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【第十一章完結】棄てられ王子の最強イカダ国家 ~お前はゴミだと追放されたので、無駄スキル【リサイクル】を使ってゴミ扱いされたモノたちで海上都市を築きます~  作者: タック
第九章 幸せの街ガンダー

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黒髭のトレジャンVS白髭のキリィ・カウント

 その場に黒髭のトレジャンが現れたことにより、状況は一変した。

 キリィは後方へ跳んで距離を離し、ドロシーがスキルを使ってカカシ、ライオン、ブリキを出して盾となる。

 次に反応したのがシープ・ビューティーだ。


「何でこんなところに……眠れ――」

「あらぁ、眠るのはあなたよ。おチビちゃん」

「なっ、いつの間に!? ぐぎゃっ!?」


 突如飛んできた宝石が爆発して、シープ・ビューティーの両脚を吹き飛ばしていた。

 脚の骨があらゆる方向に折れていて、見るも無惨な姿になっていた。

 それを優雅な笑顔で見つめるのは、宝石を手にしたジュエリンだった。


「う、ウチの脚があああああああ!?」

「うるさい娘ねぇ。寝言は寝てから言いなさい」

「あばっ」


 ジュエリンは宝石を指で弾き、シープ・ビューティーの頭部で爆発させた。

 身体を痙攣させるだけで何も言わなくなった。

 その爆発でようやく執事やメイド――キリィ海賊団の船員たちが動き出した。

 ジュエリンに対して向かってくるメイドたち。


「今だ!! 宝石を投げ尽くして手には何も持っていない!!」

「んもう、そんなに簡単に近付かせるはずないじゃないのよぉ」


 ジュエリンはまるで手品師のように手を動かし、いつの間にか指の五指の間に宝石が挟まっていた。


「なっ!?」

「メイド風情には勿体ない宝石のプレゼントよ、ありがたく受け取って死に晒しなさいな」


 放り投げられる宝石、メイドたちの絶望の瞳に映るのは近距離での爆発だった。


「向こうの執事(オトコ)たちなら、もうちょっと手加減してあげるのにねぇ?」


 執事の方はというと、トレジャンに向かってシミターを振り下ろそうとしていた。

 連携が取れていて、まるで一つの意思で動く鉄の爪かのようだ。

 しかし、それもトレジャンに相手では意味がない。


「雑魚が、邪魔だ……」


 義手によるラリアットによりすべてのシミターが粉砕され、その先にいた執事たちも全員一撃で吹き飛ばされていた。

 圧倒的なパワーの差の前には、息のあった連携など無意味なのだ。


「た、戦ったことがあるからわかるけど……二人ともやっぱり強いにゃ……」


 未だに動けないジーニャスは見ているしかできないが、トレジャンとジュエリンのコンビがどうやっても負ける気配はしなかった。

 その中で異様なほどに落ち着き払っているキリィは、娘に向かって優しく言った。


「ドロシー、パパはちょっと黒髭の人とお話があるから、向こうのお客人と遊んでいなさい」

「は~い、弱っちそうだけど我慢するっしょ~」


 それを聞いたジュエリンはカチンときたようで、青筋を浮かび上がらせて乙女の顔を忘れていた。


「おいおい、小娘ぇ……。アタイのことを舐め腐ってるんじゃねーぞ……」

「黒髭の腰巾着、〝ざこざこおねぇ〟は黙ってると良いっしょ~。大体、お肌ツルツルのあーしと年齢差がエグちだし。スキンケア大変そ~」

「あんた、ジーニャスちゃんのお友達だから殺さないでおいてあげようと思ったけど、もう許さないわよ……ぶっっっっ殺す……!!」


 ジュエリンは手加減せず、いきなり中玉の宝石を投げ放っていた。

 一方、トレジャンとキリィは――。


「トレジャンくん、大きくなったねぇ。ああ、いや、ジニコさんを殺したときにも会っていましたっけ? まぁ、そんなことはどうでもいいです。ずっと、お話がしたかったんですよ」

五月蠅(うるせ)ぇ、テメェがお喋りする相手はコイツだ――〝烽宝砲(ドラコカノン)〟」


 轟音、爆音。

 竜の吐息のような輝きと、中玉の宝石による爆発が屋敷の中を乱気流の如くメチャクチャにしていた。


「す、すごいにゃ……これなら――」


 ジーニャスはその光景に呆気にとられていたが、屋敷の中の煙が晴れていくと無傷の親子が見えた。


「ふーん、そんだけ? あーしのスキル【愛情欲】でダメージキャンセル界隈しちゃった」

「うんうん、不器用なトレジャン君に相応しい会話方法だ。どんどん話しましょう」


 厄介な相手だと認識して、ジュエリンは憎々しい顔を、トレジャンは舌打ちをしていた。

 ジーニャスから見て、ドロシーが宝石による爆発を防いだ方法はわかる。

 スキルで呼んだお供の内の一体――ブリキの硬いボディに盾になってもらっていたのだ。

 表面がへこんでいるが、スキルによる物なのだからか動きに影響はなさそうだ。


 しかし、キリィが〝烽宝砲(ドラコカノン)〟で無傷だったのは仕組みがわからない。

 竜のブレスのような魔力の奔流がキリィに直撃したはずなのに、何かで防いでいるわけでもなかった。

烽宝砲(ドラコカノン)〟の威力がなかった、というわけではない。

 背後の館の壁が吹き飛んでいる。

 目に見えないスキルで防いだというのが妥当だろうか。


「ねぇ、じゅえじゅえ~。提案があるんだけどさ~」

「じゅ、じゅえじゅえですって……。まぁいいわ。なによ?」

「じゅえじゅえの宝石爆弾、お互いの味方をめちょ巻き込んじゃうから外で()らない?」

「たしかにトレジャンちゃんを巻き込む可能性があるし……仕方がないわねぇ。外へ行くわよ、小娘」


 ジュエリンは外に面している壁を宝石で爆破して、スタスタと歩いて行ってしまった。


「あー! 人の家を気軽に壊すなっしょー!」


 ドロシーもぷんぷん怒りながら後を付いていった。

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