プロローグ
とある城の玉座。
そこは、普段誰も立ち入りできない場所ではあるが、今日は数えきれないほどの貴族達が集められていた。
その空間はざわざわと貴族達の話し声で満たされている。しかし、そんななか、ギィ…と玉座の間の扉が開く音がした。すると、辺りは途端に静まり、貴族達は地にひれ伏した。
カッカッと鋭い靴音を鳴り響かせ、1人の豪華な礼服を着飾った男が前へ進み出てくる。
「女王陛下のおなーーーーーりーーーーー!!!」
すると、男に続いて、コツ…コツ…と静かに靴音を鳴らし、王族の象徴である鷹の紋章を胸に縫い付けられたドレスを着た女性が玉座の間へと進み出てきた。そして、それに付き従うかのように、頭を下げながらモノクルを付けた、性悪な顔をした男性、そして場違いではあるが、とても綺麗に仕立て上げられた執事服を着た青年が入室してきた。
体の軸を全く揺らさずに女性は平伏している貴族達の前を通り、空の玉座の席についた。男達も女性のそばにつき、貴族達を見下ろす。
「顔を上げなさい」
凛とした女性の声が響く。強い言葉遣いだが、その言葉からは嫌な感情は受け取れず、むしろ、聞いていてとても気持ちが良い声だった。
「私が第27代女王という大任を任されたエリアンヌ・アルバティーンです。王は変わったかもしれませんが貴方達がすべきことは変わりません。さらに良い国にするためには貴方達皆の力が必要です。全力で、あなた方の力を私に貸してください!」
「「「「「「「ハッ!!!!!!!」」」」」」」
貴族達は一句違えることなく、忠誠の返事を女王に返した。
女王は再び王の席に着くが、ちらりと横の青年の方を向いた。青年の方も女王と目を合わせて、心で会話する。
(やっと‥‥やっとここまで来たわ)
(ええ、やっと、王座に着く事ができましたね。)
女王は今でこそ、完璧無欠の女王と呼ばれているが、最初からそうであったわけではなく、むしろ子供の頃の評価は今とは真逆の状態のものであった。
(ここまでくるのには色々大変な事があったけれど…私が得た最大の幸運は貴方よ。覚えてる?出会った当時のこと。)
(ええ、忘れるはずがありませんよ。私はお嬢様に拾われて、お嬢様に助けてもらって、お嬢様に沢山のものを頂いたから、貴方の執事になることを決めたのですから。)
思い出される当時の記憶。これを語るにはそう…‥今から15年前。あの日私とお嬢様は出会ったのだ。