ノアクルVS強欲の魔人ランドフォル
「言えなかっただけで、ゴミ関連はずっと前から評価していましたよ」
ジウスドラは幼少期と変わらぬ笑みを浮かべたあと、ガクリと倒れそうになった。
そのままツァラストに支えられ後方へ下がった。
きっとこの戦いで――いや、今まで小さい頃からずっと無理をしてきたのだろう。
この目の前の強欲の魔人からノアクルや、アルケイン王国の民を救うために。
「ほう、ノアクルか。我がこの名前で会うのは初めてだな」
「父上――いや、強欲の魔人ランドフォルか」
「ククク……この身体的には息子だな。どうした、父とは戦いにくいか?」
「いいや、俺はジウスドラほど頭が良くないからな。シンプルにお前をぶっ飛ばしに来ただけだ」
「まったく、〝欲〟の一つも無いつまら――」
激突音。
言葉を言い終わる前に、玉座に座っていたランドフォルはロケットパンチのような巨大な拳に潰されていた。
それはノアクルがスキル【リサイクル】で、先ほどの巨大な手の平を再構成したものだった。
「ほう、ランドフォル。お前はゴキブリのような生命力を持ってるな」
そうノアクルが嘲ると、ランドフォルは不機嫌そうな表情で巨大な拳をどかして出てきた。
「話を遮ったあげく、我を害虫呼ばわりか……」
「だってお前、自分一人じゃ何もできないからって国に寄生してる害虫だろう?」
「……ここまで我を愚弄するとはな。よいだろう、格の違いをわからせてやろう。魔人スキル【悉く癈棄する故き強欲】」
ランドフォルが空中に手を向けると、天空に巨大な剣がいくつも出現した。
天井の大部分が壊れているので見えるようになっているのだ。
それが次々と連続でノアクルの頭上に降ってくる。
「スキル【リサイクル】……!」
一本目を分解、拳として再構成して二本目とぶつける。
その瞬間に速度勝負で負けると察した。
三本目を分解、今度は盾として再構成して四本目、五本目を防ぐ。
六本目で盾が砕かれる。
さらに降ってくる速度が上がってきて、現状のスキル【リサイクル】では対処ができない。
「チッ、さすが一国を資源大国にした物量ってやつか……!」
ノアクルは大きく横へ飛んで回避をする。
巨大な剣が次々と、二階にある王の間を串刺しにしていく。
数十本が刺さる頃には、地面がひび割れて崩落していた。
「ノアクル様!?」
「ノアクル王子!?」
幸運にも崩落に巻き込まれなかったジーニャスとステラが叫ぶが、ノアクルは平然とした口調で返す。
「大丈夫だ、問題ない」
「ククク……余裕そうな顔も汚れてしまって見る影もないな」
「早くお前を倒してシャワーでも浴びたいところだな」
少しだけ砂ぼこりで咳き込みながらそう答えた。
「ノアクルよ、我の無限にも均しい強欲の力と違い、お前のちっぽけなスキルでどう戦うというのだ?」
たしかに現状はそうだ。
それに加えて、ランドフォルにダメージを与えても海神から吸い取っているであろう不死の力で倒すことができない。
非常に厄介な相手だ。
「ノアクル、お前は我相手には何もできない! このままゴミとして絶望し、我の依代となるのだ!」
「万事休す――……なわけないだろう」
「……なに?」
「お前はゴミを勘違いしている。ゴミとして捨てられたモノだって、使える奴らはいっぱいいるぞ――アイツらのようにな!」
その瞬間、王都の四ヶ所で爆発が起きた。
それは海神封印装置があった場所だ。
「なんだと……!? 海神の力が供給されなく……!?」
「さぁ、第二ラウンドの始まりだ。強欲の魔人ランドフォル!」
ノアクルは城の瓦礫をゴミと認識して、複数の槍として急激に伸ばす。
それを二階の玉座から見下ろしてきていたランドフォルへと撃ち放った。
「チィッ!!」
ランドフォルは玉座ごといくつもの槍に攻撃され、二階のフロアは完全に崩れ落ちた。
「どうした、腕を怪我しているじゃないか? もう治らないのか?」
「キサマ……我に傷を……」
ノアクルと同じ一階の地面に引きずり下ろされた形となったランドフォルは、初めて怒りの表情を見せていた。
「この程度で我に有利を取ったつもりか!!」
ランドフォルは怒声をあげると、巨大な剣を十本――いや、以前よりさらに多い二十本ほど作り上げてきた。
空中に浮かぶそれを落とされたらどうなるか、以前のノアクルならスキル【リサイクル】のキャパオーバーで終わりだ。
「死ねぇっ!!」
ランドフォルの声が響き渡った。





