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棄てられ王子の最強イカダ国家 ~お前はゴミだと追放されたので、無駄スキル【リサイクル】を使ってゴミ扱いされたモノたちで海上都市を築きます~  作者: タック
第四章 海上機動都市VS城塞浮遊都市

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ムル・シグVS古代再生兵器ハート

 ふわぁ~とアクビをしながら、ムルは扉を開けた。

 そこは他の部屋と同じ作りになっていて、ハーピーであるムルを見た住人たちが同じように不安の声をあげていた。


「ひぃっ!? 人間じゃない!?」

「シュレドが送り込んだモンスターか!?」

「こ、殺される……」


 ムルには聞こえていたのだが、まったく興味を示さなかった。


「ね~ね~、ノアクルに住人たちを助けてこいって言われたんだけど、今から助けてもいいよね~?」

「ノアクル様の配下か!? それならよかった、助けてくれ! その台座のスイッチを押せば鉄格子が開――」

「え~? 鉄格子を壊しちゃダメ~?」

「で、できれば普通に開けてほしい……」


 このノンビリした口調のムルに頑丈な鉄格子を破壊できるとは思わないが、住人たちは何か異様さを感じ取ってしまう。

 ムルはそんなことを一ミリも理解できず、面倒臭そうな表情をしながら台座に近付いていった。

 そして――


『ガードロボット〝ハート〟起動。侵入者を排除する』


 古代兵器〝ハート〟が出現した。

 異様な模様が全身に入った、目も口もない人の形をしている。

 表皮は金属の輝きをしているので、もちろん人間ではない。


「うーん、敵だよね~? 壊しちゃうけど、ごめんね~」


 ムルは常人離れした怪力が乗った足で蹴り上げた。

 命中したハートは右腕が千切れ飛び、たたらを踏んで後ろへ下がる。


「す、すげぇ! あのハーピーつえぇぞ!!」

「わけのわかんねー機械が出てきたけど楽勝じゃん!」


 住人たちは手の平を返したように湧き上がったのだが、ムルは首を傾げていた。

 それは住人たちの薄情な反応に対してではなく、ハートへの違和感だ。


「……何か、手応えが軽い~?」

『ダメージを検知。右腕損傷。再生を開始する』


 ハートの千切れ飛んだはずの右手がさらにバラバラになり、浮き上がり、身体の方へくっついて元通りの右手を再構成していく。


「な、なんだありゃ!?」

「ひえっ、人間の形をした小さな鉄なのか……!?」


 ハートの異様な模様は、ただの模様ではなかった。

 それは金属のパーツが組み合わさった線だったのだ。

 ダメージを受けたときも千切れ飛んだのではなく、自ら切り離していた。

 再びそれらをつなぎ合わせれば元通りだ。

 そうすることによって、擬似的に再生することができる。


「ほえ~、器用だね~」

『分析完了、反撃する』


 ハートは細かいパーツを組み換え、チェーンソーのような手を作り出した。

 そして――それでムルを無慈悲に切断した。

 ムルは声もあげず、羽根が飛び散り、いくつかのパーツに分かれて地面に落ちる。


『部屋の外で焼却処分とする』


 ハートは、ムルだったものをドアの外へと放り投げていく。

 そこへ火炎放射器を吹き付けて丁寧に燃やす。

 部屋の中でしなかったのは、捕らえている住人に悪影響が出ないためだろう。

 密室での火炎放射器は大変危険だ。


『消滅確認』


 ハートは部屋の中にゆっくりと歩きながら戻る。

 住人たちはそれを見て愕然とするしかない。


「そ、そんな……せっかく助けに来てくれたと思ったのに……」

「諦めろよ……身体をバラバラにされて燃やされちまったんだ……」


 ムルがハーピーだったとはいえ、王子であるノアクルが寄越してくれた助け船だったのだ。

 それが無残に殺されて、住人たちの気持ちはムルへの申し訳なさでいっぱいだった。

 同時に、もう助からないというのも悟った。

 こんなにも強いハート相手ではかなう相手もいないだろう。

 しかし――


「うーん、久しぶりにちゃんと目が覚めちゃったよ」

「は?」


 住人たちは我が耳を疑った。

 ムルの声が聞こえたからだ。

 爛々と輝く金色の瞳も見えた気がした。

 それと同時にドアの外から手のようなモノが伸びてきて、ハートの身体を掴んだ。


『分析不能、これはハーピーではない。何らかの――』


 ハートはドアの外に引きずり込まれ、姿が見えなくなった。

 完全なる無音。

 両者の声さえも聞こえなくなり、住人たちはドアの外をジッと凝視していた。


「ど、どうなったんだ……?」

「理解が追いつかない……」


 誰一人として状況がわからなかった。

 しんと静まりかえり、緊張の面持ちで待つ。

 そして数秒後。

 ドアの奥から何食わぬ顔で、傷一つない元の姿でやってきたムル。


「ただいま~、それじゃあ助けるね~」

「あ、ああ……ありがとう……」


 そこにあるのは、住人たちが助かったという事実だけだった。

 それ以外は異様すぎて誰も聞くことができない。

 ムルはただ、再び眠そうにアクビをするだけだ。

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こちら、コミカライズ版です!

漫画:フミキチ先生
原作:タック


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