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気ままな貴族  作者: 三日月
始まり

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1/4

1.プロローグ 前編

 獣人族が数多く住まう国、アインバート王国。


 そこで男の子が生まれた。


 その日は赤子の誕生を祝福するかのような春風が吹いていた。


 その男の子は背中から2対の翼が生えていた。


 周りの人間は気味悪がりその子を遠ざけた。


 唯一、肉親のみがその子に愛情を注いだ。


 悲劇が起こった。


 男の子が生まれた村の近くで魔物氾濫(フロード)が起きたのだ


 男の子の父親が男の子の母親を庇い魔物に殺された。


 母親は子供を連れて逃げた。


 母親と男の子は逃げ切り、生き延びた。


 母親は逃げ切った先で赤子の世話をしながら働いた。


 男の子は必要最低限しか泣かなかった。


 そして母親が指を出せば握って笑顔になる


 母親は思う、この子は生まれて数ヶ月なのに現状を理解しているのではないか。ならばこの子は余程賢いのだろう、と。


 そうして数ヶ月が経った頃、母親は倒れた。


 おそらく働き過ぎたのだろう。


 母親は自分に良くしてくれた働き先の女人に頼む。


 自分が死んだ時はどうか息子を頼む、と。


 母親は男の子に首飾りをかける。


 どうか健やかに生きてくれ、そう願いを込めながら。


 女人に頼み事をして1ヶ月ほどして母親は死んだ。


 衰弱死だった。


 それでも母親は最後まで息子の幸せを願っていた。


 女人は母親の願いを聞き届けようと男の子を預かる。


 しかし、女人はこの時まで男の子の翼のことを知らなかった。


 そのため一瞬躊躇してしまった。


 女人は思った。


 自分ではいけない、気味悪がった自分ではいずれ男の子を傷つけてしまう。


 そうして、女人は教会を頼った。


 そこで自分と知己の仲である修道女に男の子のことを頼んだ。


 修道女は男の子の翼のことを聞きながらも預かることを了承した。


 特異な子であるが故に1人にしてはいけない、と考えて。


 それがちょうど男の子が生まれて1年が経った頃だった。


 その日から数ヶ月後、貴族の男が教会を訪れた。


 その貴族の男はその教会の支援者(パトロン)であった。


 故に修道女には教会での出来事をできる限りその貴族の男に話す必要があった。


 貴族の男は最近の出来事の話を聴く。もちろん、男の子のことも含めて。


 そして貴族の男は考え込む。


 しばらくして、貴族の男は修道女に提案をする。


 男の子を預からせてくれないか、と。


 修道女は貴族の方が色々都合がいいだろうと考え、それを了承した。


 その貴族の男は一昨年、自分の赤子を流産で亡くしていた。


 そのことで貴族の男の妻は塞ぎ込み、鬱病を発症していた。


 妻も最近は立ち直ってきたものの依然として元気がない。


 その最後のひと押しとして貴族の男は男の子預かることを決めたのだ。


 もちろん、孤児院では男の子が孤独になってしまうことも考えての提案だった。


 そうして貴族の男は家に男の子を連れて帰る。


 その道中、男の子は一度も泣かなかった。


 貴族が屋敷に戻り、使用人たちが主人を迎える。


 貴族の男は自分の腹心である、執事に事情を話す。


 執事は事情を聴いた後、すぐさまに使用人たちに指示を飛ばす。


 貴族の男は男の子を連れて妻がいる部屋へと向かう。


 そして貴族の男はある部屋の扉をノックし、開ける。


 そこには貴族の男の妻が椅子に座り本を読んでいた。


 貴族の妻は貴族の男へ、用事を聞こうとして気づく。


 貴族の男が抱えている赤ん坊のことに。


 妻は男へ問う。


 この子はどうしたのか、と。


 男は妻へ事情を話す。


 そうして、妻は男の子の母親になることを決める。


 そこで妻は貴族の男へ再び問う。


 この子の名は、と。


 男の子の今は亡き肉親が翼を見て決めた名前を、母親から女人へ、女人から修道女へ、そして貴族の男へと伝え間違えられることのなかった名前を、貴族の男は妻へと伝える。


 ノクス()、と。

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