パイプ 下
パイプを始めた当初、ランバートから聞いた話。
自分のせいで組んでいたパートナーを犯罪者にしてしまい、助けることが出来ずに一人だけ生き残ってしまった、途方にくれたランバートは本職の窓拭きに手が出ずにいた、その時、現れたのが十五歳すぎのまともな服を着ていない、まるでぼろ雑巾の服を着たが、鋭い目つきの私だった。
「一緒に仕事しない?ランバート……」
私はパイプになる前、どこにも行くあてのない、まさにホームレスみたいな生活をしていた。
ただあの真っ暗な夜、ビルの上を走るパイプに憧れていた、誰も走らないような道を走り、迅速かつ大胆に飛び回るパイプに憧れていた。
しかし、あの事件が起きて以来、パイプの数は激減、いつの日か誰も見なくなった、夢も希望も消えた私は一つの噂を信じて、事件から数ヶ月後、忘れられた頃にランバートの事務所を訪ねた。
ランバートは私を家族のように良くして、私に仕事をくれた。
私はランバートのおかげで、未来に通じるパイプを作り出した、だったら今度はランバートのために私が逃げるためのパイプを作ってみせる。
今、目の前に広がっているのは黒煙が昇り、いたるところ燃えている工場、ホテルの玄関には複数の警察官、今まさに扉をこじ開けようとしている。
「どうやって逃げ出そう、ランバートとは連絡出来ないし……」
手に持っているワイヤーを掛けても中途半端な高さの場所、隣に飛び移っても屋上に行くまで時間を費やす。
「二のやつ、あえて逃げにくい場所選んだのね」
しかし、中途半端な高さ故にワイヤーを掛ければ一階にはすぐに着地できる、幸運なことに警察官は全てこの階に来ている、そして、ここに来る時使った地下鉄に通じている非常口。
「だったら…行く場所は一つだけね」
「そこにいるのは分かっている、大人しく投降するんだ」
もう扉が保ちそうにない、すぐさまベランダにワイヤーをつけ、ベランダから飛び降りた。
「よし、容疑者を確保……あれ容疑者はどこだ」
「あそこです」
セレムはすでに非常口の扉を開け地下鉄に入ろうとしていた。
「クソ、あの人を呼ぶんだ」
ランバートの情報がない以上、行き当たりばったりの移動になっている、と言っても私もパイプ、自分なりの道ぐらい作っている、と言いたいが。
「列車が来ない……」
ランバートがいる方、ここに来るとき使った線路沿いに走っているが、なかなか列車が来ない。
「このままだとホームについてしま……ん?」
その時、後方から列車がやっと来た、すぐにワイヤーを天井に引っ掛け列車に飛び移った。
「よし、コレなら」
しかし、警察はそんなに甘くはなかった……。
セレムが向かっているトンネルから外に出る一駅手前に警察の特殊部隊が控えていた。
「パイプの残党がまだ残っていたのか……何か懐かしいな」
タバコに火をつけ列車の入り口に、自分の部隊を4人一組で配置、黒いアーマーをきた男が他の部隊に連絡を取っていた。
「おい、誰だあの人?」
「知らないのか、以前のテロの、大半を捕まえたのがあの人だよ」
男はタバコを踏み火を消しそばにいた、長年の部下にこう伝えるように言った。
「相手は人間だ、できる限り優しく取り押さえろ」
「分かりました、ファリーさん」
「昔とは違う、あの頃の俺とは違う、何故またテロなんかしたんだパイプ…」
ファリーは昔やったパイプに対する行為を後悔していた、どこかで何か感じ取っていたのかもしれない。
「だからこそ、今度は話を聞き出してやる」
反対側のホームから列車が出発して、部下が戻ってきた。
「もう少しで到着します、しかし、何故ここに部隊を配置したんですか」
部下はファリーの吸い殻をゴミ箱に捨てて聞いてきた。
「あの工場の近辺は建物の高低差が激しくパイプは手を加えていない、パイプには不慣れな地形だ、だから自分達の道に戻るのを最優先にする、そして最も早く戻る事が出来、ホームを使わずに外に出ることが出来るのは……」
「このホームと次のホームの間にある外に出るトンネル」
「ということだ、しかもその間に非常口はない、カメラでも確認済みだ、そのためトンネルの出口に数人、こっちに向かって地下を走っている部隊、このホームに数人おいてあとは列車に突撃する」
そして、話を終え待機していたファリーの目の前に、列車がホームに到着した。
「突撃!」
すぐさま乗客が少ない列車内に入り、パイプを探している最中に列車は走り出し、結局パイプは見つからなかった、先程のホームからの連絡でも。
「パイプらしき人物を捕まえてみましたが、違いました」
そして、ファリーを乗せた列車はトンネルから外に出た。
「全員武器を構え、窓の外を見ろ」
しかし、窓越しに見えるのは、高層ビルと夕日だけだった、その後トンネル出口の連絡が入った。
「ファリーさん、列車の屋根には……誰もいませんでした」
「ファリーさん、別部隊がホームに到着しました、非常口からホームの間にパイプらしき人物は発見していません」
「そんなバカな……」
心配そうに部下が見ている中、連絡が。
「先程、2つ向こうのホームで料金を払わないで、走り去った女がいたという情報が入りました、非常口から張り込んでいたホームの、反対方向のホームです」
「まさか……」
ファリーはこの列車に乗り込む前に、反対側のホームから出ていた列車の事を思い出した。
「しまった、まんまと騙された……パイプの野郎、あのホームから出た反対方向の列車にホームを使わず乗り換えやがった、だから別部隊に見つからなかったんだ」
まんまと騙されたファリー、しかし、まだ策は残っていた、不適に笑いすぐに部隊に連絡をとった。
「すぐに指示したパイプのホームグラウンドにはりこめ、奴らは絶対に屋上を使う、すぐにはれ!」
「ファリーさん……」
昔のパイプとはどこか違う動きをする、コレは面白い。
ホームについた途端、走り出したファリーの特殊部隊、日は完全に沈み、パイプの世界……夜の道が開かれる。
セレムはまんまと警察を出し抜き、タクシーで移動中。
「警察もまさかパイプが車を使うとは思わないでしょう、でもね……あ、そろそろ降ります」
セレムは手近なホームグラウンドの近くまで到着、ランバートが作ってくれた特性のワイヤーを、力一杯握りしめた後にビルの屋上に引っ掛けた。
「たとえ警察が張り込んでも、私……いや…私達パイプはまた夜のビルに影をつくる」
ワイヤーを思いっきり引っ張り、ビルの側面を走り、すぐにビルの屋上に到着した。
「なにあれ?」
「パイプだ!あのパイプが戻ってきたんだ」
向かい側のビルにセレムの影が映る、パイプはまだ生きている、それをこの際都市のみんなに伝えたかった、昔の私みたいに夢を見てほしいから。
「けど…これが見納めになるかも……、ランバート待っててすぐに行く、今度は遠回りしない、真っすぐ向かう、警察になんか負けられない……、そうでしょ」セレムは自分がいる屋上の高さと、同じ高さの道路を挟んだ向かい側のビルに、誰かが拍手をしながら立っているのが見えた。
「凄いな、正直驚いているよ、まさかビルを駆け上ってくるとは」
「あなたは……」
そう、そこに立っていたのはテロ鎮圧グループリーダー、ファリーがタバコをくわえながら立っていた。
「分かっていると思うが、実は階段から屋上にあがれるのはこのビル以外、この近辺にはない、そして俺はパイプのホームグラウンドを熟知しているつもりだ、だから、ここがその端っこ、それで俺らの部隊は階段に張り込んでいたんだが……、まんまと裏をかかれているな」
「邪魔しないでくれる、私はすぐに行かないとダメなの」
「残念だがそうわさせない、お前はテロの容疑者だ逃がさない」
その時、ファリーの背後から二人一組で複数の部隊が出てきた、片方は銃を構え先端に銛のようなものを付けた弾を打ち、私がいる屋上のコンクリートにワイヤーをめり込ませた、そのワイヤーにフックを掛けて、飛び移る用意を整えファリーの合図を待った、ファリーもアーマーを外して走る用意を整えていた。
パイプと勝負するつもりなのだ。
「今からでも遅くはない、チャンスはもうないんだ、投降しろ」
そんなのするつもりはない、相手がどんなに強くても私は負けない私は……
「そんな投降なんて私はしない、勝ってみせなさいよ、私はコードネームセレム、ランバートのパートナーであり、最後のパイプ、捕まえてみなさい、ビルの上の配達人を」
遠回りはしない、真っすぐ帰る、そのためにも走りだけであいつらに勝たなければならない。
私はあいつらに背中を見せて走り出した、ビルに足跡を残すぐらい強く踏み込みながら……、しかし、その足は震えていた、背中から感じるあいつらの存在感、逃げられるのかと思ってしまうほどだ、隣のビルに飛び移ろうと時、ファリーの掛け声で思わず竦んでしまい飛び移るタイミングを乱した。
「全部隊に伝える、テロ鎮圧のため、ファリー特殊部隊は容疑者セレムを捕まえる、特殊部隊の力をみせろ」
「オー!!」
遂に、パイプと警察の鬼ごっこが始まった、相手はファリーを含め六人、空に追跡用のヘリは飛んでいない。
私は乱れたタイミングを調整し、いつもどうり飛び移り目の前に私の身長の二倍もあるフェンスを、手前に備えてある貯水タンクを壁けりして、フェンスに触れずに飛び越えた。
「これがパイプの道よ、あんたら警察にできる?」
しかし、ファリーは冷静に指示を出した。
「土台用意」
先頭を走っていた兵がフェンスの前で、反転し自らの手のひらを使い土台となり走ってくるチームを一人一人持ち上げて、難無く飛び越えられ、差が開くどころか縮まってしまった。
「そんな!」
「セレム…、これがチームの力だ」
焦りを抑えながらセレムはもう一度、同じようにして逃げようとしたが、更に差が縮まってしまう。
「人数は減るけど、そう何度も出来ない、追いつかれてしまう」
その後、セレムはランバートから教わったパイプの技の数々を使い逃亡をはかるが、ことごとく打破され差が広がるどころか、縮まっていた。
「何で広がらないの、パイプの技が通じてない……ランバートがいたら道が分かるのに……」
しかし、パイプの技を出されるたび、部隊の隊列は乱れファリー以外間隔が開いていた、最後尾の一人は見えなくなっている。
だが、一番セレムに近いファリーは部下に連絡をしていた。
「どうもおかしい、パイプには常に逃げる道を教える人物がいるはずだが、あの走り方……、どちらにしても、そのパートナーを恨むんだな、もう終わりだ」
セレムの走っている屋上の先には、またしてもファリーの部隊が構えていた。
「さきほどから真っすぐしか走っていない、無理して走っているように見える、逃げる事に集中してムチャクチャに走らされているようだ、……パートナーがいないのか?」
セレムはただランバートを助ける為、自分が知っている道しか走っていない、ランバートがいたなら、今まで警察に追われた事のないセレムにとったらそれだけで重荷になっている、実際自分の道なんて作っていない。
「ランバートがいたなら……」
その時、セレムの目の前から強烈な光が。
「容疑者セレム、逮捕する、ファリーさん今です!」
セレムの飛び移ろうとした屋上に部隊が、足を止めたセレムにファリーが手を伸ばした。
「もうダメ、逃げられない」
ゴメン……。
その時……、意味をなくしていたイヤホン途切れ途切れ声が……。
「と……おり…ろ……びおり……」
私は頭で考えるより先に体が動き、ビルとビルの隙間に落ちようとしていた。
「よせーー!!」
私はイヤホンの声に従い、ファリーの伸ばした手をはじき暗いビルの一人分の隙間に落ちていった。
他人からみたらゆっくりに落ちているとは思えない速度だが、私はゆっくりと目を閉じ落ちているように思えた。
そして、いつも道を教えてくれたパートナーの声が……ハッキリと聞こえた。
「セレム!」
目を開け、いつの間にか私はワイヤーをビルに引っ掛け両脚を使い落下を回避していた。
「セレム…聞こえるか?」
「ランバートなの?あなたなの?…私……あなたを助けるために走ってたのに……それなのに……」
上の方で隙間に光を差し込み私を探しているようだ。
「まったく、いつも無茶して世話ばっかりかけやがって、今回は警察にご厄介か?」
「ランバート…私…」
「喋るな、今から俺の言ったとうりに走るんだ、セレム…お前なら…出来るよな」
ビルの屋上から遂に警察が私を見つけ出した。
「あのパイプ……なかなかしぶといな……面白い」
私は涙を拭き、ランバートの言われたとうりに、ワイヤーの一本を犠牲にして、壁走りで一気に屋上に再復帰することに成功した。
「本当のパイプを見せてやる」
そして、ファリーも再び先程の鬼ごっこの時とメンバーを変え、六人で追いかけてきた。
「セレム、屋上にでたら目の前のフェンスを貯水タンクを台にして、飛び越えろ」
セレムは言われたとうりに貯水タンクを台にして、飛び越えた。
「先程と何も変わらない、そんなんじゃ逃げられないぞ」
ファリーも再び部隊に指示をだしフェンスを飛び越えたが。
「そんなバカな…差が広がっているだと」
その後、セレムはランバートの言われたとうりに屋上を走り、飛び越え、時に広い場所を走り、狭い道を走る。
そのたびに、ファリー特殊部隊との差が広がっていく。
「ファリーさん、何なんですか?さっきと話が違います」
「これが本当のパイプなのか、さっきまでとは別人だな」
ファリーがセレムの姿をなんとか見ている中、セレムは足を止めた。
「セレム、そろそろ決めるぞ」
「分かってる、行くわよ」
セレムは助走から一気に速度を上げ道路2つ分のビルの間を飛び越え、またしてもそのまま真っ暗なビルの隙間に入っていった。
ファリーは部隊を止め追跡を中止した。
「ファリーさん!俺らでも行けますよこれぐらい」
「行きたければ行け、あの隙間に足場がなかったらどうなる、十五階から一気に地上に叩きつけられるぞ」
「それじゃあ俺ら…負けたんですか……」
今まで失敗したことがない、それがたった二人に負けた。
「俺らは負けたんだ、テロリストにじゃない、パイプにだ、みな報告書を書いて帰宅しろ、俺はちょっと寄る場所がある」
今夜、負け知らずのファリー特殊部隊はセレムに負け、屋上から姿を消した、跡を残さず。
数時間後……
セレムの立っている屋上には無残に崩れ落ちたランバートの事務所だった。
「ランバート!どこにいるの!」
崩れた事務所は爆発が起きたのか、パソコンや机、その他、いろんな物が灰になろうと燃えていた、ただ私の愛用ソファーがひっくり返され弾痕が残り、そこからうめき声が。
「ランバート!」
私はひっくり返ったソファーをどけると、そこらに火傷を負い、服で撃たれた腹部を止血したランバートがなんとか生きていた。
「セレム…お前ってやつは…どこまでも無茶する…俺を助けるために…奴らの罠に入って…来るなんて……」
ランバートの手元には一つの携帯が握られていた。
「ランバート…まさか」
「ああ…あれが壊されてしまったが、この都市の道は全て覚えている、長年地図を見ている成果かな」
「そんな状態で私を助けてくれたの?」
ランバートは一度鼻で笑った。
「当たり前だ、俺の家族であり、無茶をする娘であり…最高のパートナーだからな」
言葉が出なかった、私はただランバートの隣で座り込んでいた、どうしようもなく、ただただランバートの話を聞いていた。
「セレム…話したいことは沢山あるが、ここからすぐに俺をおいてにげるんだ」
「イヤよ、私はあなたを助けるために戻ってきたのに、一人でまた逃げるなんて…」
ランバートは私の手を握り荒い声で話しを続けた。
「お前がいたからこそ、今まで仕事を続けることが出来たんだ…、セレム…お前のおかげなんだよ」
「私もそうだった、パイプになるためそして、ランバート…あなたと仕事がしたかったから」
「セレム…だから俺はお前をあいつらに今の俺のようにされたくない、前のパートナーみたいにさせたくないんだ!だから今すぐに都市から逃げるんだあいつらにやられ…」
「だから私は助けたいのよ!今まで世話になったあなたを助けるために来たのよ!それなのに……」
止血をしている腹部から無情にも流れは止まらない、必死に押さえても止まらない、徐々にランバートの体が……。
「ランバート…私はどうしたらいいの?もう行くとこがないよ……」
ランバートは最後の力で鳩のポスターを指差した。
「平和にある物を渡している、その後は…自分で道を決めろ……」
「分かった……ランバート…私…行くね」
私は立ち上がりすぐに平和郵便局を目指すため、振り向からず走り出した、もう二度と会うことのない、最高の家族、パートナーを残して……。
「さよなら…ランバート……」
セレムがランバートから去って数分……。
物陰に隠れていた一人の男がランバートに近ずいてきた。
「もういいのか?あれが最後の別れで」
「あんたか…うちのパートナーが世話になった……わざと逃がしたんだろ……なあファリー」
そこには真っ黒の私服をきたファリーが、音声テープを持ちながらランバートに最後の言葉と見送りをしにきた。
「親父が毎日のように窓拭きをたのんでいたからな、その礼に見送りにきた、後、わざと逃がすような甘い事はしない、あいつは実力で勝ったんだ」
「そうか……」
ランバートは今、とてつもない眠気が襲っている、寝ればもう戻って来れない。
ファリーはテープをランバートに近ずけ最後の言葉を録音した。
「セレム…お前は…俺の……パイプ達の……最後のむ…すめ……だ……」
その後、ランバートのパイプは崩れ落ち、道は終わりを迎えた。
テープを止め、ゆっくりと部下に連絡し、すぐに来るように伝えた後、到着する前にランバートに話し掛けるファリー。
「おそらく、この事件は数日で忘れられるだろう、簡単にニュースになって、パイプが悪く書かれてそれでおしまい、上の方から既に今日起きたことを忘れろと言われた、何か裏があるんだろう、何かは解らんが、俺はパイプを信じる、お前達パイプは、ただの配達人だ、俺の部隊が勝てなかった強いチームの力を持った……」
数分後、部隊が到着しランバートの身柄を拘束、すぐに運ばれて、無き事務所は数日後、回収処分された。
場所は変わり、平和郵便局駐車場。
平鳥鳩和が郵便局を開けポスター制作をするため、いつも日が昇る二時間前にはきている。
「ハハハ、今日もいい日になりそうだな」
郵便局の裏口の鍵を開け、中に入ろうとしたら誰かに肩を叩かれ、振り返ったら。
「とにかく私にとったら最悪の日になったわ」
と言われ、そのまま顔面を殴られ、無理やり自分の部屋に入らされた。
「誰だい?いきなり殴るとはちょっと酷すぎないか…て、セレムなのか?」
そこには丸々1日走らされて、泣き疲れた顔で、怒りを平和にぶつけたそうなセレムがたっていた。
「平和……いや、平鳥…あなたのおかげでランバートは……」
セレムは膝をカーペットにつけ、やっと酷使していた足を休め、倒れた。
「いったい何があったんだ、二人から連絡がこなくて何も分からないんだ、教えてくれセレム…何があったんだ」
平和はソファーにセレムを移動させて、インスタントコーヒーを用意したが、飲みながら聞ける内容ではなかった。
仕事先でおきた爆発、二と名乗る男の声、ファリー特殊部隊との鬼ごっこ、そして……ランバートの最後の言葉。
「……で、私はランバートに言われたとうり、ここに来たのよ」
平和は古き友人のランバートの結末を聞き、頭を抱えた。
「………なんて事だ……まさかこんな事になるなんて」
やっと飲もうとしたコーヒーは冷めてしまっていた、椅子から立ち上がった平和は棚の一つから手紙の束を取り出して、セレムに渡した。
「ランバートが最後に言った物だ、毎週送られ昨日も届いた……君宛の手紙だ、君と組んでから今までの書かれた分だ」
平和から渡された手紙は確かにセレム宛になっていた、その手紙の内容は今までの私達パイプの事、どうでもいいことでケンカしたこと、移動のタイム、どんな事を今週したかを事細かく書かれてあった、そして後数枚まで読み終わった時、一つだけ袋に入った手紙と本があり、先に手紙を読むと、急に話が変わり、昔おきたパイプの事件に関わる話になった。
「セレム…俺達が組む前におきたテロ、なんでおきたか俺は独自に調べた、そしたら…一つの組織の名が出てきたんだ、それを教える前にちょっと作ってみた本があるんだ、それを読んでからにしてくれ」
その本にはテロがおきる前パイプがどのような事をしたか、当時のメンバーのコードネーム、そこにランバートとパートナーにディディアムと書かれていた。
「飲んだくれだった時、話を聞いた、捕まる前に必死に道を作ったが、結局捕まり、マイク越しに聞こえたパートナーの叫びが今でも残っていると」
平和が隣で補足を入れながら本を読み続けた、特にランバートから教わった以外の技が書かれていたり、自分なりの道も書かれていた都市の地図。
最後にテロのおきた時の日記風にした文章。
パイプといえばいろんな意味があるが、俺達のやっていたのは配達人だ。
家の屋根、ビルの屋上、建設中の通路、水道管、トンネルどこでもパイプの道になる、俺達はどんな荷物でも運んでいた、たとえそれが危険物だったと知らず。
数年前、まだパイプは繋がっていた、人と人とのパイプが壊れる事件がおきた。「これは、昨日考えてた最後のページの文章」
………こうして、パイプの影はビルから消え、使われなくなったパイプの道はそのまま崩れることなく繋がれたままビルに残された。
だが、まだパイプは生きている、夢を信じ俺の前に現れた目つきの悪い女の子、俺はまた作り始める、今度は失敗しない、必ず崩れないパイプを作り出すため、この本を残す、パートナーのために……。
そして、最後の手紙一枚。
「平和……私…もうここにはこないから」
「どうするつもりなんだ、まさか……追いかけたりしないよな」
「大丈夫、追いかけたりしない、この最後の一枚にはランバートが探した奴の組織の名前が書いてあるはず、それを知ったがためにパイプは潰された」
裏口から出ると外はもう朝日が昇り、従業員が駐車場に集まっていた。
「もう、これ以上友達をなくしたくはない、じゃあね平鳥鳩和、仕事…楽しかった」
「待てセレム!何か協力したい、だから……」
セレムはそんな平和の声を無視して、どこかえ行ってしまった、たぶん都市のどこかえ行ったのだろう、謎の組織を捜すため。
「あ!平和さん、おはようございます……どうしたんですか、平和さんらしくない」
平和にとって前回のテロ以来、普段顔に出さなかった表情が出て、いつもどうり笑えなかった。
数時間後……
都市では爆発のニュースと新聞が出回り、パイプが起こした事に、そしてその一人が亡くなったと書かれていた、しかしニュースは数分、新聞は小さく書かれて本当にあったのかと言われるぐらいだった。
「それでも奴らの目的は達成されて、結果的にパイプは再び悪投になった」
セレムはビルの屋上で読み終わった手紙を握りしめていた。
「パイプはその組織の事を知りすぎただけではなく、依頼人を探って見つけてしまったんだ、何かはわからなかったらしいが……、そこでパイプはその組織を潰そうとしたが、先手をうたれた、どんな事をしても奴らの思い通りにことが運び、パイプは俺だけを残し壊滅した、パイプを潰したその組織の名は……」
「ナンバーズ……、絶対に見つけ出してやる、どんなに小さく隠れていても、パイプはあなた達を見つけ出してやる」
今日、一つのチームが終わりを迎えた、しかし、一人の男が残した想い、パイプの想いは確かに一人の女性伝わった、今後、彼女にいったいどんな困難が待っているのかどんな未来が待っているのかは、彼女がある別の組織にたどり着いた時に再び始まる。
「おはようございます、朝のニュースです、先日、銑三の工場、灼熱工場から謎の爆発がおこりましたが、奇跡的に死者はいませんでした、この事件に似た事件が数年前、同じ場所でおき、警察は同一犯のテロリスト、パイプでわないかと捜査した結果、一人の男が発見され、すぐさま病院に運ばれましたが移動中に息を引き取りました、次のニュースです……」
朝食にシュガートーストを食べながら予想どうりのニュースに笑ってしまうファリー。
「どうだった?」
「俺達の予想どうり、うまいこと使われたよ、俺も、セレムとパイプも」
「もう見れないのか…」
「心配するな親父、まだ終わったわけじゃないんだ、部隊を出し抜いた腕は真実なんだから」
「そうか…」
「じゃあ行ってくるよ」
いつもは綺麗に拭かれた窓ガラスも数日で汚くなってしまう。
「あの子なら出来るよファリー、なんせあのランバートの…パイプの娘なんだから」
今日の夜もビルの屋上を走る人影が新たな道を作り走る。
………………………………と言うことでパイプ無事完全しました。
こんな終わり方でいいのかといわれたらこれでいいんです。
感がいい人はきがずいてると思いますが、このパイプの続きは繋がります。
それではまた別の作品でまたお会いしましょう。
どうありがとうございました。




