣を背負ったものが話しかけてきた。
それも俺が死霊魔法が使えるとわかっているようだ。
そして契約して欲しいと出された提案は、元々はシュテルネ王国の王都だったらしいシュヴェールト辺境伯の領地を護る力になりたいとのことだった。
はじめて聞いたよそれ……ここが王都だったとか知らなかったよ……。
さらに話を聞くと、この方たちは、この国、シュテルネ王国が建国した当時の王国騎士だそうだ。
しかも、いつもいさかいが起こっているシュヴェールト辺境伯に隣接してるシュマルツ王国は元々シュテルネ王国だったらしい。
まとめると、シュテルネ王国の王都だったところがシュヴェールトで、反旗を振りかざし、国を二つにわけた犯人、それが隣国シュマルツか……。
シュだらけで紛らわしいな……今は情報が多すぎて頭が回りそうもないよ。
ちょっと待てよ……シュテルネ王国の建国が確か千年以上前だから……思っていてよりものすごく前の方たちだよ。
『我らはかつてこの地を護りきれず、戦いの中で未練を残しながら死をとげたのだ』
建国の騎士だから気持ちはわかる。それに今の望みはこの地を護ることだと聞かされたからには契約に否はない。
「あの、返事は少し待ってもらえますか?」
いまだに鳴り続けている鐘の音を聞きながら天井を見上げる。
『そうであったな。向かえに行き相談をするとよい。結果がどうであれ、この地を護る気持ちに変わりはない』
「わかりました」
でも、死霊魔導師だからか、わかってしまった。あの騎士たちには時間がない。
俺が職業を授かり、意図してではないにせよ、ここに訪れて眠りから目覚めさせたからだ。
眠っている間は浄化されることもなく、この世に留まり続けられたが、一度目覚めればそうは行かないだろう。
母様が定期的に祈りを捧げ領地の浄化をしていることが直接的な要因になる。
浄化はこの幽霊である騎士の弱点であり、中でも抵抗の弱いものたちから消えていくようだ。
消滅の原因を作ったのは俺だ。扉の魔石に死霊魔導師が魔力を流すことで、ずっと眠りについていた騎士たちを起こしてしまったのだから。
……契約はしよう。負い目があるからではない。
騎士たちの力が必要になる可能性が高いからだ。
団長殿と呼ばれる騎士の話しによると、このゴブリンの群れは歪だったと。
五十にも届かないこの程度の群れでホブゴブリンが出てくることはまず無いらしい。
よくてゴブリンリーダーが一体いる程度の数であり、ホブゴブリンが出てくるとなれば、数百体の群れじゃないとおかしいそうだ。
少数の群れにホブゴブリンがいたと言うことは、数百体の群れがまだこの森にいる可能性がある。
ならこの騎士たちの力は必要になるのは当然の流れだ。
幸いにも騎士たちは悪性の者たちではないってことだろう。
あれ? だったらこのまま契約でいいんじゃないか?
元々内緒にする予定だったんだ。なら相談も何もないよな。
なら確認することがいくつかある。
階段に向かいかけていた足を止め団長さんに話しかける。
「あの、団長さん、少し聞いてもいいですか?」
①みんなのことは他の人に見えるのか
『例外はあるが、見せないようにも見えるようにもできる。普段は力の温存の為、姿を消している方が多いだろうから死霊系の魔法が使える者たち以外ならまず見られることはない』
これは朗報だ。死霊系の魔法を使える者はほぼいないとされてるからだ。
まあ俺のように隠し持っている者がいないとは限らないが、よほどのことが無い限り会うこともないだろう。
②何ができるのか
『何ができるか、か。そうだな、簡単にはモンスターの討伐、あと、契約者を起点にあらゆる影に潜ることができるな』
これも便利だ。いやまてよ、そうするとずっと一緒にいることになるってことか?
俺のプライベートが……要相談だな。
『団長殿。ちょっと試していたのですが、それを使いいろんな所へ一瞬で移動できますよ。名付けるなら影転移でしょうか』
なんだと……そんなことができるなら、スパイ活動やりたい放題じゃないか。スパイだけじゃない、敵の活動を前もって妨害したりもできる。
今回のゴブリンだって、影転移で森を隅々まで調べてもらえるじゃないか。
『あと、影の中に物を引き込み保管もできそうですよ』
これは微妙だが、便利なことには間違いないな。
③活動するための食事とかは必要か
『食事は必要ない。契約者の魔力か、離れて活動する場合はモンスターの魔石があれば問題ない』
俺の魔力か魔石でいいのか、それなら食料庫からこっそりいただいたりしなくてもいいし、バレる心配も無さそうだな。
「ありがとう。また聞くこともあるだろうけど、今はここまでで大丈夫です。あと、相談すると言っていましたが、今このまま契約を交わしませんか」
『おお! しかし、よいのか?』
簡潔に死霊魔導師であることを隠したい理由を添えて説明した。
『我らは千年前、この地を護る誓いを果たせなかったが再び機会が訪れた! ネクロウを主として誓いを果たそうぞ!』
団長の宣言に呼応して、騎士たちが抜剣し、勢いよく天に突き上げた。
「死霊――使役! くっ!」
濁流のように暴れだす魔力、騎士たちから立ち上がる黒い靄が俺の魔力と入れ替わるように互いの体に吸い込まれていった。
十三名の騎士たちとの契約を交わしたあと、階段を上り詰め、必死に鐘を鳴らすセレスに声をかけた。
すぐに気付いたセレスは振り回していたロープを離し、駆け寄って来る。
「ネクロウ様!」
あ、まただ。
ドスンと今度はお腹に頭突きじゃなかったのでそれほどのダメージはないが、勢いのまま二人で絡まったままた折れ込んだ。
「セレス。終わったよ」
「ううっ、ネクロウ様が無事でよがったですぅ」
セレスも俺も怪我無く終われて本当に良かった。
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本日1話目!
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