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さくらもみじ
雲だか霧だか分からない
冷たく細かい水の粒の中
差した傘から雨音はしない
早起きな白猫が通りの角の鳥居の前で
ぷるりと身を震わす
春は花の衣で温かそうだった神社の桜
今は数枚の赤い葉を纏うのみ
灰色の空に伸びる枝が寂しげだ
風に揺られまたひとつ
はらりと葉が落ちる
見ると
足元には桜紅葉の絨毯が広がっていた
しっとり濡れた
赤黄橙の錦の上を贅沢な気分で歩く
少し重めのガサリカサリ
すると確かに匂ってきた
甘く上品なあの香りが
そうだお前は桜だものな