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棄てられ王子の最強イカダ国家 ~お前はゴミだと追放されたので、無駄スキル【リサイクル】を使ってゴミ扱いされたモノたちで海上都市を築きます~  作者: タック
第八章 世界が終わる七日間

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親子

「ん……ここは……?」


 どうやら疲れて眠っていたようだ。

 ボンヤリとした頭で何も考えられない。


「おはよう、可愛い我が子――ノアクル」


 そうだ……ここは母上の部屋だ。

 ()は椅子に座る母上の膝を枕にして、つい寝てしまっていたらしい。

 近くにはまだ小さなジウスも同じように眠っていて、コイツは子供っぽいと思ってしまった。


「おはようございます母上、けれども僕は寝ていない! ちょっと目をつぶっていただけだ!」

「ふふ、でもヨダレは拭いておきなさいね」

「あっ」


 格好が付かなくて居心地が悪い。

 僕は母上を守らないといけないのに。


「今日も外は、お空が綺麗ね」


 母上は身体が弱く、いつもこの部屋にいる。

 ほとんど城から出ることはなく、ここから窓の外を見ることが多い。

 特に日中の空を見るのが好きなようだ。

 日が沈んだ後の空は少し怖いと言っていた。


「それじゃあ、今日も母上に外の話をいっぱいしてあげるね!」

「あらあら、ありがとうね。ノアクルのお話を聞くのは楽しみだわ」


 母上が知らない城の外の話をいっぱいする。

 けど、本当はもっと良い話をしたい。

 外はゴミが多くて、人々も物に溢れているけど何か幸せそうじゃない気がする。


「ぼ、僕だって勉強いっぱい頑張りましたよ!」

「起きてしまったのね、ジウスドラ」

「僕の方がジウスよりいっぱいいっぱい頑張ったもん!」

「じゃあ、僕はいっぱいいっぱいいっぱい頑張った!!」

「もう、二人とも喧嘩しないの。家族は仲良く、ね」


 いつも母上は、ジウスとの間に入ってきてくれるので、それが嬉しくて兄弟は競ってみせるのかもしれない。

 本当は喧嘩なんてしないし、仲は良い方だろう。

 お約束みたいなものだ。

 だけど、喧嘩すらできないほどに仲が悪い〝アイツ〟がいる。

 アレは家族と呼んでいいのだろうか。


「ビテノシエル、子供たちの様子はどうだ」


 たまに……すごくたま~に部屋に様子を見に来る父上だ。

 いつものように楽しそうな表情は全く見せない、厳しい顔をしている。


「あなた、二人はとても元気ですよ」

「そうか」

「――レメク王。次のご予定が」


 父上の側近たちが、これからのスケジュールを耳打ちする。


「では、行く」

「はい、お気を付けて」


 これで数日、いや、下手したら数週間は顔を合わせないかもしれない。

 僕は構わないけど、母上は時折寂しそうな笑顔を見せる。


「僕、あの男は好きじゃない」

「こら、『父上』でしょ。王様になると、とても大変なのよ」

「でも、城にいるときでも、父上は一人で部屋に籠もって出てこないし!」

「それは……きっと何か事情があるのよ……」

「母上を悲しませる事情なんて知らないよ! 頼りにならない父上の代わりに、僕が母上を守る!」

「兄上だけズルいです! 僕だって母上をお守りします!」


 僕もジウスも、母上が一人で泣いているのを知っているから。

 あんなレメク王なんて必要ない。


「そうだ、もうすぐ母上の誕生日です! プレゼントは何が欲しいですか?」

「あ、ズルいぞ! ジウス! 僕もプレゼントを母上にあげるんだからな!」

「もう、〝家族みんなが仲良くなる〟っていうことをプレゼントにしてほしいわね」


 母上は呆れながらも笑っていた。




 そして、誕生日に父上からの贈り物に毒が仕込まれていて、母上は帰らぬ人となった。

 そのとき母上は苦しみ、家族と別れたくないとひたすらに懇願し、見ているのが辛かった。

 最期の言葉は僕たちを心配させまいとしたのか、『ちょっと目をつぶるだけ』だ。

 母上を守れなかった、家族みんなが仲良くなるというプレゼントもあげられなかった。


 父上――いや、あの男。

 レメク王のせいで母上は死んだのだ。

 僕は許せない。


 その頃からジウスともお互いに話さなくなったし、レメク王の顔は見たくもなかった。

 そこからレメク王の政策に反対するようになり、周囲の風当たりも強くなっていった。

 まともに話しかけてきてくれたのはローズと、アルヴァさん夫婦くらいだろうか。

 アルケイン王国が無限とも言える資源をどこかから得て、その反動でゴミ問題が悪化してきて、それに対処していたのはレメク王への反発からだったのかもしれない。


 一番辛いところを見せられ、何もかもを失って無力感が襲ってくる。


 今まで何をやってきたのだろうか。

 国民がそれでいいなら、それでよかったんじゃないか?

 自分がやってきたことは無駄だったんじゃないか?

 きっと昔から頭の良かったジウスが、一番正しかったのだ。

 今も、これからも、僕は何もしない方がいいのかもしれない。

 それが一番完璧な答え――。


「んなわけあるかー!!」

「ぶはっ!?」


 僕――いや、俺は頬に強烈な痛みを感じた。

 目を開けると、そこには俺を悲しんで泣いてくれているステラがいた。

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こちら、コミカライズ版です!

漫画:フミキチ先生
原作:タック


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