第12話 死霊魔導師だと告白したら戦闘がはじまりました。
姿を消していなかったデバンたちまで見られて誤魔化すこともできず、セレスとヘルトヴァイゼ殿下の二人に正直に話すことにした。
授かった職業が死霊魔導師だってことを。
デバンたちはシュテルネ王国建国当時の騎士たちで、英霊墓地で仲間になったことも。
真剣な顔で聞いてくれた。
死霊魔導師のところでほんの少し顔をしかめたが最後まで黙ったままでいてくれた。
知ればこうなることはわかっていた。
仮に俺が別の職業で、仲の良い者が死霊魔導師だったなら同じようにしていただろうから……。
だから黙っていようと決めたのに、浮かれすぎて致命的なミスをしてしまった。
本当に馬鹿だ。これじゃ前世で好きな仕事ばかりして死んだのと同じじゃないか。
俺が一つのことにのめり込み、まわりが見えなくなる性格だって身をもって体験したことなのに。
全部話した。部屋のランプが柔らかい光で沈黙で重い空気を照らしている。
告白したことで二人がどういった行動に出ても受け入れよう。
それが例え罵倒され糾弾され、側から離れていくとしても。
そんな沈黙を破ったのはデバンだった。
『主よ、たった今ゴブリンのダンジョンが溢れた』
「溢れた!?」
「ダンジョンだと!?」
「ゴブリンの!?」
その声はセレスとヘルトヴァイゼ殿下にも届いていたようで、俺たちの声が重なった。
『主、どうするっすか』
「デバン! すぐに行こう」
考えるまでもない。告白の行方は聞きそびれたが今はダンジョンの対応が先だ。
「待てネクロウ! 我もつれて行け! スタンピードならばダンジョンの入口を結界で塞げば被害も防げる!」
「ネクロウ様! 私も行く!」
『数、多すぎ、早く行く』
『考えている時間は無いですぞ主よ』
『面倒っすからみんなで行くっす!』
「あーもー! 二人のことは絶対守るから行こう!」
デバンたちが部屋の壁に影を広げる。
『飛び込むっす!』
「おう!」
「はい!」
「行こう!」
俺たちは走りだし、俺は寝台横の剣を手に取りセレスに渡す。
「おおそうだ、これは外して行こう」
ヘルトヴァイゼ殿下は首元の宝石を引きちぎるよう乱暴に外して寝台へ放り投げた。
俺はヒールショットでの攻撃がゴブリンに通用するのかと、不安が一瞬頭をよぎる。
が、すでに目の前は影転移の入口、駄目ならゴブリンたちの武器でもなんでも奪って使えばいい。
不安を振り切り、俺たちは壁に空いた真っ黒な影に飛び込んだ。
影を抜けた先はゴブリンのダンジョン前の広場だった。
デバンたちを除く死霊騎士団の十人がすでに戦闘中で、広場から森へ逃げ込もうとするゴブリンを倒している。
だがダンジョンから出てくるゴブリンの数が多すぎた。
『主は殿下をつれて入口に結界を! 露払いは我たちが受け持つのだ! 行くぞジェイミー! ジム!』
『任せて』
『行くっすよー』
デバンを先頭に左右にジェイミーとジム。俺たち三人を真ん中にした三角形の陣形でダンジョン入口へ向かう。
進み始めセレスとヘルトヴァイゼ殿下の様子を見る。
二人はゴブリンのあまりの多さに顔を青ざめさせていた。
セレスは剣を抜くが震えているようだ。それでも逃げ帰ろうとはせず俺の横についてくる。
こういうところ本当に強いよな。
ヘルトヴァイゼ殿下はブカブカになったズボンを紐で縛り直しながらも魔力を練り始めているようだ。
頼もしい限りだ。
そんな二人を必ず守ると気合いを入れ、懸念だったヒールショットをためす。
デバンの向こうに見えるゴブリンの頭に狙いを定め、撃ち出した。
「ヒールショット!」
狙い違わすゴブリンにヘッドショットが決まり、走っていた勢いのままスライディングするように倒れた。
倒れたのは一匹だけではない。最初のゴブリンの頭を突き抜けたヒールショットは後ろにいたゴブリンまで仕留めたのだ。
いつもより硬く、速くと魔力を込めたからかもしれないが、射線にいたゴブリンをことごとく貫き、倒す、または怪我を負わせ後続の動きを鈍らせた。
『むっ、ヒールショットが効くようですな主よ』
『やっぱり主の小回復はおかしいっす』
『普通は、そうならない』
三人が三人ともゴブリンを倒しながらそんなことを言ってくる。
「いいだろ! 倒せたんだから! ほら早く入口を塞ぎに行くよ! ヒールショット!」
そこからは早かった。スケルトン討伐で連写に慣れていたのもあるが、入口までの直線上をことごとく撃ち倒していく。
途中からは左右をデバンとジェイミーに任せ、倒れたゴブリンは邪魔だからジムに影へ引き込んでもらったほどだ。
俺たちが入口に近づくにつれ、逃亡を阻止していた死霊騎士たちにも余裕が出てきた。
岩の隙間だった小さな間口が、岩の崩壊によって大きくなっている。
その入口に三メートル近い体格で、デバンのグレートソードより大きな鉄製のこん棒を振り回すゴブリンがいる。
『ゴブリンキングですな。油断は禁物、主よ、ヤツは強いですぞ』
ゴブリンキングはヒールショットで狙っても、こん棒で半分は防いでしまう。
だが無傷ではない。頭や心臓の弱点だろう箇所を狙ったもの以外は確実に当たる。
だが、他のゴブリンは簡単に貫通したというのに小さな傷を付けるにとどまり、その傷が回復しているようにも見えた。
よく攻撃の手は休めず観察すると、怪我をしたあと、その体がぼんやりと光っていた……回復してる?
『まわりのヤツも面倒っよね』
『ジェイミー、あのヒーラー、潰して来て』
ヒーラーってことは回復魔法を使うゴブリンか!
ジムが指差した先に木の杖を持ち、ぼろぼろのローブのような物を羽織っているゴブリンが数多くいた。
何匹いるんだよ!
『俺っすか? まあいいっすけど、主、俺を撃っちゃ駄目っすよ?』
「撃たないよ! だけど俺もヒーラーを狙う! キングの左側をお願い! 右側は俺がやる!」
『ういっす! それなら安心っすね、行くっすよっ!』
ジェイミーが影に沈んだと同時に俺もキングからヒーラーに狙いを変えた。
『ギガァアアアアア!!』
『ぬおっ! ヤツめこっちの狙いに気づいたか! ジム! 三人を守るのだ! キングの足止めは任せるがよい!』
デバンが真正面からキングにぶつかる。
ガゴン! と、グレートソードとこん棒がぶつかり、あたりを震わせる。
デバンの上背も相当な物だが、相手は三メートルのキングだ。
見た目は大人と子供ほどの差があり、振り上げ弾こうとするデバンと、振り下ろすキングではどちらが有利か明らかだ。
『ぐうっ!』
かろうじて耐えたが、そう何度もあの攻撃は防げない。
ガギン! ガギン! とキングの振り下ろしが続く。
『重いっ! くっ!』
「デバン!」
ヤツの攻撃はデバン一人じゃ押しきられる結果しか見えない。
ジェイミーはヒーラーを着実に倒して回っている。
ジムも俺たちに近づくゴブリンの攻撃を盾で受け、時おり大きくワンハンドソードを振り牽制。
ヘルトヴァイゼ殿下も、小さいがファイアボールを近づくものへ放っていた。
セレスも先日のようには逃げようとせず、しっかりと剣を振りゴブリンを近づけようとはしない。
だけどこのままだと駄目だ。なら、やるしかない!
「ジェイミー! ヒーラーは俺がやる! ジムも行って! ヘルトヴァイゼ殿下は物理結界を! セレスはヘルトヴァイゼ殿下を護って!」
『ういっす!』
『了解!』
「うん! 頑張るよ!」
「ネクロウ! 我のことはヘルヴィと呼べ!」
「あーもー、それどころじゃないってば! ヘルヴィ頼む!」
「任せよ!」
ここが正念場だ。守りきる!
読んでいただきありがとうございます。
ブクマや★★★★★で応援よろしくお願いいたします。




