とある異世界転生とその真実
皆様、はじめまして。
書くって本当に難しい。
いくつもの作品を書き、途中で諦め、そしてやっと完結できた作品になります。
読んでいただけたら嬉しいです。
「俺はこんなことで終わるような人間じゃない」
目の前に迫ってきたトラックを見てそう思った。
目を開けるとローブを被った人に囲まれていた。
みんな間深く被っているので性別や年齢が分からない。
というかそれより・・・
「ここはどこなんだろう?」
身体を起こしてみるとどこも痛むこともなく、手も問題なく動いた。
軽く周囲を見渡すと薄暗い部屋に蝋燭の灯がきらめいていた。
「やったー。
勇者を召喚できましたよ!
これで世界は救われる」
とりあえずはゆっくりしてほしいとのことで、一旦客間に案内された。
しかし先ほどの歓声にはびっくりした。
ローブが脱げるくらい全身で喜んでいたしな。
落ち着いた彼らから聞いたのは驚くべきことだったが、自分には納得のいく話だった。
要点をまとめるとこうだ。
ここはロンダリア王国。
剣や魔法があるファンタジーな世界なのだそうだ。
昔から魔物がいたが、最近強くなって困っていたらしい。
そうこうしているうちに瘴気が濃くなり、魔王をいう存在が現れた。
こうなっては手も足も出ず、異世界から勇者を召喚するしかない。
ということで呼ばれたのが俺なのだそうだ。
「そうだよなぁ。
やっぱり俺は選ばれた人間なんだよなぁ」
ずっと思っていた。
小さい頃からいわれもない不安に追い立てられ、周囲に気をはって生きてきた。
そんな俺を異端児と決めつけ、周囲は何かにつけ虐めてきた。
多勢に無勢。
何を言っても、やっても勝てることはなかった。
ま、俺もただ黙って虐められることはなかったが。
それからの俺は周囲の人に助けられ、剣の扱いを覚え、魔法を操り、そして魔王を倒す旅に出た。
仲間としてロンダリア王国の王女でもある聖女。
次期騎士団長の呼び声が高い公爵子息。
そして何歳か分からないが、名のある魔女という最高のメンバーとともに。
旅は過酷だった。
だが、我々は魔王を倒し、ロンダリア王国を救ったのだった。
王都へ帰還した俺の隣には美しく、気高い王女がいた。
無事帰還した俺はこの世界にいてほしいと懇願された。
どうやらみんな、俺に元の世界へと戻ってほしくないようだ。
今まで虐げられてきた自分が救われた気がしたし、旅の途中で心を交わした王女がいる。
元の世界に帰る気はなかった。
「俺はこの世界に残り、みんなのために生きていきます」
「やっぱりそうなりましたねぇ。
この世界で生きづらい人は逃避願望がありますから」
「新しく開発したこのシステムは、本人の願望をくみ取って、生きやすい世界に没入させるんだったか」
「そうです。
特にこの被験者は小さいころから暴力的で、周囲を威嚇して生きてきたようです。
そのせいで家族は生傷が絶えず、友人と呼ぶ人もいなかったようです。
結婚なんて一生無理だったでしょう」
「で、何で異世界で勇者だったんだ?」
「最近流行ってますからね、異世界転生。
どこかで聞きかじったんでしょう。
『自分が認められないのはこの世界のせい。
理解してくれない周囲、社会が悪い。
俺はこんなんじゃない。
もっと力があって、こんなんで終わる俺じゃない』
とでも思ってたんじゃないでしょうか。
ま、これで通り魔事件も解決ですね。
何を聞いても『俺は悪くない』と叫び、聞く耳をもたないとのことでしたし。
本来ならこのシステムで更生できれば良かったんですが・・・無理だったようです」
「これ、更生できるのか?
無理なんじゃないか?」
「ま、それならそれで凶悪な人間が一人、このシステムのおかげで世の中に放たれない。
良いことじゃないですか」
それもそうかと、白衣を着た二人の男性はカプセル型の機械をちらっと見たあと出て行った。
こんなダーク?シリアス?な話にするつもりはなかったのですが、こうなってしまいした。
いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。