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棄てられ王子の最強イカダ国家 ~お前はゴミだと追放されたので、無駄スキル【リサイクル】を使ってゴミ扱いされたモノたちで海上都市を築きます~  作者: タック
第四章 海上機動都市VS城塞浮遊都市

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エピローグ 棄てられ王子の最強イカダ国家

 無事に住人たちを救出し、パルプタの最後の脱出者はノアクルになった。

 主と魔力源を失ったパルプタは、海面にゆっくりと落ちて漂っている。


「ふ~、今回も何とかなったな……」


 魔大砲の力でアークノアクルとなったあと、すぐに元の状態に戻ったのだがとんでもない気怠さが襲ってきていた。

 きっと力の反動が押し寄せてきているのだろう。

 今すぐに眠りたいと思いながら、海上都市ノアへと帰還した。

 そして、最初に出迎えに来ていた人物は――


「げっ、ローズ……」


 無言、無表情で立つ少女であった。

 その顔を見てノアクルは思い出す。

 もう危険なことはしないと言って舌の根も乾かぬうちに自らが敵陣に乗り込む作戦を実行して、しかもローズに関してはロープでグルグル巻きにしておきながら『住民が救出されたタイミングでまだ俺が戻ってなかったら、俺の座標に魔力排出術式の魔大砲を撃ち込んでくれ』と一方的に言いつけたのだ。

 現在、ローズの機嫌がどうなっているのか推し量るまでもない。


「えーっと、その……なんだ……」


 ノアクルは気まずさから明後日の方向に視線をやりながら、『何か言い訳浮かべ!』と必死になっていた。

 ローズは何も聞いていないかのように、フラリと近付いてきた。


「ちょっ、待て! 話せばわかる! 今の俺はボロボロだから殴られると本当にヤバい! ……って――え?」

「殿下……戻ってきてくださって本当によかった……」


 怒りのパンチを食らうかと思いきや、ローズは泣きながら抱きついてきた。

 これは罠かと訝しんだが、彼女の身体が小さく震えているので本当の気持ちなのだろう。

 そこへジーニャスがやってきたのだが、二人を見て目を覆ってしまった。


「にゃはは。味方の損害ゼロで、住人全員を無事救出しましたにゃ……と報告しようと思ったのですが、今はお邪魔でしたかにゃ~!」

「ああ、どうやらモテモテのようだな。さすが俺」


 ノアクルは調子に乗って、鼻を高くしてふんぞり返っていた。

 それを見たローズは、顔を真っ赤にしてバッと離れた。


「こ、今回はお手柄でしたが、それはそれです……殿下! 一国を預かる者としての心構えをあとで徹底的に座学で叩き込みますわ!」

「ははは! どんとこい! ……ところで具体的にどのくらい座学をやるんだ?」

「毎日、十五時間ほどですわ」

「……」


 ノアクルは疲れとショックで、立ちながら気を失った。




 ***




 寝室に運び込まれたノアクルが目を覚ますと、看病してくれていたトラキアとアスピがいた。


「せっかくの目覚めに華々しさゼロだな……」

「運んできてやったってのに、ストレートすぎる感想だな、兄弟!」

「やっと起きたか。一応、事の顛末を話しておくぞい」


 ひとしきり話を聞いたあと、ノアクルは一人で部屋を出て甲板へと移動した。

 そこから見えたのは海上に浮かぶ城砦浮遊都市パルプタと、こちらに注目する住人たちだ。


「ノアクル様だ!」

「我らをお救いくださった英雄!」

「真のアルケイン王国の後継者!」


 大歓声が巻き起こった。

 どうやら疲れ果てた住人を労るための宴が行われていたようだ。

 普段なら甲板で火気厳禁だが、今は特別にバーベキューなどが行われている。


「ノアクル様、家族が無事助かりました! ありがとうございます!」

「あと少しでシュレドのやつに殺されてしまうところでした……」

「まさか我らを生贄に捧げて恐ろしい魔術を使っていたとは……。ノアクル様が助けに来なかったらと思うとゾッとします……」

「もうアルケイン王国は信じられません……どうか我らを受け入れてもらえないでしょうか?」


 アスピから聞いた話によると、どうやら住人の大半が海上国家ノアへの移住を望んでいるそうだ。

 ただこれにはいくつか問題がある。

 一つ目は場所だ。

 いくら海上国家ノアが大きいからといって、現状でそこまでの人数を受け入れるのは難しいだろう。

 そこで廃棄されたパルプタをスキル【リサイクル】で取り込むことにした。


(どうせ数日で海中へ沈んでしまうらしいし、それなら有効利用しても構わんだろう)


 二つ目の問題はアルケイン王国だ。

 元々、パルプタはアルケイン王国の都市なので、いきなり大規模な住人の受け入れは外交問題に発展する可能性もあるだろう。

 元々外交問題は起こりまくりの状況だが、それでも追加で起こるとローズに怒られてしまう。

 そこで〝可及的速やかに対処すべき状況〟として、一時的に受け入れるということにした。


(まぁ、ローズがアルヴァ宰相に連絡を付ければ、悪い方向にはならないだろう)


 ノアクルは住民の方へ手を振ってから、バーベキューの肉をひとつまみしてヒョイパクと口の中に入れた。

 そしていつものように特等席であるハンモックへと移動して横になる。


「さすがに今日は疲れた。あとは明日の俺がなんとかしてくれるだろう……」


 そのまま二度寝しようとしたのだが、バサッという音と共にムルが降り立った。


「ね~ね~? 新しいベッドを開発してくれる約束は~?」

「うっ、そういえばそうだったな……」


 次にジーニャスが大急ぎで走って来た。


「ノアクル様! パルプタが予想以上の速度で沈んでいますにゃ! 作業日程を繰り上げますにゃ!」

「まじか~……」


 最後にローズが怖い顔で現れた。


「さ、起きたのなら座学の時間ですわ」

「冗談じゃなかったのか……」


 三者三様に囲まれたこの状況、逃げられる気がしない。

 諦めて、海上国家ノアの主として振る舞うしかないようだ。


「やれやれ、このイカダから始まった国家も大きくなってしまったものだな」


 そう独りごちて、ハンモックから降りた。


「優先順位的にパルプタからだな。俺のスキル【リサイクル】で使えるゴミを再利用してやる!」


 潮風が頬を撫で、天高く雲が流れ、今日も海上国家ノアは大海原を進んでいくのであった。

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漫画:フミキチ先生
原作:タック


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