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棄てられ王子の最強イカダ国家 ~お前はゴミだと追放されたので、無駄スキル【リサイクル】を使ってゴミ扱いされたモノたちで海上都市を築きます~  作者: タック
第九章 幸せの街ガンダー

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宝石の散り際

「ジュエリン……お前……」

「トレジャン船長、無事でよかったわ……」


 トレジャンがジュエリンの元へ駆け付けるが、心臓に銃弾を受けていて助かりそうになかった。

 息も絶え絶えで声を出すのが精一杯らしい。

 キリィはというと、特に追撃を仕掛けるでもなく満足そうな笑顔を向けてきている。

 鑑賞してるのでどうぞ続けてください、と言わんばかりだ。


「アタイはずっと心配だったわ……。ジニコちゃんを失ってから、表情にも口にも出さないけど本当に辛そうだったもの……。だから、フランシス海賊団を抜けたときも一緒について行ったの」

「ああ、それくらいは知っている」

「ふふ、素っ気ない人ね。そういうところも好きだったわよ。アタイは愛されるより、愛したいんだもの。あなたの部下でよかった」


 ジーニャスは涙をボロボロと流していた。


「ジュエリン……お姉ちゃん……」

「あら、また昔みたいにそう呼んでくれるの? 最後くらいはあなたの姉みたいな存在でいられたかしらね……。あなたも死ぬまでには愛する人くらい見つけるのよ、海賊の一生は短いんだから……先輩女海賊の最後の……アドバイスよ……」


 ジュエリンは最期にその言葉を遺して、フッと全身の力が抜けた。

 その顔にトレジャンが手をやって、目をつむらせてやっていた。


「ブラボー!!」


 目を見開いたキリィは力強い拍手をする。


「とても良いモノを見せて頂きました!! 素晴らしい死です!! そうかぁ、こういう死の演出もいいなぁ……!! ああ、やはりトレジャン君は新しい可能性を見せてくれる!! ありがとう!! 感謝しても、しきれません!!」

「クソ野郎が……!」


 いつも感情を抑え気味のトレジャンだったが、今だけは怒り狂った表情をしていた。

 しかし、致命傷ではないが身体に神の弾丸を受けた直後だ。

 まともに戦える状態ではない。


「さて、私としてはとても楽しませて頂きました。ここで幕引きとして、綺麗にフィナーレを飾るのが相応しいと思います」


 キリィは最後の銃を手に取った。

 銃口は弱っているトレジャンに向けられていた。

 引き金にかけられる指。


「これでお別れです、私のための最高のショーをありがとうございます」

「……こんなので終わりじゃないです」

「おや?」


 それまで動けなかったジーニャスが、俯きながら立ち上がった。

 その表情は見えない。


「今回はシープ・ビューティーに動けなくなる時間を指定しておいたのに、予定より早い。おかしいですねぇ……」

「ジュエリンお姉ちゃんが渡してくれていた、体調管理の力を持つ宝石……そのおかげですよ……」

「なるほど~。今後の参考になります」

「テメェのような外道に今後は必要ありません。海賊として決闘を申し込みます」


 それを聞いたキリィは笑い出してしまった。


「ははは、失礼ながらジーニャスさんは戦えるような人ではないでしょう。この街のゴロツキ相手にも負け、ドロシーに助けられたと聞いていますよ」

「動けるようになった今、覚悟は決まりました。ここでやらないと海賊として地獄に行ったとき、ジュエリンお姉ちゃんに顔向けできないですから!!」


 顔を上げたジーニャスの表情を見たキリィは警戒を強めた。

 それは今までの少女の顔ではなく、一人の海賊の気迫があったからだ。


Ahoy,matey(来い、相棒)! 神術〝百機招来〟!」


 ジーニャスは叫んだ。

 しかし、何も起きない。

 キリィはキョロキョロと見回すも、室内に何も変化がないのだ。

 一瞬だけ、銃の神ほどではないが神気を感じたので違和感はある。


「警戒してガードだけは意識しておきましょうかね」


 その直後、揺れを感じた。

 地響きかと思ったが、それは違った。

 大気が振動しているのだ。

 段々と近付き、大きくなってくる。

 キリィは前後左右のどこから、壁を突き破ってくる可能性があると考えて意識を巡らせていた。

 だが――。


「こ、これはぁぁぁあああ!?」


 爆発したかのような音が響いたのは、天井だった。

 何か巨大なモノが突き破って屋敷を押し潰す。


「上空にゴールデン・リンクスを召喚しました。海賊の覚悟の〝重さ〟を感じながら潰れてください」

「フランシスの船!? ぐわぁぁぁ潰れるぅぅぅ…………とは、なりませんね。多少、年甲斐もなく焦りはしましたが」


 キリィは巨大な船体を両手で押し返していた。

 そのままゴールデン・リンクスはキリィから少し離れたところに落下していた。

 ジーニャスはすぐに船体に飛び乗ってから、キリィを観察し始める。

 頭が冴える、船の上の天才モードに入った。


(今までの記憶から分析、そして先ほどの船体を受け止めた。受け止めたことの多少のダメージはある。なるほど、白髭キリィカウントのスキルの正体は――)


「さて、ジーニャスさんの攻撃は不意打ちをしても私には通じませんでした。次はどうするのですか?」

「私は船に乗ると頭が冴えるので説明してあげます。まず、白髭キリィカウントは私のスキルや、次の一手を知りたいというわけですね」

「ご名答、万が一もありますからね。警戒しておくに越したことは――」

「私の能力は基本的にサポート系です。ゴールデンリンクスの召喚は、私の能力を底上げするため。そこから他者へのバフなどを使います。本来なら搭載していた古代兵器を指揮したりもするのですが、今回はあいにく持ってきていません」

「ほう、珍しい力ですね。非常に興味深い。ですが――」

「はい、お察しの通り直接戦闘には向きません。頼りの黒髭のトレジャンもまともに戦えない状態です」

「では、どうやって戦うというのですか?」


 ジーニャスはニヤリと笑みを浮かべた。

 それは絶対の勝利を確信したものだ。


「最高の新しい家族がいますにゃ」


 その声に対して、返事をする者がいた。


「そこは最高のゴミと呼んでくれ」

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こちら、コミカライズ版です!

漫画:フミキチ先生
原作:タック


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