表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/103

通りすぎた奴/眉村卓 短編集 77年

2023年6/13〜6/15 タブレット端末にて執筆し脱稿 新規割り込み投稿 眉村卓先生の作品やアニメに映画も別館である此処に置いときます

【 此の世と彼の世を隔てる境い目なんてもしかしたら存在しないのかも知れない 例えば自分が空襲で死んで数十年もの時が流れた世界線に迷い込んだり 違う道に進んだ末に凶悪犯罪者として官憲に追われる自分と入れ替わったり…… 今ならシチュエーションホラーか幻想譚扱いかも知れない9つの短編集 案外ペルソナシリーズとかシュタインズ・ゲートに嵌まったお客様向け そういや眉村卓先生の作品って私が小学校低学年時代はジュブナイルの王者でしたね テーマやストーリーが子供には微妙に難解だったけど現実が何時ひっくり返るか分からない不安感だけは覚えてます 】


★ちなみに大林宣彦監督&薬師丸ひろ子様版"ねらわれた学園"は違う意味でトラウマモノでした 原田知世さん主演のTVドラマ版は見てません


日本 SF幻想文学作品

眉村(まゆむら)(たく)

1977年立風書房刊 1981年角川文庫化

❖多分少年誌掲載作品だと思うけど文庫版は色々カットされてるので御免なさい


 令和5年6月13日 相変わらず原因不明の手足の痒みに手古摺ってます 対処療法になるけど痒み止め塗ってますが収まるかな此れ(涙) 図書館でお目当ての作品探してみたけど例によって貸し出し中 折角だから献本で並んでいるかなり年季入った文庫本を数冊 多分ぎりぎり昭和生まれな私達よりも一世代前のSF小説好きだったお客様なら覚えているだろうけど 平成生まれが大半締めるこのサイトなら誰?となるこんな作品を 小見出しにも書いた通り私の場合、眉村作品の初体験は彼の薬師丸ひろ子様主演のなんかもうわやくちゃと言うか物語最後まで正気度(SAN値)ガリガリ削られる昭和の迷作"ねらわれた学園"でした 後年オリジナル続編+アニメ化したバージョンは軽く通しで見たけれど前作知らないとこの人誰だよと戸惑う描写多かったのでそのうち取り上げようとサーバーに残しつつも半ば封印状態


兎にも角にも其れなりに楽しめた短編集を纏め上げてから まずはレンタル終了となる前に実写版から再挑戦 とは言えかなりマニアックな作品ですので割と余裕有る別館投稿で済ませる予定です でお腹に目玉なラスボス登場し何なんだこの作品だったので 其れなりに時を経た高校時代に昼飯仲間の同級生から此れ滅茶苦茶面白いよと貸してくれた "時空(とき)の旅人 86年(盗まれたスクールバスの改題&劇場アニメ版)" は良い意味で滅茶苦茶衝撃的でした 萩尾望都(はぎおもと)先生キャラクターデザインのキャラクターは劇画調でかなり骨太 あんまり好みに合わなかった筈なんだけど何故か感情移入しちまって泣いたり笑ったりと忙しくってなぁ 考えてみるとこの人の作品って本来なら変えられない過去の悲劇を未来から来た少年少女達が何とか防ごうと動いたりなんてモノの先駆けだったんじゃ無いかと 今回紹介する本作は時かけでは無く平行世界に転移しある者は悲劇的な最後を或いは現実世界に居場所が無い主人公が生き甲斐見付け出す等様々 基本書籍作品は敢えてオチボカしてますが眉村先生の作品は今となっては大概入手困難 色々細かい遣り取りやら独自解釈入りますがネタバレ全開で進めます



■第1話 : (むな)しい帰還(きかん)


★高度成長期の流行り言葉 人間蒸発(今で言う失踪事案) 誰にもその素振り見せず消えた人々は、ある日ふと思い出した様にこの世界へ帰って来る PTSDによる一時的な記憶喪失も多々有ったそんな時代の怪異譚 ところで栗田進は本当に自分が居た世界に帰って来たのか? 敢えて其れは明かさないのが意地悪です


 もしかしたら世界は貴方が下した判断や環境により絶え間なく平行世界を分岐させているのかも知れない 1945年8月15日に終わった大東亜戦争は平行世界では8月16日まで続いていた たった1日の違いが生死を分ける 敗戦から既に30年以上、妻子有る勤め人 栗田(くりた)(すすむ)が会社が半ドンの土曜日にふと思い立ち列車で向かったのは親族が今も暮らすかつての疎開先・岡山 ひ弱な文学少年を生まれ変わらせたあの場所は今どうなっている 在来線の中でふと眠り込み目を覚ました時にはもう手遅れだった 迷い込んだ世界は1日だけ戦争が続き故郷を焼き尽くした空襲によりこの世界の主人公と両親は幼い弟を残し死んでいた 頼るべき親族もたった1人生き残った弟からもバケモノとして忌避された栗田が漸く元の世界に生還果たしたのは其れから2年後 会社は無断欠勤で解雇され悲嘆に暮れた妻子は通勤列車に飛び込み自殺 そんな事なら俺は戻って来るんじゃ無かったと嘆く主人公のモノローグで幕となる。



■第2話 : 窓の(あかり)


★海外でも似たりよったりな現状らしいが、得体の知れない余所者に紛れ込んで欲しくないと基本住宅(日本の場合は住宅団地も含む)のみに限定しスーパーや小売店等を殆ど排除したニュータウンは買い物難民化した高齢者の孤独死が多いらしい 家の近所にあるアレも夜は殆どゴーストタウン化してるしな


 新興住宅地(ニュータウン)から少しだけ郊外に建てられる途中で建築が頓挫したままのそのマンションは内装工事も施されておらず誰も住民居ない筈なのに夜に煌々と灯りがともり誰かが住んでる気配が有る ニュータウンに入居する筈の新しい住民の行方不明事案を追う隣町からやって来た記者兼編集長とカメラマンのコンビはその謎を追うが待ち受けていたのは恐ろしい野犬の群れ 万事休すとなった所で現れた救いの手は行方不明となった住民達 彼等は異界と化したこのマンションで割と快適な生活送ってるらしいが元の世界に戻る方法は無い 助け出された編集長は20人目の入居者となり新たな獲物が来るのを待ち構える事になった。



■第3話 : 疲れ


 日曜日の自宅前、夕餉の前に玄関に並べた植木の水やりやってたら いきなり侍姿の不審者に刀で斬り殺されそうになる家主の小島(こじま) だが悲鳴聞き付け飛び出した妻やご近所さんには侍姿の男が認識出来ない 取り敢えずオカルト研究家な友人の岸本(きしもと)に相談だ 昼下がりオフィス街でも薩摩の芋侍の様に叫び声上げ刀手に襲い掛かる不審者相手に命懸けな追いかけっこ なおまたしても周囲の同僚や通行人には侍が見えていなかった 岸本によると其れは隙間風と呼ばれる精神的にぽっかりした瞬間現れる有る種のイドの怪物らしいと判明する 狙われた者が一番恐れる存在となり襲い掛かる其れに捕まれば待っているのは死のみ 岸本を苦しめている其れは文楽の絡繰り人形らしい だが禄な解決策も示されないまま岸本を襲った何かは彼を追い詰め車が行き交う道路へ飛び出ささせた 跳ねられ即死状態の親友の元へ駆け寄る主人公にやがて訪れるで有ろう死のイメージ残し物語は幕を閉じる



■第4話 : 青白い月


 運動部に所属する大学生の橋本(はしもと)建治(けんじ)が平行世界に迷い込んだのは偶々立ち寄った古い中華料理店で腹拵えし 先輩やOB宅を訪問し寄付金集めるため商店街を突っ切ろうとした矢先 大雨の中、彼を待ちわびる見知らぬ女性 ポケットの硬貨も取って置きの千円札も全く違うデザインに変わっており彼女=竹田てるよの話と偶々手に入れた新聞によるとこの世界の橋本はどうも強盗殺人事件起こして官憲に追われてる最中だと判明する 奪った端金抱えW温泉へ列車で逃避行 だが色々有って呆気なく追い縋る刑事達に取り押さえられ収監された橋本にしてみればあまりにも理不尽な結末 もしかしたら僕は狂ったのだろうか? 悩む主人公をゾッとさせたのは留置所を照らす不気味な文様入った青白い月 



■第5話 : ブレザーコート


★イギリス生まれでウインタースポーツ向けに開発されたブレザーコートの語源は"炎"や"火炙り" オチ読んでお分かりでしょうが多分作者の悪ふざけ全開なショートショート


 日本有数の異世界大阪府(笑)へ出張命じられたサラリーマンが 何かムカついたから選んだファッションは黒いタートルネックのセーターに駅前のデパートで何故か特価セール品となっていた緑と白のブレザーコート 地味なカラーリングのトレンチコートに上下鼠色のスーツばかりな他のリーマンとは一味違う 大阪支社へ一発ガツンとかまそうと意気込む主人公に襲い掛かるのはモーニング姿の不気味な老人達 異端として取り押さえられた主人公を待ち受けていたのは生け贄の儀式だった………… どうも途中から本当に異世界に迷い込んで居たらしい



■第6話 : 切断


 自分の周りだけ時折時間の流れがゆっくり流れ苛々が止まらない 売れっ子コメンテーターの新田(にった)を困らせるこの現象はどうもストレスが関係してる テレビ局での番組収録が押してラジオ生放送の人生相談に間に合わないかも知れない 何とかぎりぎり間に合い担当ディレクターに嫌味ぶち撒けられた挙げ句、頓痴気にも程が有る電話相談を無茶振りされた彼は遂にブチ切れる こんな瑣末事に囚われてる場合かよ 馬鹿馬鹿しいから俺は帰る スタジオの時間をゆっくりにして独り加速装置を稼働させた新田は何もかも放り出す。



■第7話 : ある夜の話


★見ず知らずの赤の他人が意気投合し杯を重ねる 殆どのバーやレストランにビストロが予約制となった令和の沖縄では絶滅した文化だけど本州ではどうだろう?


 平安時代の文化風習に恋愛模様を題材に小説を一本 売り言葉に買い言葉で無理難題を押し付けられ自棄酒煽る小説家に売り込み掛けてきたのは 元々は小さな自動車販売会社のサラリーマンだったらしい植木(うえき)孝治(こうじ) デパートの出入口で行倒れてた変な格好に変な名前の青年ツルタビに声を掛けてみたのが転機の始まり この時代の海外産ピックアップトラックに偽装した彼の愛車は事もあろうにタイムマシン パトカーに追われ平安時代の京都へタイムスリップ 此処の廃墟を根城にする棄民メインの盗賊団に加担し大暴れするも官憲に追われ後に彼の妻となる野寺(のでら)もトラックに乗せ再び150年後へジャンプ 殺人や放火を繰り返すツルタビに内心愛想尽かしてた植木は隙を付いて未来人を置き去りに今度は源平時代から20世紀へジャンプ だがその顛末を語った植木は翌日には妻も平安時代に書かれた貴族の礼儀作法に関わる文献もそしてタイムマシンだと言うピックアップトラックも姿を消していた 語り部の小説家が頭抱えたのは豪放快楽にも程が有る未来人ツルタビの生き様とその容姿 もしかしたら彼こそがあの牛若丸=源義経じゃ無いのかという懸念 勿論結論は出そうにもない 



■第8話 : ネズミ


★まんま孤独な灯台守連想させる男は何者なのか? 終末を告げに現れた女は…… いやこの物語に登場しているのはそもそも人間なのか? 深読みすると怖い事になりそうです


 地下の小さな部屋に備え付けられているのはテーブルとメモ帳に1台の電話機 初老を過ぎた名無しの男に充てがわれた仕事は電話越しのメッセージを正確に綴ったメモを管理し何れ掛かって来るで有ろう伝言の問い合わせに答える大切な任務 雇った従業員はあまりに退屈な癖に責任重大なその仕事嫌がり皆んな辞め唯一の家族だった妻を先日亡くした名無しの男にも限界が訪れようとしている 突如現れた正体不明の女が事務員に入り上層階でどうやら大惨事が起こったその日、もう此処に電話は掛かって来ません今迄ご苦労さまと御役御免となった男を驚かせたのは街を逃げ出す無数のネズミの群れ 漸く何もかも終わるのだ解放感と寂寥に駆られ涙流す男はひたすらバンザイを唱える。



■第9話 : 通りすぎた奴


★多くの人々が思いもつかない行動力を示す個人を崇拝する馬鹿は幾らでも居る でも其れを成し遂げた聖者が目の当たりにしたのは…… 後年まんまそんなシチュエーションの困った物語 "フォレスト・ガンプ" なんて作品が有りました


 その世界は横に広がる部屋とテナントフロア 二万五千百三十の階層が重ね合っている 横の移動は地下鉄で上下の移動は列車の様に多くの乗降客が利用するエレベーター 何方も勿論有料でそんな物を使わないで移動するなら歩くかコンクリートで固められた長い長い階段を上り下りするしかない ただ自分の脚で世界の果てを目指したい、例え道半ばで斃れたって構うものか 《語り部》が仕事返りにあの変わり者の《旅人》と出会ったのは三年程前のことになる 四百二十三階と四百二十四階を繋ぐ階段の半ばに腰を下ろし通りすぎる輩やフロアの風景をスケッチする彼を絵師だと勘違いし空回り 


再び《旅人》と再会したのは其れから一年後の九千五百階 文無しな上に空腹で行き倒れていた彼に食事を与え《エレ弁屋》の仕事を紹介 1ヶ月間真面目に働き旅費と生活費を手にした《旅人》は再び階段上り世界の果てを目指す旅へ出る そういや明日はそろそろ《旅人》が最上階へ辿り着く頃か 幸いにも明日は休日、辺境行きの特急エレベーターで目的地へ 何時もならガラガラな筈のエレベーターは何時のまにか《聖者》と崇め奉られた《元旅人》の信者が目白押し 多くの崇拝者が見守る中、ただひたすら階段を上り続けた《聖者》は次は何処を目指す? 多くの人々に担がれる形で《聖者》は否応もなくフロアの縁を取り囲む透明な窓から外を目指せと押し出される もし私は《聖者》なんかじゃないと否定しようものなら何をされるか分からない そして《元旅人⇒聖者》は神として祀られるために暗闇の向こう側へ 彼が何処へ辿り着いたのかは誰にも分からない


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ