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パイプ  作者: シロマティ
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パイプ中編

彼女は走る、何かに追いつくため。

彼女は走る、何かに追いつかれないため。

彼女は走る、何処までも速く、目的を果たすため…。

彼女は久しぶりに車に乗っている、移動はいつも自分の足、車に乗り込む前に窓を拭いておいたので、いつもは見えない広告が車の中からでもよく見えた。

「あの洗剤、こんど使ってみようかな」

車は都市を離れ、ビルの数が減り一軒家が増えてきた。

「セレムさん、郵便局まで後もう少しですよ」

「はい、でも良かったんですか乗せてもらってますけど」

「ええ、私もちょっと用事がありまして」

車の持ち主は先ほどの依頼者で、私は乗せてもらっている、向かっている先は平和郵便局、鳩のマークが目立つ建物に同業者が待っている。

車は平和郵便局で止まりセレムをおろした。

「それじゃあまた今度、掃除頼むよ」

「はい、おじいちゃんも元気でね」

セレムは見送った後、郵便局に入ろうとしたら、荷物を持って慌て外に出てきた見慣れた男にぶつかりそうになった。

「ああっごめんなさい」

男は落としそうになった荷物をきれいにすくい上げた。

「あの、大丈夫ですか」

「はい、大丈夫です、もう数ヶ月になるんですがまだなれなくて、それでは」

男は変なマークをつけた原付バイクにのり私とは違う形で配達に出かけた。

郵便局に入ると利用者は少なく、従業員の他はすでに受付の人と話をしていた。

私はそのまま空いていた受付に歩み寄った、よく公共の場にはいろんなポスターが貼られているが、ここに貼られているのはほとんどが鳩の絵をモチーフにしたポスターで、清く正しくいつも平和に、と書かれている。

この変なポスターを作って手作業で貼っているのは、この郵便局の店長、平鳥鳩和(へいちょう はとわ)、通称。

「平和さんはどこ」

「はい、いますよ、あちらの扉からどうぞ」

私は言われたとうりドアを開け通路に入り、左右に貼られたポスターを見ずに歩いていたら、従業員と話ながら平和さんがドアからでてきた。

「ハハハ、おや?セレムじゃないかハハハ、今日も元気で平和そうじゃないかハハハ」

「いつもどうりそうですね」

通称、常に頭の中が春で平和の平鳥鳩和の登場だ。

「ハハハ、まあまあそんな事を言わないで、ハハハ、六歩が待っている、一緒に行こうではないか、ハハハ」

私は平和と一緒に行くことになった、この人は常に笑顔だ、だからいつもあの笑顔がきえる瞬間は気味が悪い、まるで春から真冬のような無表情にはなってもらいたくはない。

ついた部屋に入ると窓のカーテンは閉められ光が遮断されていた。

電気もつけずに何か密談をしるかのようで、奥に誰か座っている。

「よくきましたねセレム、待ってましたよ私は…」

とイスに座っている相手をさしおいて平鳥がカーテンを開けていく。

「こんないい天気なのに閉めきったらダメじゃないか、カーテンをしめていい時は夜になった時、誰にも見られたくない行為をする時と」

そして、一つだけ残ったカーテンをチラッと開けて外を見ながら。

「ドラマの感動シーン一歩手前の時だけだ」

「残念な事にそれ布のカーテン、鳩の絵柄の」

それをイスに座っていた女が言った。

「六歩、久しぶりねこの前の仕事以来ね」

「そうよあなたにちょっと合いたくて」

六歩は私と同じパイプ、しかし私と違ってパイプを本職にしている。

「それで、私達が集められたって事は…」

「そうだ、ある荷物を運んでもらいたい」

平和が自分の椅子に座り机を強く叩くと開けたカーテンが全て閉められた。

この時だけ平鳥の顔は真冬になる、笑っていない平鳥は私だけじゃなく、ほとんどの人がみたら気味悪がるだろう。

「物はこれだ、中身を見たが、どうってことないただの携帯電話だった、これをある場所に持って行ってもらいたい」

私達に渡されたのは電源の入っていないただの携帯電話、私達を動かすにはそれ相応の大金が必要、それをこんな携帯のために?

私は疑った。

「誰からの依頼?」

「ある組織のお得意様からだ、まあ信用してもいいだろう、今までも何回か運んでいる」

「それならいいんだけど」


「それなら、場所は別々で、セレムはここに行ってもらう」

机に広げられた地図と渡された地図には同じ個所に印がつけられていた、場所は都市から少し離れた工場近くのビルのようだ。

ご丁寧に部屋の番号まで書いてある。

「六歩にはここに走ってもらう」

六歩にも同じような地図が渡された、少ししか見えなかったが場所は私と反対方向のようだ。

「ただの携帯電話を運ぶだけなんて簡単な仕事ねセレム」

「ええ、この携帯、電源入るのかしら」

「いちようお客様の荷物だから探索はするなよ」

平鳥は地図を閉じて、カーテンを開けながら時間を教えた。

「今から19時までに荷物を届けること、遅れたりした場合は元値の半分をこちらが貰う、それでは笑顔で配達を頼むハハハ」

今は17時過ぎ、ここから目的地まで走るだけでは厳しい。

「難しそうだけど、あれに乗れば簡単ね、セレムも使うつもりでしょ」

「ちょうどあるから使うだけ、六歩も頑張って」

二人は郵便局を後にし、それぞれの目的地に走りだした。

「…と言うことなの、道は出来た?」

「もちろんだ、しかし、平鳥も難しい仕事を渡すようになったな」

セレムはいつもどうりビルを走っている、しかしそのビルの横には電車のレールが通って、先程から地下に潜っていく電車の姿があった。

「で、何時まで待つの?」

「18時15分発の電車がもうすぐ通る、気をつけろよ、4両しかないからな」

「見えてきた」

そこに来たのはランバートがいった通り18時15分発の電車が、地下に入ろうとしていた。

セレムは地下に続くトンネルの真上に跳び、電車に飛び移るタイミングを計った。

「電車に飛び移ったら三駅目の途中で降りて、非常口から登って、地上に出れば目的地だ」

電車がトンネルに近ずく、セレムは飛び移り体勢を低く保ち、すれすれの天井をなんとか当たらないようにしている。

「ランバート、成功した、それじゃあ、降りるタイミング教えて」

電車はそのまま進行した。

「セレム、二駅目を出発してから三十秒後に後ろから降りてくれ、そしたら近くに非常口がある」

「分かった」

セレムは電車の後方により、ランバートにいわれたとうり三十秒後に飛び降りた。

「ふう、なるほど、ピッタシね」

そのまま非常口から目的地の目の前にでてきた。

「ランバート、着いたわ、帰りは自由に帰るから」

「分かった、あんまり寄り道するんじゃないぞ」

時刻は18時55分、正直ギリギリだった、今は部屋の番号を見比べて、依頼者が指定した場所の扉の前にいる。

「ここね」

私はフロントから渡されたカードキーを使った。

「でも、なんでカードキーを渡されたのかしら」

フロントについた時、部屋の番号を聞かれた、そしたら。

「では、これをどうぞ」

と、渡されたのが部屋のカードキー。

「なんで…、部屋には誰もいないんですか?」

「はい、ここ二週間前から予約されて、空き部屋になっています」

「そうですか……」

今はその部屋に立っている、白絹のシングルベット、棚、簡単に一人生活をするための日用品が揃えられていた。

「もうすぐ指定時間……」

私はベランダに近ずき、カーテンを開け窓のカギを外そうとした時だった。

部屋のどこかで着信音が鳴りだした。

「どこ!」

着信音を出していたのは、先程、机の上に置いた配達の携帯だった。

「そんな…電源は入ってなかったのに、どうして……」

恐る恐る近づいて、誰からかを確かめてみると、電話番号だけしか画面に映っていなかった。

私は電話にでてみることにした、もしかするとこれは私にあてられた電話なのかもしれない。

携帯を手に取った。

「もしもし……」

何も返事がない、しかし、少しの間をおいて、男の声がした。

「おお、繋がったか良かった、あなたはセレムさんですか?」

「あなたは誰なの」

「ん?私か、そうだなー、みんなは私を二と呼んでいる」

「二?」

私をどういうつもりで呼んだのかは知らないが、この二と言う奴を問い詰めなくては。

と考えていたら、むこうから一方的に話が進んでいった。

「まぁ、それはどうでもいい、その部屋から窓を見て、むこう側には何が見える?」

いわれたとうりに見てみると、奥には海と道路の向こう側に工場があった。

「ベランダにはでるな、そのまま窓越しに見ていろ」

そうすると男は説明をしだした。

「あの工場は少しだけ有名なんだ、そして、そこの工場長が私の友達でね、ちょっと変な方向にいくことがある友達なんだよ」

「そんな事を話して、いったいどうするつもりなの」

「そんなに怒ることないだろ、そうだ、棚からあるものをとってもらいたい」

私は窓から離れ、部屋の奥にある棚に近ずいた。

しかし、ハンガー以外何もなかった。

「そうだ、なんであの工場が有名なのかは……」

また少しの間をあけてから喋った言葉は、きっとランバートが聞いたら怒り出す内容だった。

「あるパイプが運んだ最初で最後の爆弾、それがはじめに爆発した工場なんだ……」

「それはどういう……」

話そうとした突如、工場の一カ所が爆発、衝撃により窓ガラスにひびが入った。

思わず手放した携帯からは男の笑い声が聞こえた。

「君達パイプには数年前と同じ状況に陥ってもらう、恨みはない、しかし、君達がいると我が組織にとって邪魔なんだ、特に……」

二は話しているがそんなことはどうでも、私はちょっとしたパニック状態になってしまった。

どうしてこうなるの、私達パイプは何も悪いことはしていない、それなのにどうして。

建物の外からパトカーのサイレンが聞こえる、やはり罠だった、私はもう……。

「ランバートは確実に消えてもらう」

「えっ」

なんで?なんでランバートなの、私じゃないの?。

「君はどこにでも行くがいい、今から逃げ道を教えてやろう」

二はそのまま逃げ道を教えてきた、しかし、そんなことはどうでもいい、私を事務所から遠ざけるため、パイプの仕事を送り、ガラスの破片が届かない場所に誘導したのは、私はこいつにとってどうでもいい存在らしい、ただランバートを消すため、パイプを根こそぎ消すために仕組まれた罠。

「……と言うことだ、分かったか?君はもうパイプとは一切関係はない、ただ一人の女として生きろ」

「嫌だ」

扉の向こう側から突撃の合図がきこえる、私はひび割れた窓を壊し、二の用意した道と逆方向…、そう事務所の方に体を向けた。

「言葉の意味が分かっているのか?このまま逃げれば君は警察から逃げる生活から脱出できるんだ、それを捨てるのか」

ランバートにかけても連絡がない、私はランバートが作ってくれた窓拭き…いや、逃亡用ワイヤーを手に持った。

「ランバートは私のパートナー、そして、私に居場所を提供してくれた親でもある、簡単に見捨てられない、私は…」

手に持ったワイヤーをベランダにかけて、いまだに工場は小爆破を繰り返している、私は誓った。

「私はランバートを助け出すパイプをつくる!」

「ならば止めはしない、勝手に捕まれ…あと証拠隠滅ようにけいた……」

携帯は見事、セレムにより真っ二つに割れた。

「壊しといてあげるわよ……、待っててランバート今助けにいく」

時は19時15分、こうしてセレムの逃走劇が始まった……。


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