チート能力を欲している男に神様はやめた方が良いとおっしゃいました
思いついたから書いて投稿しました。
「チート能力ですか?」
「そう!! 異世界転生と言ったらチートでしょ!! チートで俺ツエーして勝ち組人生を歩むんだ!!」
目の前の男はそう言うが神様である彼は困った顔をしている。
「あのー、そのチート能力ですが、正直やめた方が良いですよ?」
「え? 何で?」
「長い話になりますけど良いですか?」
「あ、ああ」
男の了承を得た神様は話し始める。
「まず、チート能力ですが、確かにそういう力を与える事はできます、どんな相手にも余裕で勝利できますし、かわいい女の子とかたくさん来ますし、ハーレムとかそういうのもできますよ」
「おお、なら良いじゃん」
「でもそうなると、あなた大変な事になりますよ?」
「何で?」
「チート能力を与えるにはあなたの運命を調整しなければならないんです」
「運命の調整?」
「はい、ただでチート能力は作れませんので、チート能力を作ると大体の人が異世界に行ったら次のような生活を送る事になります」
「どんな生活?」
「まず、変な事に巻き込まれたり絡んでくる人が多くいます、その人達の話によると冒険者ギルドという場所に行った時に必ず体格の良い強面な男に話し掛けられたり、さらにクエストを受けると簡単なクエストを受けるとランクの高い魔物が出て来てそれを倒すとギルド長に呼ばれてランクが上がって一気に高ランクの冒険者になります」
「良いじゃん!! まさに異世界生活の勝ち組人生の始まりじゃん!!」
「次にかわいい女の子達がたくさん寄り添って来ます、最初は同じ冒険者が絡まれてたり、パーティーで酷い扱いを受けていたりする状況にピンポイントで直面します、でそれを助けると相手から好意を持たれて一緒になったりします、やがては貴族の令嬢や王族の姫、そして他の国の姫や他の種族の娘達などたくさんの人に好かれます」
「おお!! ハーレムじゃんかよ、最高じゃねえか!!」
「さらには世界を巻き込むような大きな戦いで強大な敵を倒して国の英雄になって、しばらくするとあなたと一緒にいる子達と結婚してさらには領地を貰ってやがて大きな国になって王となりますね」
「完璧じゃねえかよ、何でそれをやめなきゃならないんだよ?」
「そう、確かに話だけを聞けば勝ち組人生と言えるでしょう」
「だろ?」
「ですが、これが休む事なく頻繁に起こるとしたらどうしますか?」
「え?」
神様の言葉に男は首を傾げる。
「良いですか? さっき言った事は確かに勝ち組人生と言えるでしょう、ですがそれがその時だけの場合だったらの話です、ですがそれが頻繁に起きたとしたらです、街を歩けば女の子が困っているもしくは悪い男に絡まれている、それを助けて女の子に感謝されるでも今度はその女の子の家族に大変な事が起きる、でそれを助けるために必要な物を手に入れるために行動する、そして助ける、そして感謝される、こんな事が繰り返されます、この場合貴族や王族だったら望んでもいない結婚をさせられる、もしくは国の反乱が起こる、それをどうにかするために行動する、解決したら感謝されて好意を持たれるかあるいは婚約させられるかですね、それが頻繁に起きます、漫画とかの行く先々で何かしらの事件が起こるか巻き込まれるかという事が頻繁に起こります」
「ひ、頻繁に」
「そうです、もう分刻みのスケジュールのように起こります、あなたのようにチート能力を持った方達も最初はその勝ち組人生に喜んでましたよ、でもそういうのが頻繁に起こると人間ですから必ず飽きてきますし、めんどくさいと感じてきます、だからそうなったら別の事をしたりして退屈しないようにしますが一度そういう事をしてしまったら本人が嫌でも周りのヒロイン達が彼なら大丈夫、何とかしてくれるって言って結局助けるように行動する事になります、それが大人になっても結婚して子供ができてお父さんになっても続きます、さらにおじいちゃんになっても続くでしょうね」
「おじいちゃんになっても続くのか!?」
そこまで行くのかと男は驚愕する。
「続きます、おじいちゃんになって老後のスローライフなんて望み薄だと思ってください、老骨に鞭打って死ぬまで働けというブラック企業な感じの人生になりますね」
「そ、そんな」
「チート能力は本来その世界の人達にとっては常識を超えた存在なんです、そんな力を持った人が世の中のために何もせずに暮らすなんて人が許しても神々が許さないでしょうね、だから運命をそういう風に調整するんです」
「嘘だろ」
「まあ、長々と言いましたが、要はチート能力を与えても良いけどそうしたら面倒事が休む暇もなく毎日のように来てそれがおじいちゃんになっても続くから老後ののんびりとした生活ができなくなるけど良いの? って事です」
「・・・・・・チート能力はいらないから、それなりに幸せな勝ち組人生を送れるようにしたい」
「それでしたら、あなたが転生する世界でそれなりに良い力を与えますけど、どうなるかは今後のあなたの努力次第になりますけど良いですか?」
「チート能力でそんな面倒な生活になるくらいなら自分で努力するくらいなんともないよ」
「わかりました、ではそうしますね」
神様は力を与えて男を異世界に転生させるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
こうなる可能性があるとわかったらあなたはチート能力が欲しいですか? 欲しくないですか?
というお話でした。